高級レストランを勝手に予約する義母
先日2歳の誕生日を迎えた娘。ある日、義母から「孫の誕生日祝いをしたい」と連絡がありました。年齢を感じさせない見た目で、「美魔女」と呼ばれている義母はとにかく見栄っ張りな性格で、指定してきたのはドレスコードがあるような都内の高級フレンチレストランでした。
しかし、ホームページや口コミを見ても、落ち着いて座っていられない幼い娘を連れて行けるような場所ではありません。私はファミリー向けの店に変えてほしいと、寝かしつけをしながら夫に相談しました。
ところが返ってきたのは、「母さんは多分ダメって言うよ」のひと言。最初から交渉する気もない様子にイライラして、「じゃあ当日は、あなたがちゃんと娘を見ててよ!」と言うと、夫は面倒くさそうな顔をするだけでした。
そして迎えた当日。義父母、夫、娘、私の5人でレストランへ。到着すると義母はスタッフに向かって、「今日はかわいい孫のお誕生日祝いなの! 私たちからのサプライズで、全部ごちそうするつもりなのよぉ。息子夫婦には、こんな高級なお店はなかなか来られないでしょうからね!」と得意げに話し始めました。周囲にも聞こえそうな声で話す義母に、私は少し居心地の悪さを感じていました。
そして席に着くと、案の定、重厚で静まり返った店内の空気に呑まれた夫は完全に縮こまり、ただ座っているだけの「置物」と化し……。しかし義父母の前でいい顔をしたい夫は、娘がぐずりかけても義父母との歓談に夢中なフリをして目を合わせようともしません。
結局、周囲の冷たい視線から娘を守るため、料理を食べさせ、あやし、少しでも声を上げそうになったら席を外して抱っこ……と神経をすり減らしたのは私一人でした。食事が終わるころには、私の体力と気力は完全に底をついていました。
そうこうしていると、伝票を受け取った義父が目を通したあと、無言で夫に差し出したのです。「は? なに?」と夫が返そうとすると、義母が横から口を挟みます。「あんたの娘のお祝いなんだから、そっちが払うのが筋でしょ」と言ったのです。
お祝いをしたいと言い出したのも、勝手に店を決めて予約したのも義母です。そして先ほど店員さんに「ごちそうするつもり」と得意げに話していました。それなのに夫に払わせようとするということは、最初から夫のお金で高級フレンチを食べ、自分たちは「祝ってあげた」という恩を着せるつもりだったのだとモヤモヤしました。義父は義母に何も言えないのか、それとも義母に合わせていたのかわかりませんが、黙ってそっぽを向いています。
夫も納得できないようで、なにか言おうと口を開きかけたそのとき、店員さんが笑顔で、かわいくデコレーションされたデザートプレートを持って「おめでとうございます! おじい様とおばあ様から、お孫様へのサプライズプレゼントです! 素敵なお祝いですね!」と登場。どうやら予約時に、義母は見栄を張って「祖父母からのサプライズ」を頼んでいたようなのです。プレートには「じぃじ、ばぁばより」と誇らしげに描いてあります。
しかし店員さんは、夫の手元にある伝票に気づくと驚いた様子で「……あれ? 恐れ入ります、伝票をお持ちなのは息子様ですか……?」と言いました。夫が「えぇ。そうですが」と返すと、「それは失礼いたしました! お会計はおばあ様がなさると伺っていたのですが、別のスタッフが誤って息子様に伝票をお渡ししてしまったようで……」と青ざめた顔をして、義母と夫に謝罪しました。
すると義母は一瞬言葉に詰まり、周囲を気にするように視線を動かしました。近くの席では、何人かのお客さんがこちらをちらりと見ながら、小声で話しています。先ほどの義母の言葉が聞こえていたのかもしれません。義母は慌てて夫から伝票を取り上げ、「そ、そうよ! 私たちが払うつもりだったのに。困るわね、ちゃんとしてちょうだい!」と、店員さんのミスだということにして怒り、慌ててカードを差し出しました。先ほどまでの威勢はどこへやら、顔を真っ赤にしていました。義父もいたたまれずに俯くだけでした。
心がスカッとしたのは言うまでもありません。隣を見ると、夫は親の浅ましさに呆れつつも、「とりあえず自分が払わずに済んで助かった……」と情けなく胸をなで下ろしていました。
恥をかかされた義母の怒りは収まらず、翌日から夫のスマホに「あんたのせいで大恥をかいた」「あの食事代を全額返しなさい」と、鬼のような着信とヒステリックなメッセージが連日届くように。いつもなら親の言いなりでやり過ごす夫でしたが、今回はさすがに金額が大きすぎたことと、親の尋常ではないほどの怒りに巻き込まれるのが心底面倒になったようで、「うわ……もう無理。勘弁してくれ」と頭を抱え、義両親の連絡先をすべて着信拒否・ブロックしてしまいました。
正義感から私や娘を守ってくれたというよりも、単に「面倒な親から逃げただけ」な頼りない夫ですが、一線を引いてくれたおかげで、厄介な義実家と距離を置くことができたのは、わが家にとって願ってもない「棚からぼたもち」のような結果でした。
子どもの喜ぶ顔よりも自分の見栄だけを優先し、高級店を押し付けた挙句に会計を息子夫婦に丸投げしようとする義母には、今思い出しても呆れるばかりです。そもそもお祝いは、義母の世間体や見栄のためではなく、子どものためにするもののはず。見栄や支払いの押し付けでもめるのではなく「誰のためのお祝いか」をしっかり考え、気持ちよくお祝いの場を作れる大人であろうと思った出来事でした。
著者:小西希実/30代・自営業。好奇心旺盛な2歳の娘を育てる甘党ママ。夫と娘との3人で暮らしている。ダイエットを宣言しながらも、お菓子の誘惑に勝てない。
作画:ryo
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2026年4月)