息子の初めてを見逃したくない
専業主婦だった私は息子と一緒にいられる時間が多かったため、「初めての寝返り」「初めてのハイハイ」「初めての1歩」などを見逃すことはありませんでした。息子は成長していく中で、さまざまな「初めて」をすべて私に見せてくれたのです。
私はそのことがとてもうれしくて、「これからもさまざまな成長を、私に見せてくれるのだろうな」と思っていました。
外出先でショックな出来事
息子が1歳を過ぎたころ、ベビーカーに乗せてショッピングをしていると、若い女性の店員さんが対応してくれました。息子にもやさしく声をかけて遊んでくださり、息子もニコニコしながら満足気な様子。買い物を終えて店を出るとき、先ほどの店員さんが息子に「バイバイ」と言いながら手を振ってくれました。
私は「息子はどんな表情をしているのかな? 」と思い、息子を見てみると……なんと店員さんに向けて、初めてのバイバイ(手を振るまね)をしているではありませんか!! 息子の初めてのバイバイを見られたことはとてもうれしかったのですが、そのバイバイを向けた相手は私ではなく、女性の店員さん。
これまで「ありがとう」「どうぞ」などの相手に向けてた動作もすべて、私へ一番に見せてくれていたのに……とショックを受けてしまいました。
母の言葉にハッとした
「初めてのバイバイも私にしてほしかった」と思いながら帰宅し、この思いを誰かに聞いてほしくて、母親に電話しました。すると母親はあきれながら「そんなこと当たり前じゃない。あなたは息子ちゃんといつも一緒にいるんだから。あなただって、息子ちゃんにバイバイなんてしたことないでしょ? いつも一緒にいて、子育てを頑張っている証拠じゃないの」と言い、私もハッとさせられました。
たしかに私たちはいつも一緒にいて離れることはほとんどないので、私は息子にバイバイをしたことがなかったのです。「それなら、息子が私にバイバイしてくれないのは当たり前のことだな」と納得できました。
ショックを受けていた私ですが、母親に「頑張っている証拠」と言われ、とてもうれしくなりました。そして、毎朝仕事に行く前に息子にバイバイをしていた夫は、この事実を知り、私よりもショックを受けていたことは言うまでもありません。
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作画/ぐら子
著者:山下亜衣
10歳と7歳のサッカー小僧の母。子どもたちを応援するため、アスリートフードマイスターを取得。転勤族で現在は地方での生活を満喫中。趣味はキャンプ。