聖バルナバ病院(大阪府大阪市)産院ごはん
院内レストラン「メイズ・キッチン」のバランス食が自慢
聖バルナバ病院の産院ごはんを企画・管理しているのは、黒川課長のチーム。このチームは、入院患者さんの食事を提供するだけではなく、通院患者さんやそのほかのどなたでも利用可能な院内レストラン「メイズ・キッチン」を運営しています。メイズ・キッチンの由来は、「芽育」と書いて「芽が育つキッチン」という想いがこめられているそうです。黒川課長に産院ごはんに対する熱意を伺いました。
「私は病院を建て替える前から、聖バルナバ病院で管理栄養士として働いていたのですが、これまでの食事は患者さんが食べたいものと、管理栄養士がすすめる、患者さんに食べてもらいたいものにギャップがあったんです。このギャップをどうやって埋めようかとずっと考えていました。
そんなとき、2005年の病院の建て替えを機に、新しいこと、聖バルナバ病院らしいことをやりたいと発起。当時のスタッフと知恵を出し合って、今のメイズ・キッチンの仕組みを理事会に答申しました。
理事の方に、実際にお料理を食べていただく作戦なども実行しながら、何度も答申をおこなって、やっと了解を得たときのことを思い出します。そんな経緯で、メイズ・キッチンはやっとスタートにこぎつけました!」
「そのときに考えたのが、6つのお皿をひとつのお盆にいれて提供する『トリプルランチ』という仕かけなんです。
メイズ・キッチンでは、バイキング形式でお皿を選んでいきます。管理栄養士なら誰でも知っている、赤い食品、黄色の食品、緑の食品をバランスよく食べることが理想ですが、その”バランスよく”がとても難しいですよね。
『トリプルランチ』では、まず、決められた主食、主菜、副菜をひとつずつつ受け取ります。その後、ご自分で好きな主食、主菜、副菜(汁もの)を、それぞれひとつずつ選ぶことができるんです。そうすると、ひとつは栄養士が患者さんに食べてもらいたいもの、もうひとつは自分の好きなものを選択することになります。自分の食べたいものを食べながらも、栄養バランスもとれているというのが『トリプルランチ』なんです」
メイズ・キッチンでお食事中のお客さまにも話を伺いました。聖バルナバ病院で出産された患者さんが、今ではメイズ・キッチンの常連さんになったという方もいらっしゃいました。
「上の子も下の子も聖バルナバ病院で出産しています。退院後、メイズ・キッチンには週4~5回来ていたこともあります。トリプルランチのおかげで、うちの子は好き嫌いがなくなりました!」
「家ではこれほどの品数を作ることができないのでとてもうれしいです。とくに酢の物など、ふだんはあまり作らないものが食べられるところがありがたいです。子どもは、わかめやひじきなども好んで食べるようになりました」
子育て中のママたちがよく利用されているということからも、ママたちが理想とする食事が、メイズ・キッチンで提供されているということがよくわかります。
入院患者さん向けの産院ごはんのコンセプトは「おうちのごはんを大切に!」
メイズ・キッチンはランチのみの提供ですが、入院患者さんには、朝、昼、晩の食事を提供しています。入院患者さん向けの産院ごはんのコンセプトについても、黒川課長に伺いました。
「入院患者さん向けの産院ごはんのコンセプトは、『おうちのごはんを大切に!』。入院患者さんに提供している食事は、むずかしい料理、豪華な料理ではありません。特別なものではなく、自宅に帰ってからご自身でも作れるものを提供しています。
同時に、ふだんの食生活を考えるきっかけになればとも思っています。ファーストフードをよく食べる方もいらっしゃると思いますが、もう少し食事について考えてもらいたいと感じます。自分の体は、食べたものでできてます。毎日の食事は、自分の体をつくる、家族の健康につながるもので、おいしく、楽しみであったほうがいいと思っています。
また、大きな楽しみでなくていいので、ちょっとした小さなことをとおして食事を楽しんでもらいたいと思っています。患者さんは、自分の体、赤ちゃんの体、家族の体、すべてに関わりがあるんです。この考えも140年間受け継いできたバルナバの魂だと思っています。
聖バルナバ病院の伝統を守りつつ、メイズ・キッチンでママたちからいただいた声や入院患者さんからのアンケートをもとに、スタッフ一同でメニューの企画出しや食事の改善をおこなっています」
ママ目線での食材選びをしています
「食事に使う素材は、もちろん国産のものを中心に選んでいます。また、インスタントや加工食品も使っていませんよ。レストラン(病院)だけど、ママの目線で食材は選んでいます。
たとえば、ちょっとした彩りのために、缶詰のフルーツを使いたいと思うこともあるのですが、やっぱり安心できるものを使いたいんです。給食用の冷凍食品も華やかにするには重宝しますが、ここでは使いません。肉や魚もしっかり吟味して、仕入れるようにしています。私たちは、”家庭でもなるべく使いたくないものは使わない”というこだわりを徹底しています」
食事がストレスになってもらいたくない
「患者さんには、食事がストレスになってもらいたくないと思っています。食事を嫌いになってもらいたくないんです。そこで妊娠期間中、栄養指導などを通じて、食事を制限するのではなく自分に合った食べ方を見つけ、楽しく過ごしていただけるお手伝いをしていきたいと思っています。
妊娠期から出産後の時期は、今後の家族にも大きな影響をあたえる時期です。これからも、患者さん一人ひとりに個別対応できる仕組みをつくっていくためにも、チャレンジを続けていきたいと思っています。ぜひお気軽に、聖バルナバ病院に、そしてメイズ・キッチンへお立ち寄りください!」