家を出た瞬間から「もう歩けない」
息子は自宅から500mほどの距離にある幼稚園に徒歩で通っています。起伏もなく整備された歩道なので、子どもでも歩きやすいはず。それなのに息子はほぼ毎朝、マンションのエントランスを出た瞬間からしゃがみこみ「もう歩けない」と言い出すのです。
息子は寝起きもよく、朝食もしっかり食べます。朝からどうしてそんなに?というくらい元気にあふれているのに、家を一歩出ると毎朝飽きることなくうずくまって歩かなくなりました。
遊びを取り入れていろいろ試したものの
幼稚園自体は大好きで、早く行って先生やお友だちと遊びたい気持ちはある息子。厳しく叱りつけて嫌な気持ちで登園させてしまうと、せっかくの「幼稚園大好き!」な気持ちが損なわれるかもしれないと思った私は、なんとか叱らずに歩かせようと知恵を絞りました。
長めのひもを用意して電車ごっこをしたりかけっこをしたり、「歩くとカッコイイよ」とおだてたり、「そこの電柱まで歩いてみようか」と励ましたり、考えつく限りの工夫をして歩かせる努力をしたのです。
もう諦めるしかない?
ママ友や幼稚園教諭をしている友人にもアドバイスをもらいながらあれこれ試す日々が続きましたが、入園から2カ月経っても状況は変わりませんでした。とにかく「歩かない」「抱っこ」の一点張り。時には道路にひっくり返って泣き叫んで抱っこを要求することも。同じクラスの女の子が、お行儀よくママと手をつないで登園する姿がまぶしくてたまりませんでした。
結局は少しだけ抱っこしてまた少しだけ歩く、というのを繰り返し、徐々に歩く距離を伸ばしていきました。最終的にスムーズに歩けるようになったのは、入園から半年以上経ったころでした。
見守ってくれた人たち
幼稚園が大好きな一方で朝は少し不安な気持ちもあり、その思いが「抱っこして」という甘えになっていることは理解しつつも、毎朝のことなので「いい加減にしなさい!」と声を荒らげてしまうこともありました。
また、「どうして他の子は当たり前にできることがこの子はできないのだろう」という虚しさを感じることもありました。でもそんなとき、道ですれ違うお散歩中の人や地元のお店の人に「頑張ってるね!」「今日も元気だね!」と声をかけてもらい、そのやさしさが胸に沁みました。
わが家は上の子も徒歩通園でしたが「歩かない」というトラブルは一度もなかったため、まさか「手をつないで一緒に歩く」、ただそれだけのことがここまで大変だとは想像もしていませんでした。育児の「大変さ」は人それぞれであること、またどんなときもやさしい眼差しで見守ってくれる人がいることを実感した息子のイヤイヤ期でした。
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監修/助産師 松田玲子
作画/ぐら子
著者:川木みさ
7歳差の1男1女を子育て中。英検1級、児童英語指導者TEYL取得。海外サイトの翻訳や子育て体験談の執筆活動中。