夫の友人から「夫は年下の若い子に弱い」と聞かされて以来、若作りに励むカナデ。しかし夫はスマホばかりで上の空。「大きなプロジェクトで忙しい」と言い訳し、連絡なしの外泊や朝帰りを繰り返すようになりました。
家では食事を拒否し、話しかけてもスマホを離さない夫。外泊する日に限って私服で出勤したり、服から女性ものの香水の匂いが漂ってくることも……。
悩み抜いた末、カナデは自分の手で真実を確かめる決意を固めます。会社で夫を待ち伏せすると、見知らぬ若い女性と落ち合い、2人は一般的なアパートへ。玄関先でキスを交わした後、女性だけ立ち去り、夫が残る姿を目撃したカナデは、ここが「不倫部屋」であることを確信します。
女性のあとを追うと、彼女は電車で3駅先の自宅へ。「あなた♡ ただいまー!」と明るい声で中へ入る姿を見て、カナデは愕然とします。「この女……既婚者だったの!?」——ダブル不倫という事実が判明しました。
その夜、風呂に入った夫の隙を狙い、夫のスマホを手に取ります。ダメ元で夫の誕生日を入力すると、あっさりとロックが解除。そこには「ピョン」という謎の語尾を使い合う2人の幼稚なやり取りや、「嫁がBBA、若い女の子最高」という言葉が。長年の不安は的中していました。
証拠を撮影したカナデは、2人への復讐を決意。まず不倫部屋の合鍵を作成しました。翌日、浮気女と不倫部屋に向かった夫は、カバンに鍵がないと大焦り。こっそり見ていたカナデは、笑いが止まりません。
合鍵を使って不倫現場を押さえるのはたやすいこと。しかし、そんなことで怒りが収まらないカナデは、義母をランチに誘っていました。
苦手な義母に私が近づいたワケ








合鍵を作った直後、カナデが真っ先に連絡を取った相手——それは「義母」でした。
プライドが高く、常に上から目線で物を言う義母。以前から苦手意識がありましたが、今回の復讐を完璧なものにするためには、どうしても義母の存在が必要だったのです。
「お義母さんのように素敵な女性になりたいので、いろいろ教えてください!」
カナデは自分の感情を押し殺し、義母の自尊心をくすぐる作戦に出ました。それからは、ジムやヨガ、料理教室に通い、ランチを共にする日々。会うたびに飛んでくる義母からの嫌味や、鼻につく「指導」にもひたすら笑顔で耐え続けました。
そうして過ごすこと、長きにわたる2カ月。努力の甲斐あって、今では週に2回も会うほど、カナデは義母のお気に入りの存在になっていました。
「ふふ、計画通り……」
信頼関係(?)を築き上げ、すっかり義母を味方につけたカナデ。最大の協力者を手に入れ、夫と浮気相手を地獄へ落とすための「舞台整え」は、着々と進んでいました。
◇ ◇ ◇
苦手だった義母の懐に飛び込んだカナデさん。普通なら心が折れそうですよね。でも、「復讐」という明確なゴールがあるからこそ、耐えられたのではないでしょうか。未来の自分のために必要なステップだと思えば、景色は違って見えるのかもしれません。
カナデさんは義母の嫌味を笑顔でスルーするだけでなく、味方に変えてしまいました。苦手な相手には、真正面から戦うのではなく、相手の自尊心を満たしてコントロールする。この高度な処世術は、私たちが職場の人間関係やママ友付き合いを賢く生き抜くための、大きなヒントになりそうですね。
そして、このしたたかさと柔軟性こそ、私たち女性が本来持っている強さなのかもしれません。感情に流されず、笑顔で賢く立ち回る……そんな大人の余裕を身につけたいですね。
加藤 かと