なぜカーテン?
出産当日は体を休めるため、私が赤ちゃんに授乳することはありませんでした。そのため、翌日から授乳がスタート。
娘が入院している新生児科の看護師さんと一緒に新生児室へ向かう途中、看護師さんからこんな質問がありました。「以前、口唇口蓋裂の子を持つ親御さんに、他の子と別室にしてほしいと言われてからカーテンを用意するようになったんです。どうされますか?」と。
この質問に、私は不要と答えました。そのときは、どうしてカーテンをする必要があるのかわからなかったのです。
母の言葉で質問の意味を知る
でも、面会にきていた母の言葉で、私はカーテンの質問の意味を理解しました。母は私に「写真を撮っても人に見せてはだめ」という言葉をかけてきたのです。「興味本位で見たり、心ない差別的な言葉をかける人もいるんだから」と。
たとえそれが、私や娘のことを思って言ったのだとしても、私はその言葉を理解するのに苦しみました。さらには「なんで羊水検査しなかったの?」という見当違いな問いかけに、この子を産んではいけなかった、と言われたように感じてしまったのです。
娘に会えてうれしいはずなのに……
母の言葉を聞いてから、授乳の時間がとても苦痛になりました。他のお母さんたちは、みんなが同じ場所で並んで授乳。仲良くおしゃべりをしている人もいます。それにもかかわらず、私だけ少し離れた場所で、壁に向かって授乳しているのです。
カーテンはないものの、ひとりだけ孤立しているような状態。その状態に、私はひどく寂しい気持ちになってしまいました。
安心できたのは、やっぱり夫のひと言
日に日に元気をなくしていく私。それを救ってくれたのは夫でした。「僕とみいちゃんのところなら、安心して生きられると思ったからきてくれたんだよ」と。母に言われたひと言がグサリと胸に突き刺さっていた私に、温かい言葉をかけてくれました。
この先、娘は手術や通院以外にもつらい経験をしてしまうかもしれません。でも、私と夫のところなら大丈夫だと思ってくれたんだと、傷ついていた私にはその言葉がとてもうれしくてたまりませんでした。
身内の言葉というのは、自分自身のメンタルにとても大きく影響すると思っています。私の場合、理解者であってほしい実母からの言葉に一番傷ついてしまいました。でも、パートナーである夫がしっかりと支えてくれたため、沈んだ気持ちを持ち直すことができました。
※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。
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監修/助産師 松田玲子