締め出された真夏の夕暮れ
夏も盛りの8月のことです。洗濯物を取り込もうと夕方ベランダに出たとき、開けていたはずのガラス戸がカラカラと音をたて、「ガチャッ!」という血の気の引く音がしました。とっさに私が振り向くと、部屋の中にはニヤニヤといたずら顔のわが家の双子……。
当時1歳半、言葉は通じるけれども指示は通らない月齢です。鍵を開けるよう必死にジェスチャーをしましたが、私が遊んでいると思ったのかおもしろがって違う部屋へ行ってしまいました。
連絡手段がなく途方にくれる
マンション7階のベランダに締め出された私の携帯電話は部屋の中。誰にも連絡を取ることができません。夫は仕事で毎日帰宅が遅く、加えて仕事中は携帯電話をまったく見ません。
頼みの綱のわが子は鍵を開けるどころか、部屋の奥の見えないところで遊んでいます。途方に暮れた私はとにかく誰かに気が付いてもらおうと、恥を忍び「すみませーん! 誰かいませんかー!」と叫び続けました。
偶然が重なった救出劇
およそ30分ほど経ったころ、隣人がベランダに出てきてくれました。偶然その日は仕事がお休みだったそうで、私の声に気が付いてくれたのです。事情を話し携帯電話を借りたものの、夫や近くに住む義母の電話番号がわからず連絡を取ることができません。
しかしそこで急展開が! 隣人が管理人さんに相談しに行った際、偶然にも義母の知人と会い、その知人から義母へ連絡がいき、急きょ来てくれることになりました。そして義母からの連絡にたまたま気が付いた夫が早退してきてくれ、無事私は救出されることとなりました。
ベランダに締め出されるというハプニングは、周りでも経験者が多いことを後日知りました。対策として、ベランダに出るときは戸に大きい洗濯ばさみを挟み閉まらないようにする、家の中でも携帯電話を持ち歩く、近隣住民と普段からコミュニケーションをとり連携が取れるようにしておくなど、日ごろからできることを心がけるようになりました。
イラストレーター/山口がたこ
監修/助産師REIKO
著者:村上 素子
3歳の男女双子のママ。ドタバタな育児生活と並行し、フリーライターとして活動中。