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「できれば母乳」のすれ違い。出ないおっぱいを授乳する本当の理由は?

「できれば」母乳で赤ちゃんを育てたいと思っているママの大半は、「無理のない程度に頑張って、母乳が出たら母乳で……」というニュアンスの方が多いのではないでしょうか。まだおっぱいが出ていないのに、赤ちゃんに吸わせるのは理由があります。ママのホルモン「プロラクチン」や、授乳にかかわるもう1つのホルモン「オキシトシン」が関係しているんです。

この記事の監修者
監修者プロファイル

助産師松田玲子

医療短期大学専攻科(助産学専攻)卒業後、大学附属病院NICU・産婦人科病棟勤務。 大学附属病院で助産師をしながら、私立大学大学院医療看護学研究科修士課程修了。その後、私立大学看護学部母性看護学助教を経て、現在ベビーカレンダーで医療系の記事執筆・監修に携わる。
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「できれば」母乳と言ったけど……。

 

こんにちは! 助産師のREIKOです。赤ちゃんが生まれたら、「できれば」母乳で育てたいというママは多くいらっしゃると思います。しかし、実際に赤ちゃんが生まれて授乳が始まったら、「こんなはずじゃなかった……」「授乳指導、超スパルタ!」なんて感じることも多いようです。そこで今回は、ママがそのように感じてしまう要因についてお話ししたいと思います。

 

「できれば」母乳のすれ違い

私が働いていた病院は母乳育児を推進していて、母親学級でも母乳育児に関する内容がしっかり組み込まれていました。また、お産前には、ママたちに授乳方針を確認して、その希望に沿うように指導がおこなわれていました。

 

実際、出産前から「“完全母乳”で!」というママは少数派で、「“できれば”母乳で」というママが大多数でした。この「できれば」という言葉の認識が、母乳育児を希望するママと助産師で違うことによって、すれ違いが起きてしまうのではないかと私は思います。

 

「できれば」母乳で育てたいママたちの大半は、「無理のない程度に頑張って、母乳が出たら母乳で……」というニュアンスのほうが多いのではないでしょうか。しかし、助産師はスタートが肝心!と母乳育児を確立すべく、指導を開始します。

 

お産の疲れを癒す間もなく始まる授乳指導、そしてその内容にママたちは「こんなはずじゃなかった……」「授乳指導、超スパルタ!」と感じてしまうのではないでしょうか?

 

さまざまな「こんなはずじゃなかった…」

母乳育児を希望していたママにとって、こんなはずじゃなかった……と思うことはたくさんあると思います。

 

赤ちゃんが寝ない、泣いてばかりいる

おっぱいを飲ませたから、このあとはぐっすり寝てくれるかな……なんて思って、ベッドに寝かせたら赤ちゃんが泣き出したということも多々あります。つい最近までママのおなかの中にいた赤ちゃんは、常にママと一緒。動いているときのほうが多かったかもしれません。しかも、せまくて温かいおなかの中。でも、赤ちゃんのベッドはどうでしょう? 何かが違う!って赤ちゃんもわかるのではないでしょうか。

 

また、赤ちゃんが生まれて、意外と夜行性なのにも驚かれると思います。それは夜のほうが母乳分泌に関係するホルモンがよく出るため、夜赤ちゃんにおっぱいを吸ってもらうことでさらに母乳がよく出るようになるということも。そのため、出産近くになると、夜中に赤ちゃんが動く頻度が多くなって、ママの体をを夜型にする……なんて話もあります。

 

飲ませたばかりなのにすぐおっぱいを欲しがる

さっきおっぱいを飲ませたばかりなのに、赤ちゃんがまた欲しがるということも多々あります。生まれたばかりの赤ちゃんの胃の大きさはビー玉くらい。加えて母乳は育児用ミルクに比べて消化が早いので、1~2時間おきのペースになることが多いです。

 

おっぱいが痛い

最初は慣れない者同士。じょうずにおっぱいを含ませることも、含むこともできないということがあります。それによって、痛みが生じます。赤ちゃんがママの乳首を深く含めないことで、傷ができてしまうこともあります。

 

産後、数日するとおっぱいが張ってつらい思いをする方もいらっしゃいます。そのときのおっぱいマッサージは激痛だったという感想を持つ方も多いのですが、本来おっぱいマッサージは痛くないんですよ。

 

きっとこれ以外にも、こんなはずじゃなかった……と思うことがあると思います。出産の疲れも癒えないうちに、赤ちゃんが欲しがるときに欲しがるだけおっぱいを飲ませる……。たしかにしんどいですよね。しかし、その指導の裏には、お産後のママのホルモンの変化と密接な関係があったんです。

 

まだおっぱいが出ていないのに、赤ちゃんに吸わせる理由は?

出産後、すぐ母乳が出るようになると思っている方も多いのではないでしょうか? 出産後は、ほんのにじむ程度という方がほとんどです。それなのに助産師は、「赤ちゃんが欲しがるときにおっぱいを吸わせましょう」「1日8回以上、赤ちゃんにおっぱいをあげましょう」という指導をします。

 

それにはママのホルモンである「プロラクチン」が深く関係しています。プロラクチンは、母乳分泌を開始させ、分泌を維持させる働きのあるホルモンです。プロラクチンの濃度はお産直後に最高になり、徐々に低下していくのですが、赤ちゃんがおっぱいを吸うたびに濃度が上昇します。

 

授乳をしないと2週間で妊娠前の濃度にまで戻ってしまうと言われていて、赤ちゃんにおっぱいを吸ってもらう回数が多いほうがプロラクチンの濃度が高くなります。また、1日に8回以上おっぱいを吸ってもらっていると、次の授乳までにプロラクチンの濃度が下がるのを防げるとも言われています。

 

頻回授乳じゃ寝不足になる!?

母乳がまだにじむ程度しか出ていないのに、赤ちゃんが生まれてすぐ授乳をしたり、出産の疲れも癒えないうちに母児同室が始まり、赤ちゃんが欲しいときに授乳する頻回授乳をおこなったりするのには、ほかにも理由があります。

 

それは、授乳にかかわるもう1つのホルモン「オキシトシン」です。オキシトシンは、母乳が作られるのを維持したり、赤ちゃんがおっぱいを吸う刺激に対して、母乳を出す射乳反射を起こすホルモンです。

 

お産直後にママと赤ちゃんが触れ合う早期接触の際に、おっぱいを吸ってもらうと、ママのオキシトシン濃度は急上昇する一方、何もしないと1時間以内に元の濃度に戻ってしまいます。ですので、生まれたばかりの赤ちゃんも出生後2時間を過ぎると眠りに入ってしまうことが多いため、遅くともお産後2時間以内にはママのおっぱいを赤ちゃんに吸ってもらうようにしているんですよ。

 

また、オキシトシンには、射乳反射を促すだけでなく、鎮静作用もあります。そのため、ママが細切れ睡眠になっても、短時間で休養できるよう働いてくれるんです。それでもやっぱり最初は、睡眠不足との闘いかもしれません。

 

意外と指導する側は気付いていないかも…

これは私が働いていた病院のことなのですべての施設に当てはまることではありませんが、母乳育児を推進していたとはいえ、助産師によって熱意はさまざまだったように思います。それでも、「ここの病院はスパルタだって聞いた」というお話をされたママも何人かいらっしゃいました。

 

たしかに母乳育児希望のママには、赤ちゃんが欲しがるだけ、1日に8回以上……といった指導はしていましたが、ママが希望すれば赤ちゃんを新生児室で預かることも、状況に合わせて育児用ミルクを足すこともできたので、スパルタという話を聞いたときは正直驚きました。意外と指導している側にはスパルタという自覚はないんです。

 

残念ながら母乳は赤ちゃんを産んですぐに出るというものではなく、ママの頑張りも必要になってきます。でも、頑張り過ぎる必要はないし、ママがつらい、苦痛だと思いながらの授乳は続かないと私は思っています。

 

母乳育児が確立するには時間がかかります。ママの心と体と相談しつつ、休憩したり、育児用ミルクを足したりしてもいいと思います。ママが笑顔で赤ちゃんに接することができる……それが一番だと思いますよ。

 

イラスト:sawawa

 

 

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