妊娠7カ月、増していく腕の重み
その日は用事があって、長男と2人で電車に乗りました。用事を済ませた帰り道、車内は座席が埋まっており、私たちは立って乗ることに。すると、遊び疲れた長男が眠くてぐずり出し、抱っこをするとそのまま私の腕の中で眠りについてしまいました。
当時は妊娠7カ月。ふっくらしてきたおなかをかばいながら、2歳の長男を抱いて電車の揺れに耐えるのは、想像以上に過酷な状況でした。
見知らぬ女性の温かい一言
必死に踏ん張っていたそのとき、いかにもおしゃべりが好きそうな、にぎやかで温かい雰囲気の60代くらいの女性2人組が声をかけてくれました。
「ここに座りなさい」と、1人の方が席を譲ってくださったのです。私はそのやさしさに甘え、ありがたく座らせてもらいました。
次の駅で向かい側の席が空いたため、私はお礼を伝えてそちらへ移ろうとしました。ところが、席を譲ってくれた彼女は「あ、ダメダメ! 子どもが起きちゃうから、そのまま座っていなさい」と言って、自らサッと向かいの席へ移動してくれたのです。
今も心に残る、ためらわない優しさ
私自身もおしゃべりが大好きなので、移動中もお友だちと隣同士で話したい気持ちはよくわかります。きっとお二人にも、会話を楽しみたかったと思います。
それでも、眠っている長男と妊娠中の私を一番に考え、優先してくれたことが本当にうれしかったです。
彼女の何気ない、けれど深い心遣いが、体力的にも限界だった私の心をじんわりと温めてくれました。
この日以来、外出時はどんなときも抱っこひもを忘れず持ち歩くようになりました。そして、あのとき手を差し伸べてくれた彼女のように、困っている人にためらいなくやさしさを届けられる人でありたい。今もそう強く思っています。
著者:佐々木真子/30代女性・主婦。2014年生まれの長男、2016年生まれの次男のママ。フルタイム共働きで、最近ブラック企業思想から卒業したパパと4人家族です。家族みんな旅行好き。
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2025年11月)
※AI生成画像を使用しています