動物園への楽しい遠足がとんだ事態に
少し肌寒くなってきたころ、4歳の息子が通う幼稚園で遠足がありました。幼稚園から園バスで約30分の場所にある動物園を満喫するという、子どもたちが楽しみにしていたイベントです。遠足に同行するのは先生と役員のみ。保護者が付き添うと子どもが集中できなくなるため、役員以外は絶対に同行しないでと、幼稚園からは何度も念押しされていました。私は役員なので集合時間に幼稚園へ行き、みんなで動物園に出発。道中、園児たちはお話ししながら楽しそうでした。
動物園に到着すると、私たちの列をずっと見ながら、こっそりついてくる人を発見。少し怖くなり、もう1人の役員に「あの人ずっとついてきているよね?」と伝えると「あれA子ちゃんママじゃない?」と言います。よく見るとたしかにA子ちゃんママ。幼稚園から禁止されているのに、無視してついてきたようです。子どもたちに見つかると大変なので、列から離れ、先生とともにA子ちゃんママを問いただしました。
先生が「事前に来ないように連絡していましたよね? なぜいらっしゃったのですか?」と聞くと、A子ちゃんママは「別について来たわけじゃない」と平然と答えます。そして「私は自分が動物園を楽しみたくて来ただけ。子どもの様子を遠くから見てただけじゃない。迷惑かけてないし何が悪いの?」と開き直り気味に吐き捨てるのです。これには、先生も私も、言葉を失うばかり。
押し問答をしていると、「あ、A子ちゃんのママだ!」と、園児の誰かが気づき声を上げます。周りの園児たちも反応し、「本当だ、なんで来てるの?」「いいな~ママ来てて」などと子どもたちがざわつき始めました。A子ちゃんママは「みんな楽しそうだね~」と、のんきに応じています。そのときです。園児の1人が「ママは来たらダメなんだよ! 先生が言ってたよ」とピシャリ。つられて他の園児も「そうだ、そうだ。A子ちゃんだけズルいよ!」と騒ぎ出しました。見ると、A子ちゃんは、恥ずかしそうに俯いています。平然としていたA子ちゃんママも、園児たちからブーイングを浴びせられて、顔は真っ赤。何も言わず、その場を立ち去ったのです。
その後、園児たちは落ち着きをなくし、先生の話も通らない状態になってしまいました。中には「ママに会いたい」と泣き出す子も……。幼稚園から2人の先生が応援に駆けつけましたが、子どもたちもこのままでは楽しく活動できないとの判断で、後の予定はキャンセルに。別日に園でレクリエーションをすることになったのでした。子どもたちも最初は残念がっていましたが、先生から「園でお楽しみ会をしよう」と聞くと喜び、A子ちゃんが責め立てられることはなかったようで一安心。ほかの園児の保護者たちも、「子どもたちが安全に楽しめるのが一番」と理解してくれたのが幸いでした。
後日開催された役員会に、事情を知ったA子ちゃんママの夫が訪れ、先生と私たち役員に謝罪。「妻のせいで、遠足を台無しにして申し訳ございませんでした。妻も反省しています」と深々と頭を下げました。その場にA子ちゃんママの姿がなかったことは気になりましたが、最後まで自分の非を認めなかったA子ちゃんママにモヤモヤしていた私の気持ちは、旦那さんの誠実な謝罪のおかげで少し収まったような気がしました。
楽しく過ごす子どもの様子を見たいママの気持ちは、よくわかります。しかし、他の保護者が同行したい気持ちを我慢してルールを守っている中、屁理屈で自分勝手な行動を取るのはやはりよくないと思います。A子ちゃんママを反面教師に、自分勝手な行動で周りに迷惑をかけ、わが子の笑顔までも奪ってしまわぬよう、きちんと決められたルールは守らなければと改めて実感した出来事でした。
著者:木村凛/30代・ライター。4歳と1歳の兄妹を育てる転勤族ママ。繊細な長男と怖いもの知らずな娘の対応に追われる毎日。子どもを早く寝かせて自分磨きの時間も大事にしている。
作画:Pappayappa
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2025年9月)