目の前に叩きつけられた離婚届
妊娠中の、心も体も本当にデリケートだった時期のことです。些細なきっかけから夫と大きな口論になってしまいました。
感情が爆発した夫は、あろうことか「もう無理だ!」と言い放ち、その場の勢いで署名した離婚届を私の目の前に叩きつけたのです。
あまりに突然の出来事に、私は言葉を失って立ち尽くすしかありませんでした。けれど、静まり返った部屋で離婚届を見つめていると、これまで心の奥に押し込めてきた不満や、これからの生活への不安が一気に押し寄せてきたのを覚えています。
翌日、夫は何事もなかったような顔をして仕事へ出かけていきました。そのあまりの温度差に、私の中で何かがプツンと切れる音がしました。
「本当にこのままでいいの?」「私は、この人と子どもを育てていけるの?」
一人きりの部屋で、テーブルに残された離婚届を何度も見つめながら、自問自答を繰り返しました。そして気がつくと、私はその紙を握りしめ、役所の提出窓口の前に立っていたのです。
震える手でかけた、1本の電話
窓口を目の前にした瞬間、心臓が痛いほど脈打ちました。私は夫に電話をかけ、「今、役所にいます。本当に出すけれど、いいんだよね?」と聞きました。
すると、電話の向こうで、夫は言葉を詰まらせながら、何度も謝ってきました。「本気ではなかった」という焦るような声と必死な謝罪の言葉を聞いたとき、ようやく私の強張っていた心も少しだけ緩み、提出を思いとどまることができたのです。
あの出来事以来、私たちは感情のままに言葉を投げつけることを、以前ほど簡単にはできなくなりました。あの紙一枚が、どれほど簡単に人生の向きを変えてしまうのかを、身をもって知ったからです。
その後、第三者を交えて話し合いを重ねました。すべてがすぐに解決したわけではありませんが、勢いで人生を決めかけたあの日を境に、少しずつ変わり始めています。一度壊れかけた絆だからこそ、これからはもっと丁寧に向き合っていきたいと思っています。
著者:須崎安奈/30代代女性/ 4歳の女の子を育てる母。インフラ業界で営業職に従事。趣味は映画鑑賞
イラスト:きりぷち
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2025年11月)
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