結婚直前、長めの出張へ
そんな矢先、私は会社で少し長めの海外出張に出ることになりました。期間はおよそ半年。結婚費用を貯めるためにも、ここは仕事を頑張りたかったのです。彼女にはさびしい思いをさせてしまうと謝りましたが、笑顔で「頑張ってね」と送り出してくれました。
海外についてからも、たまに私の両親が婚約者を食事に誘ってくれていると聞いて、すっかり安心しきっていました。
実家には、アルバイト生活をしている弟も同居していましたが、昔から要領のいい性格だったので、彼女ともうまくコミュニケーションを取ってくれているのだろうと、呑気に構えていたのです。
まさか、その間にあんなことが起きているなんて思いもしませんでした。
信じられない裏切り
無事に出張を終えて帰省した日、両親が「お疲れ様会」を開いてくれるということで、私はお土産を持って実家へ向かいました。そこには両親と弟、そして婚約者の姿がありました。
久しぶりの再会を喜ぼうとした瞬間、弟がヘラヘラと笑いながら信じられない言葉を放ったのです。
「兄貴、ごめん!兄貴がいない間に彼女の相談に乗ってたら、なんかそういう雰囲気になっちゃってさ。俺たち、子どもができちゃったんだよね!」
一瞬、何を言われているのかまったく理解できず、目の前が真っ白になりました。私が必死に働いている間、実の弟と私の婚約者が浮気をし、妊娠までしていたというのです。
手が震えるほどの怒りが込み上げてきました。
さらに私を絶望させたのは、両親の反応でした。
当然激怒するかと思いきや、母親は信じられない提案をしてきたのです。
「新しい命が授かったんだから、おめでたいことじゃない。でも、弟くんはアルバイトだし、これからお金がかかるでしょ?あなたは長男なんだから、お給料もいいんだし、弟の結婚式代と当面の生活費、援助してあげるわよね?」
母はもともと見栄っ張りで、以前から“早く孫の顔が見たい”と口にしていた人でした。友人たちの間で孫の話題が出るたびに焦っていたのか、弟たちのしたことの是非よりも、“孫が生まれる”という事実のほうが大事だったようです。
被害者である私を、ただの「都合のいいATM」としか思っていない両親の対応に、私は悲しみや怒りを通り越して、スーッと心が冷え切っていくのを感じました。
静かな制裁準備
その場でテーブルをひっくり返して怒鳴り散らしたい衝動に駆られましたが、グッと堪えました。この狂った人たちに何を言っても無駄だと悟ったからです。
私は「急な話で混乱しているから、少し考えさせてほしい」とだけ告げ、足早に実家を後にしました。
家に帰ってからは、一切の感情を捨てて事務的な作業に徹しました。まずは予約していた結婚式場に連絡し、キャンセルの手続きと違約金の額を冷静に確認。
また元婚約者が以前うちに置いていったタブレットにはロックがかかっておらず、弟と浮気していた期間の生々しいやり取りの証拠をしっかりと写真に収めました。
そして最後に私が連絡を取ったのは、「元婚約者のご両親」です。
彼女のご両親は、昔から非常に厳格で曲がったことが大嫌いな、真面目を絵に描いたような方々でした。
私は「結婚式について、どうしても直接お話ししなければならない重要な件があります」とだけ伝え、後日、両家がそろう食事の席を設ける手はずを整えたのです。
厳格な両親の逆鱗に触れた瞬間
両家が顔を合わせる日。
私の両親と弟、そして元婚約者はどこかヘラヘラとした余裕のある表情で席に着きました。そこに、何も知らない元婚約者のご両親が到着しました。
私は全員がそろったところで、式場のキャンセルに関する書類と、弟と元婚約者が関係を持っていた証拠のコピーを静かにテーブルに並べました。
彼女は両親に、私とはすでに別れていて、弟と自然に交際するようになったと話していたようでした。
しかし実際は、私の出張中に2人は関係を持ち、妊娠していたのです。私はその事実と、私の両親から金銭的な援助を求められていることを、その場で淡々と説明しました。
話を聞き終えた元婚約者のお父様は、顔を真っ赤にして震え上がりました。
「自分の娘が、婚約者の留守中にその弟と関係を持ち、あろうことか妊娠しただと……!?その上、被害者であるお兄さんに費用をたかるとは何事ですか!!」
個室に響き渡るような怒声に、私の両親は「いや、でも生まれてくる孫には罪が……」と焦って言い訳をしようとしましたが、お義父様はピシャリと跳ね除けました。
「ふざけるな!こんな破廉恥な真似をした娘は、今日限り勘当です。我々は一切の援助はしません!そちらの息子さんと、自分たちだけで責任を取りなさい!」
元婚約者はポロポロと泣き崩れ、弟は顔面蒼白。先ほどまで強気だった私の両親も、相手のご両親の凄まじい剣幕にすっかり縮み上がり、一言も発することができなくなっていました。その様子を見て、私の胸のつかえがスッと下りていくのを感じました。
すべてを断ち切り、手に入れた穏やかな日々
その後、私は弟と婚約者に対して式場のキャンセル料の全額負担と、正当な慰謝料をきっちりと請求し、きっぱりと縁を切りました。
元婚約者と弟は、弟の不安定な収入では生活費も慰謝料の支払いもままならず、二人で狭くて古いアパートに引っ越さざるを得なかったそうです。私の両親もなけなしの貯金を切り崩して援助しているようですが、すでに限界を迎えていると親戚から聞きました。
私のもとには、時折母親から「少しだけお金を貸してほしい」と泣きつくようなメッセージが来ていましたが、すべてブロックしています。
私自身は、あの泥沼から完全に抜け出し、新しい土地に引っ越して心機一転、仕事に打ち込んでいます。非常識な家族やパートナーに振り回されることのない今の生活はとても穏やかで、あの時情に流されず、冷静に行動して本当に良かったと心から思っています。
◇ ◇ ◇
信頼していた家族やパートナーからの裏切りは、言葉では言い表せないほど深く心が傷つくものです。特に、自分たちを棚に上げて金銭的な依存をしてくるような無責任な態度は、つらいですよね。
情に流されて理不尽な要求を受け入れるのではなく、毅然とした態度で「自分を守る」選択をすることは決して冷たいことではありません。見下してくる人たちよりもお互いを尊重し、誠実に向き合ってくれる人たちとの関係を大切にしながら、前を向いて歩んでいきたいですね。
【取材時期:2026年3月】
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。