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「料理がまずい!」と酷評された老舗旅館。2カ月後、若女将と元料理人が起こした大逆転劇

大手ホテルチェーンに勤めていた私は、社内の人間関係に疲れて退職することを決めました。しばらくはゆっくり休もうと思い、以前から気になっていた秘境の温泉旅館を訪れたのですが、そこで思いがけない人物と再会することになり……。

 

厳しい言葉を投げかける元上司

その人物とは、私が以前勤めていたホテルチェーンの社長でした。彼は全国展開を進めるホテルグループの経営者で、この地域の宿泊事情を調べるために宿泊していたようです。

 

一方、その旅館を切り盛りしていたのは若女将のA子さん。ご両親から宿を引き継いで、温かい接客と地元の魅力を大切にした宿づくりを続けていました。ただ、現実にはお客さまの数は多くなく、館内の雰囲気にも少し元気がないように感じられました。

 

そんな中で、その社長がフロントでA子さんを呼び止め「ご両親が経営されていたころは良い宿だったが、最近は宿の手入れがなってないし、料理がまずい!」と、かなり厳しい口調で指摘していたのです。

 

その光景を見た瞬間、私は退職前に同僚から聞いた「社長は経営が厳しくなった宿泊施設を訪れては、土地や施設の売却の可能性を探っているらしいよ」といううわさ話を思い出しました。もちろん真偽はわかりませんが、どうしても気になってしまったのです。

 

「料理を変えれば、この宿はもっと良くなる」

私はA子さんに「さっきのお客さま、いろいろ言っていましたが大丈夫ですか?」と聞いてみました。するとA子さんは少し寂しそうに笑って「この旅館も私の代で終わりかもしれません。女将として恥ずかしいです」と言いました。

 

その悲しそうな表情に居ても立っても居られなくなり、私は思い切って「もしよければ、私に一度だけ厨房を任せてもらえませんか?」と聞いてみました。この旅館は温泉も雰囲気も、何より接客が素晴らしい。だからこそ、どうしても気になっていたのが料理だったのです。

 

突然の申し出に驚くA子さん。そこで私は、自分が以前ホテルで料理人として働いていたこと、そして腕を磨いてきたものの、社内の人間関係が合わずに退職したことを正直に話しました。そして、「料理を変えればこの宿はもっと良くなるはず。まずは一度料理を食べて判断してくれないでしょうか」と打診してみました。

 

私の熱意が伝わったのか、A子さんは厨房を借してくれることに。余った食材を使って料理を作ると、A子さんは目を丸くして「同じ食材なのに、こんなに味が変わるんですね」と驚きました。その日をきっかけに、私はこの旅館の再生を手伝うことになったのです。

 

 

口コミで広がった旅館の評判

それから約2カ月。私たちは少しずつ宿の改善を進めていきました。料理の内容を見直し、地元食材の使い方を工夫し、アレルギー対応や個別の要望にも丁寧に応える体制を整えました。

 

すると、少しずつ変化が現れます。

 

「料理がおいしかった」

「細やかな配慮がうれしい」

 

そんな口コミが増え始めたのです。

 

やがて雑誌の記者が取材に訪れ、旅館を特集してくれることになりました。さらに旅行系の人気インフルエンサーが泊まりに来てくださり、「最高のおもてなし。これぞ隠れた名宿」とSNSで発信してくれたことで、一気に予約が増えました。

 

派手な設備や最新システムではなく、人の温かさや料理の力。それが評価されたのだと思います。

 

人の想いで宿は変わる

一方、私が以前勤めていたホテルチェーンでは、経営方針をめぐる議論が社内で起きていると聞きました。全国展開を急ぐ社長の方針に対して、「地域性やサービスの質をもっと重視すべきではないか」という従業員の声があったそうです。

 

その後、経営体制の見直しがおこなわれ、例の社長も交代したと耳にしました。宿泊業界にとって「おもてなし」がどれだけ大切かが改めて議論された出来事だったと言えるでしょう。

 

そして現在、私が働く旅館ではA子さんを中心にスタッフ全員で宿づくりを続けています。厨房では役割分担を見直し、仕入れも改善し、お客様一人ひとりに合わせたおもてなしを心がけています。少しずつですが、旅館は確実に前へ進んでいます。

 

まとめ

退職後に訪れた温泉旅行が、まさか人生の転機になるとは思いませんでした。人と人の信頼関係があれば、宿も、仕事も、未来も、きっと変わっていく。私はそう信じて、今日も旅館で料理の腕を振るいます。

 

 

※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

 

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ライターベビーカレンダー編集部/ママトピ取材班

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