自分だけA5和牛ステーキを堪能する夫
子どもがまだ2歳だったころ、休日に家族で出かけた時のことです。当時の私は、自分の食事をゆっくり楽しむ余裕なんてありません。お昼時に入った和食レストランでも、少しでも節約になればと思い、子どもと取り分けて食べられてお手頃価格な800円ほどの「鶏そぼろ丼」を選びました。
お店のメニューには、1,000円前後の焼き魚定食やハンバーグ定食なども並んでいました。ところが、メニューを広げた夫は「せっかくの外食だし、スタミナをつけなきゃ」と上機嫌です。普通のお手頃な定食には目もくれず、なんと自分だけ3,500円もする「限定十食・特上A5ランク和牛ステーキ御膳」を注文したのです。
運ばれてきた豪華な和牛を前に、夫は「うまい!」と満足そうに完食。目の前で私と子どもが鶏のそぼろ肉を分け合っていても、気にかける素振りすら見せません。
ほかの選択肢もあった中で、わざわざ一番高いメニューを選ぶ感覚の違いと配慮のなさに、私はすっかり呆れ果ててしまいました。せっかくのお出かけ中に険悪な空気になるのは避けたかったので、その場ではなんとか冷静を装うことに。そして帰宅後、夫に「自分だけ贅沢をして虚しくならなかった?」と落ち着いて私の気持ちを伝えたのです。
夫は少し驚いたような表情をして、そのとき初めて気づいた様子でした。それ以来、外食のときには周りの様子を気にすることが、以前よりは増えたように感じます。
ふと思い出すと、あのときのステーキの香りと、少しだけ寂しかった気持ちがよみがえります。あの出来事がきっかけだったのかはわかりませんが、今では夫なりに周りを気にしながら食事をしている様子も見られるようになりました。私自身、家族だからこそ、察してもらうのを待つだけでなく、言葉にして伝えることも必要なのかもしれないと思うように。今も、小さなことから話すようにしています。
著者:滝美奈子/20代女性/3歳の娘を育てている母親、会社員。趣味はドラマ鑑賞、サイクリング
イラスト:はたこ
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2026年3月)