失敗を許さない彼
夕飯を待つ彼のために、私はすき焼きの支度をしていました。
しかし、テーブルへ運ぼうと、取っ手を二つまとめて持ち上げたそのときです。鍋はバランスを崩し、床へとひっくり返ってしまいました。肉も野菜も無残に散らばり、ズボンは濡れ、私は先に着替えようと、急いで脱衣所へ。
急いで着替えを終えてキッチンに戻ると、そこには呆然と立ち尽くす彼がいました。「せっかくのお肉が台無しじゃないか」。
彼はそう呟くと散らかった具材を拾うこともなく、ただ見つめていました。
ため息まじりに…
そして私が謝るよりも早く、彼はため息まじりに「母さんはこんなミスしないよ。すき焼き鍋の使い方なんて、考えればわかることだろ」と言いました。
これまで実家で暮らしてきて、食事もずっと母に準備してもらってきた彼。自分ではすき焼きを作ったことはなく、これまでも家事に関して何ひとつ手伝おうともしてくれなかった彼が、失敗した私を母親と比べて責めるような言葉を放ったことに、私は言葉を失いました。
ため息交じりにこちらを見る彼の視線はあまりにも冷ややかで、私は込み上げてくる涙をこらえることができませんでした。
悲しみが怒りに変わる瞬間
すると彼は私を横目に突然上着を羽織り、「もういいわ。俺、実家でご飯を食べてくるから」と出かける準備を始めました。
確かに彼の実家は近くにあり、すぐに行ける距離。私は悲しみと戸惑いを必死に抑えながら、「ごめんね。すぐに何か作るよ」と声をかけました。
しかし彼は、「すき焼きの気分だったんだよ。どうせ母親の料理のほうがおいしいし」と言い残し、家を出て行ってしまいました。私は汚れた床を拭きながら、悲しみの裏に湧き上がる怒りを感じました。
この出来事を通して、「この人との結婚は無理だ」と悲しくも確信しました。彼の中で、私はパートナーではなく、「お世話する人」のような状態だったのでしょう。互いに今後、寄り添い協力していくのは難しいと悟った瞬間でした。
同棲はお互いの生活を知り、寄り添えるかを見極める期間だと思います。この冬の「すき焼き事件」は、私にとっても学びとなった出来事でした。
著者:榊原愛七/30代女性・1児の母。看護師・カウンセラー兼、恋愛エピソードを執筆するライター。
イラスト:にしこ
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2026年1月)
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