義母の味に近づきたくて
「うちはよく、お袋が牛肉うどんを作ってくれた」
夫が懐かしそうに話すその味を、再現してみたかったのです。これまでは手軽な食材で済ませてきましたが、奮発して牛肉を買いました。正直、家計には高い買い物です。
自分で作るか聞くと「任せる」との返事。牛肉とねぎだけでは栄養が足りない気がして、小松菜も加えました。AIでレシピを確認すると、本来は具材を別々に調理するものでしたが、1つの鍋でできないかと聞くと「できる」と言われ、その方法で進めました。鍋の湯気を見ながら「きっとおいしい」と心が弾んでいました。
そのひと言が痛い
「もうすぐできるよ」と声をかけたとき、夫が鍋をのぞき込みました。そして大きな声で「なんで一緒に煮てるの?」と。別々にしないと肉の甘さがつゆに移るだろう、と強い口調で続けます。
「お袋はそんな作り方しない」
その瞬間、心が冷え込みました。私はレシピ通りだと伝えましたが、「普通は違う」と言われ続けます。つゆをひと口飲み「大丈夫だ」と言った後も、不満は止まりませんでした。欲しかったのは味の評価ではなく、「作ってくれてありがとう」のひと言だったのに。
義母と比べられる苦しさ
「何か言うことないの?」と聞くと、夫は「ごめん」と言いました。でもその直後にも「普通はさ」と自分の正解を譲りません。私は思わず「またお義母さんに話すんでしょ?」と言ってしまいました。以前、私のやり方を細かく義母に報告されていたことがあるからです。
「悪かったよ」と抱きしめられましたが、心は追いつきませんでした。夫の腕の中でも、否定された悲しみが消えなかったからです。形だけの仲直りでは、義母と比較され続ける孤独感を埋めることはできませんでした。でき上がったうどんは決して失敗ではありません。でも、義母と比べられる前提で見られている気がして、悲しさが込み上げました。
まとめ
家族で温かい気持ちになりたかっただけなのに、料理の工程一つで心の距離が開いてしまうことがあります。料理に「正解」の作り方はあっても、家族が向き合う姿勢に唯一の正解はないはずです。
義母の味を大切に思う夫の気持ちを尊重するように、私の今の努力もまた、新しい家族の味として受け止めてもらえたら。完璧な再現を目指すより、目の前の1杯を2人で慈しむ。そんな心のゆとりを大切にしたいと気付かされた出来事でした。
※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。
著者:長谷川里奈/30代女性・主婦
イラスト:ゆる山まげよ
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2026年3月)
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