文字というより線!注意しても聞き流すだけ
40代の私は、夫と娘2人の4人家族。夫は外食の支払いを、ほとんどクレジットカードで済ませます。最近は暗証番号入力が主流ですが、時々サインを求められることも。そのたびに夫は「ハイハイ」と軽く応じ、ペンを走らせるのですが、書き上げるのは文字とは言い難い、くねくねとした線。お酒が入っている夜は、なおさら判読不能です。
私はそのいいかげんな夫の様子を見るたびに、胸がざわついていました。「もっときちんと書いてよ、みっともないから!」と、つい小言のように口をついて出ます。夫は「これが俺の字だ」と意に介さず、私の言葉はいつも軽く受け流されてきました。
たかがサイン。けれど、私にとっては人前で示す態度の一つ。夫が見せる小さな違和感は、少しずつ積み重なっていたのです。
ついに店でトラブル発生!娘たちもおろおろ
ある日のレストランでの出来事です。食事を終え、私は先に席を立ってトイレへ。夫が会計を済ませているはずでした。ところが戻ると、14歳の長女と10歳の次女が涙目で立っていました。「ママ、来て! パパが怒ってる」。嫌な予感が胸をよぎりました。
急いで会計カウンターへ向かうと、夫と店員さんが言い合いになっています。
「サインしただろう」
「申し訳ありません、文字が判別できません。もう一度お願いいたします」
「ああ、ついにこうなるときが来たか」そう思いました。夫のサインは、たしかにヘビのようにうねる線。第三者が見て読めないと言うのも無理はありません。
私は小声で「だから言ったでしょう。書き直してあげて」と伝えましたが、夫は「これが俺の字だろ!」と声を荒らげます。お酒も入っていて、話になりません。子どもたちは不安そうに立ち尽くしています。私は、恥ずかしさと情けなさでいっぱいでした。
「僕も読めないなぁ…」意外な人物がひと言
そのとき、後ろから「どれどれ、どんな字を書くのかな」と穏やかな声がしました。振り返ると、そこにいたのは、夫が日ごろからお世話になっている取引先の大手企業の社長でした。偶然、同じ店に居合わせていたのです。驚き、目を見張る夫。社長の貫禄ある落ち着いた立ち振る舞いがそうさせるのか、場の空気が一瞬で変わりました。
社長は伝票を手に取り、目を細めて眺めながら、「これじゃ、僕も読めないなぁ。まあ、僕も字が苦手なほうだけどね」と、やわらかく笑いました。責めるでもなく、からかうでもなく、ただ事実をさらりと口にして自席に戻って行きました。その余裕ある態度が、かえって重みを持って響きました。
夫は絶句したままで、次の瞬間、はっとわれに返ったような表情に。それまでの強い口調は影を潜め、気まずそうに頭をかきます。そして「すみません、書き直します」と小さくつぶやき、ペンを握りました。プライドが邪魔をして引き下がれなかったのに、敬意を抱く相手の前では素直にならざるを得なかったのでしょう。
書き直したサインは、一画一画確かめるように書かれ、きちんと読める文字でした。店員さんが「ありがとうございます」とお礼を言うと、張りつめていた緊張が解けていきます。子どもたちも、ほっとしたように私のそばへ戻ってきました。あの数分間は、家族にとって忘れがたい時間になったのでした。
まとめ
家族の前での振る舞いは、そのまま子どもたちの記憶になります。レストランの片隅で交わされたやりとりも、きっと娘たちの心に残ったはずです。相手が店員であっても、取引先の社長であっても、本来、態度を変える必要はありません。でも残念なことに、その当たり前のことができなかった夫の未熟さが浮き彫りになりました。
大人であるということは、変なプライドや立場の強さを示すことではなく、誰に対しても同じ誠実さを保つことでしょう。小さなサインをめぐる出来事は、感情に流されず、誰に対しても誠実でいられるかどうか、親である前に、大人としての振る舞いを、改めて考え直すきっかけとなりました。
※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。
著者:石川 ふみか/40代・会社員。4歳年上の元夫と結婚20年目に離婚。2008年生まれの女の子と2011年生まれの女の子の子育て中。子育てに追われつつも、コンビニの新商品チェックだけは欠かさない自称・コンビニマニア。
イラスト:マメ美
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2026年3月)
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