私は地方銀行に勤めており、年収も安定していました。夫は「これからは僕たちが君の家族だ。もうひとりじゃないよ」と言ってくれて、家族を大切にしようと心に決めたのです。そして、結婚を機に私たちは家族3人で住むために少し広めの家に引っ越しました。
最初のうち、息子は私が仕事から帰宅すると「おかえりなさい」と笑顔で迎えてくれ、家事も手伝ってくれていました。ところが一緒に暮らし始めて3カ月ほどがたったころから、私が話しかけても返事をしなくなり、目も合わせてくれなくなったのです。その変化があまりに急だったため、私は戸惑いを隠せませんでした。
夫に相談すると「思春期だから気にしなくていい」と言われましたが、私は自分が何か悪いことをしてしまったのではと不安になりました。
夫まで私を無視するように
そんなある日、夫が「会社で異動になって、収入が下がりそうだ」と肩を落として帰ってきました。今の家の家賃や生活費を心配する夫に、私は「共働きだから大丈夫。しばらく私が多めに出すから気にしないで」と伝えました。夫はホッとした様子で、少し気持ちが軽くなったようでした。
しかしその約1カ月後には、夫まで私に冷たくなってきたのです。「仕事が変わって疲れているだけ」と最初は言っていましたが、やがて食事中も話しかけられず、あいさつすら返ってこなくなりました。親子そろって私を無視する日々が続いたのです。
仕事と家事を真面目にこなしながら、私は何度も涙をこらえました。でも泣いたって解決しない。私は、無視されるようになってから密かに動いていました。そしてある晩、夫にこう告げたのです。
「無視されて半年たったよ。私、家族として扱われてないよね」
「仕事で疲れてるんだ」
「家賃も光熱費も支払いやめる」
「今後は自力で生きてね?」
「え?」
夫は目を見開いて固まっていました。私が家を出るなんて、想像もしていなかったのでしょう。「子どももいるのに困る」とすがってきましたが、夫は元々シングルファーザーで家事もこなせる人。息子も高校生です。私は荷物をまとめて家を出ました。
すべてには理由があった
私が家を出て1週間ほどたったころ、夫が憔悴した顔で訪ねてきました。「息子も反省している。再婚してすぐで戸惑っていただけなんだ。戻ってきてほしい」と言うのです。
継母との生活に息子が戸惑ったのはわかります。けれど、夫まで一緒になって私を無視していたのはどう考えてもおかしい。問い詰めると、夫はまた「仕事が大変で」と言葉を濁しました。
私は大きくため息をつきました。
実は、夫の異動の話は嘘だったのです。違和感が積み重なる中、私は同僚の勧めで探偵事務所に相談し、夫の行動を調べてもらったのです。そして受け取った報告書には、夫が定時で会社を出たあと、特定の女性と繰り返し会っていたと記録されていました。
全部知っていると告げると、夫は一転して謝罪を始めました。しかし「遊びだっただけだ」と言い訳を続けるので、私は弁護士に相談する旨を伝えました。
その後、共通の知人から聞いた話で、夫が結婚前から浪費癖と女性関係の問題を抱えていたこと、前妻とはそれが原因で離婚していたこともわかりました。息子を引き取った背景には、金銭面を含めて離婚を有利に進めたい思惑もあったようです。
息子にも話を聞くと、「父さんに『あの人に心を開くな。お前があの人と仲良くなったら、父さんの味方がいなくなる』って言われていた」と打ち明けてくれました。どうやら夫は、私が息子と打ち解けることで、自分の身勝手な生活や夜遊び、浪費を私に知られるのを恐れていたようで……。
実際、前妻のときも息子を味方につけて立場を守ろうとしていたと、のちに前妻の親族から聞きました。さらに、私の収入をあてにして結婚した手前、家計を握られたくないという思いもあったのでしょう。身寄りのない私なら、多少ひどい扱いをしても離婚まではしないだろうと踏んでいたのだと思います。
身勝手な夫にさよなら
離婚調停を経て、私は夫と不倫相手から不貞に関する慰謝料を受け取りました。後日、夫からは「家計が苦しい」と連絡がありましたが、すべて弁護士を通すよう伝え、個人的なやりとりは断ち切りました。
息子からも、しばらくしてから「あのときはごめんなさい」と手紙が届きました。父親の言いなりになっていた自分を後悔していると書かれていました。まだ高校生ですし、反省の気持ちは受け止めたいと思います。もう連絡が来ることもないとは思いますが、自分の人生をしっかり歩んでほしいと願っています。
離婚して半年。ひとりの食卓は寂しくもありますが、心はずいぶん軽くなりました。これからしばらくは、自分のためだけに時間を使って生きていこうと思っています。
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結婚とは、「家族になる」という大きな決断です。だからこそ、相手の言葉や態度を冷静に見極める必要もありますよね。甘い言葉に流されず、違和感を覚えたときは信頼できる第三者に相談することが、自分を守る大切な一歩になります。家族だけに限らず、友人や同僚など人間関係の中で「無視される」というような理不尽な状況に置かれたときは、早い段階でその理由を確かめ、必要であれば距離を置く。あるいは別れを選択する。そんな勇気を持っていたいと改めて考えさせられますね。
【取材時期:2026年4月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。