ある日、やっと家事を終えて寝ようとしたときのことです。突然「シーツの色が気に入らない」と言い出し、その場で交換するよう命じてきたのです。
まるで子どもを相手にしているようで、私は言葉を失ってしまいました。
結婚前の夫は、こんな人ではありませんでした。仕事にも趣味にも一生懸命で、私への気遣いも忘れない人でした。
この人となら幸せな家庭を築けると信じていたのに――その期待は、見事に裏切られてしまったのです。
専業主婦は家政婦と一緒だと言われた日
夫は頻繁に会社の同僚を家に連れてきては、宅飲みをしていました。食費はかさみ、準備や後片付けもすべて私の負担になっていました。
「少し回数を減らしてほしい」と勇気を出して伝えたことがあります。しかし、その瞬間、夫は顔色を変えました。
「ここは俺の家だろ? 俺が稼いでいるんだから何をしようが勝手だ」
それだけでも十分ひどい言葉でしたが、さらにこう続けたのです。
「専業主婦なんだから文句を言うな」
「家政婦と一緒だろ。言われたことだけやっていればいい」
その言葉を聞いたとき、胸の奥が冷たくなったのを覚えています。この生活が何年も続くのかと思うと、自然と「離婚」という言葉が頭に浮かぶようになっていました。
祖父母のもとで気づいた本音
そんなある日、祖父母から「久しぶりに遊びに来ないか」と連絡がありました。両親が共働きで幼いころから祖父母に育てられてきた私。祖父母に会いたいという気持ちは日に日に高まっていきました。
意を決して、おそるおそる夫に相談すると、意外にもあっさり了承されました。「口うるさいお前と離れられてせいせいする」と喜んでいる夫に、少しだけ寂しさを感じましたが、それ以上にホッとしたのを覚えています。
久しぶりに祖父母と過ごす時間は、とても穏やかなものでした。張りつめていた心が、少しずつほどけていくようでした。
そして、私はこれまで誰にも言えなかったことを祖父母にすべて打ち明けたのです。夫の態度、暴言、自分の気持ち――話し終えたとき、不思議なくらい心が軽くなっていました。
祖父母は静かに話を聞き、こう言ってくれました。
「無理して我慢する必要はないよ」
「自分を大事にしなさい」
その言葉を聞いたとき、私はようやく決心したのです。もう我慢はやめよう、と。
決定的な夫の一言
家に戻ると、数日しか空けていないのに、部屋はひどく散らかっていました。私は何も言わず、いつも通り家事をこなし、夕食には揚げ物を作っておきました。
しかしその日の夜、帰宅した夫は、開口一番こう言ったのです。
「揚げ物の気分じゃない」
「洗濯のたたみ方が気に入らない」
そして極めつきに、「全部やり直せ!」と冷たく言い放ちました。
私が思わず「そんな言い方ないじゃない……」と言うと、夫はそれも気に食わなかったのか今度は声を荒らげてこう言ったのです。
「俺が養っているんだから言うことを聞け!」
「料理も洗濯も全部やり直しだ!」
そう言いながら、わざと洗濯物をぐしゃぐしゃにする夫の姿を見て、私の心は決まりました――もうすべて終わりにしよう、と。
私は笑顔を作り、「わかった、やり直すね」とだけ答え、その日は言われた通りにやり直しました。それを満足そうに見ていた夫の顔は、今でも忘れられません。
すべてを終わらせた日
翌日、夫が出勤したあと、私は記入済みの離婚届を置いて家を出ました。必要な荷物だけを持ち、実家へ戻ったのです。
その夜、夫は血相を変えて実家にやってきました。
「なんで離婚なんだ!」
怒鳴る夫に対して、私は冷静にこれまでのことをすべて話しましたが……夫は聞く耳を持ちません。
「俺は旦那だぞ」
「養ってやっているんだから、俺の言うことを聞くのが当たり前だろ」
あまりにも変わらない態度に、私はあきれ果て、準備していたものを取り出しました。それは、これまで録音していた会話の音声でした。
夫の暴言や命令口調、見下すような発言――すべてがはっきりと残っているものです。
それを両親と祖父母の前で再生すると、夫は一瞬で黙り込みました。目は泳ぎ、何度もハンカチで汗を拭っています。しどろもどろになりながらも言い訳をしようとしていましたが、言葉が出てこなかったようで、最終的には離婚に同意しました。
離婚後、夫の生活は急激に荒れていったと共通の知人から聞いています。
家は散らかり、食事はコンビニ頼み。身の回りのこともまともにできず、遅刻や欠勤が増え、職場での評価も下がっていったそうです。
一方で私は、実家での生活を経て、少しずつ仕事に復帰しました。家族に支えられながら、穏やかな日々を取り戻しています。あのとき決断して、本当によかったと心から思っています。
夫婦として大切なのは、対等であることだと思います。どちらかが上に立ち、もう一方を従わせる関係では、長く続くはずがありません。
我慢を続けることが正解とは限りません。自分の気持ちに正直になることも、同じくらい大切なのだと実感しました。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。