身勝手な行動だと問い詰めたものの、兄は開き直るばかり。生活費の話を持ち出すと、「家族なのに金を取るのか」と鼻で笑われました。
かつて兄が実家にいたころは学生だったため、生活費を請求されることはありませんでした。しかし大人になった今は、状況が違います。
私自身は毎月きちんと家に入れていましたし、兄には両親から借りたまま返済されていない500万円の借金がありました。しかし兄夫婦はお金のことを曖昧にしたまま、実家での生活をスタートさせたのです。
兄夫婦の押しかけ同居
同居から1カ月が経つと、兄の要求はさらに大きくなっていきました。私の部屋は8畳、兄夫婦の部屋は6畳だという理由で部屋の交換を迫ってきたのです。
断ると今度は、将来生まれるかもしれない子どもの部屋が必要だと言い出し、「実家はいずれ俺のものにする」と平然と言い放ちました。
義姉は家事をほぼ母と私に任せきり。さらに、私の独身・実家住まいを見下す言葉が続くようになりました。穏やかだった実家の空気が、じわじわと変わっていくのを感じていたのです。
兄に秘密にしていたこと
さらに1カ月が経った昼下がり、兄が私の荷物を物置部屋に運び出していました。慌てて止めると「今日からここを俺たちの寝室にする。独身なんだから、住むところなんてどこでもいいだろ?」と、兄は悪びれる様子もなく、自分たちの都合だけを押し付けてきます。
「住むところなんてすぐに探せるだろう」兄は得意げな顔をしていました。この家はいつか長男である自分のものになると勝手な主張をし、私を追い出そうとする兄夫婦には、もう我慢の限界です。
私は、言い出せずにいた事実を伝えることにしました。「この家ね、実はお父さんが売却を決めたの。お兄ちゃんの借金を肩代わりした分を補填するためにね」と。
兄は「嘘だろ」と絶句していました。「この家はもう、お兄ちゃんが継げる場所じゃないんだよ」私の言葉に、兄は顔面蒼白になっていました。
実はもう契約も済んでいて、来月には取り壊しが始まります。私たち3人の新居はすでに契約済みですが、そこに兄夫婦の部屋など用意していません。
「じゃあ俺たちはどうすればいいんだよ!」と兄は逆ギレして声を荒らげました。けれど、勝手に転がり込んできて勝手に私を追い出そうとしたのは兄たちです。
「取り壊しまであと3週間あるから、自分たちで何とかして。自業自得だよ」私は冷めた声でそう言い捨て、立ち尽くす兄夫婦を置いて部屋を出ました。
帰れる家はもうない
2週間後、私と両親は新居への引っ越しを終えていました。兄から連絡が来たのは、その直後でした。「置いていくなんてひどい」「お金がなくて引っ越せない」「住所だけでも教えてくれ」——次々と言葉が続きます。
かつて「住むところなんてすぐに探せる」と私に言い放った人と、同じ人物だとは思えませんでした。
500万円の借金を少しずつでも返してくれていれば、答えは違ったかもしれません。でも現実は違いました。兄を信用できる理由が、何ひとつ残っていなかったのです。
「お兄ちゃんが帰れる実家は、もうどこにもないんだよ」それが私の最後の言葉でした。私はそのまま電話を切り、返済用の口座番号だけをメッセージで送ったのでした。
兄の末路
兄夫婦は取り壊しの数日前、夜逃げ同然でどうにか借りたアパートへ移ったと聞きました。結局、500万円の返済は今も滞ったままです。両親は「これで縁が切れるなら」と、そのお金を手切れ金として割り切ることにしたようです。
しばらくして、兄から「本当にまずいことになった」という連絡が届きました。何があったのかは聞きませんでしたが、私はそのとき連絡先をブロックしました。兄がその後どうしているかは知りません。関わるつもりもありません。
新居では、父と母と3人で穏やかな時間が流れています。兄のことで苦労した両親に、これからは私がしっかりと恩返ししていきたいと思っています。
◇ ◇ ◇
「実家は長男のもの」という時代錯誤な思い込みと、家族への甘え。それらが積み重なった結果、お兄様は自らの居場所だけでなく、最も大切な「家族からの信頼」までをも完全に失ってしまいました。
家族といえど、礼儀は必要です。生活費や家事の分担など誠実な対価を払わず、権利だけを主張すれば、いつか必ず破綻を招くのではないでしょうか。
【取材時期:2026年3月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。