子犬に夢中?「うちも欲しい!」
子犬たちがすくすくと成長し、譲渡先を探し始めたころのことです。ママ友が娘さんを連れてわが家に遊びに来ました。
ママ友の娘さんは、まるで壊れ物を扱うかのようにやさしく、たっぷりの愛情を込めて子犬をなでてくれました。しかし、ママ友は子犬を見るなり「きゃあ! かわいい! やばい!」と突然の大声を上げたのです。
犬は人より高い周波数の音まで聞き取れるとされるため、近くで大声を出すと驚かせてしまうことがあります。私がそのことを伝えてもお構いなしで、「うちもペットが欲しい! こんなにかわいい子犬なら大歓迎! かわいがるから譲って!」と言ってきました。
命を預けるというのは、簡単なことではありません。その場の勢いだけで決めるわけにはいかないと思い、後日、ママ友の夫も交えて話し合いの場を設けました。すると、ママ友の夫は実家で大型犬を飼っていた経験があり、飼育の知識も十分でした。日々の散歩や世話も夫婦で協力すると約束してくれたため、安心してお譲りすることにしたのです。
1年ぶりの再会。笑顔で放った衝撃発言
譲渡してから1年が経ったころのことです。突然わが家のインターホンが鳴りました。玄関を開けると、そこにはすっかり大きくなったゴールデンレトリバーを連れたママ友の姿がありました。
久しぶりの再会に喜んだのもつかの間、ママ友はまったく悪びれる様子もなく、ヘラヘラと笑いながら軽いノリで、驚くべき言葉を口にしました。
「こんなに大きくなるなんて聞いてないよ~。もう飼えないから、この子を引き取って!」
あまりの身勝手な言い分に、私は言葉を失いました。私が何かを言う間もなく、彼女はリードを私に押し付けると、さっさと帰ってしまったのです。命をまるで物のように扱う彼女の態度に、私はぼうぜんとするしかありませんでした。
突然の「やっぱり返して!」
1年前に譲った犬を突然押し返され、私は急いでママ友の夫に連絡を入れました。事情を聞いたママ友の夫は、愛犬を勝手に連れ出されたことに絶句した後、激しい怒りをにじませました。「勝手に大切な家族を手放すなんて許せない……! あとは自分に任せてほしい」と謝罪する彼の言葉を信じ、私は一時的に犬を預かることにしました。
そして数日後。事態は急展開を迎えます。ママ友がかなり焦った様子で、再びわが家へやってきたのです。
「お願い、やっぱりあの子をもう一度うちで飼わせて!」数日前のヘラヘラとした態度はどこへやら、彼女は必死の形相でした。どうやら、大切な犬を勝手に手放したことを夫から激しく責められ、「そんな冷酷な人間とは一緒に暮らせない」と本気で離婚を突きつけられたそうです。「このままでは本当に離婚されてしまう」と泣きついてきましたが、自分の保身のためだけに犬を取り戻そうとする身勝手な要求に応じるわけにはいきません。私はきっぱりと断りました。
命と向き合ったママ友・夫の決断
後日、ママ友の夫と娘さんがわが家へ謝罪に訪れ、「これからは自分が責任を持ってこの子を育てます」と深く頭を下げました。聞けばあの後、夫婦で話し合いを重ねた結果、別居することになったそうです。
少し迷いましたが、赤ちゃんのころから一緒に過ごしていた娘さんと再会し、しっぽをちぎれそうなほど振って喜ぶ犬の姿を見て、私は再び彼らに託すことに決めました。今では2人の愛情を一身に受け、穏やかに暮らしているそうです。
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ペットはSNSで映えるための道具でも、アクセサリーでもありません。命ある家族として迎え入れる以上、責任を持って一生を見届ける覚悟が必要です。言葉を持たない動物たちだからこそ、私たちが彼らの声に耳を傾け、愛情をもって守り抜いていきたいですね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。