葬儀を終え、すべきことは?
白い布で包まれた箱に入った父の遺骨。家に戻り、仏壇の前にそっと置きました。父は住み慣れた家にやっと戻ることができたわけです。「やっと帰ってきたね、父さん」。その晩、私と兄、そして母は、生きている間に父を家に帰してあげることができなかった悔しさや、父の思い出について語り合いました。
しかし、悲嘆に暮れている暇はありませんでした。重い腰を上げ、翌日にはまず、数多くはないものの、あちこちからいただいた香典の記録と整理をしました。私が持ち込んだパソコンで記録し、ネット上でデータを兄と共有できたので、その後四十九日法要の案内などに役立ちました。
一方、手間がかかったのが、さまざまな変更手続きです。母は家で1人暮らしをする決心をしていましたが、ずっと専業主婦で、対外的な手続きはすべて父任せでした。私たちきょうだいは母が世帯主として暮らすための各種手続きに追われました。兄も私も他県に住んでいるため、実家に滞在できる日数は限られています。数日のうちにできるだけの手続きを進めなくてはいけませんでした。役場窓口へは行くとして、あとは何から手をつければよいものかと思案しました。
限られた数日でできたこと
金融機関関係に勤めた経験のあるいとこが教えてくれたのですが、死亡が確認されると、金融機関では口座が凍結されるとのこと。遺産相続に関わる余分なトラブルを回避する目的があるそうです。その通りで、電気、ガス、保険、ネット、テレビ視聴料など、支払いに使っていた父の口座が出金も入金もできない状態になりました。とりあえずの生活費は手元にあったのでよかったのですが、各種支払いを母名義、あるいは兄名義の口座へ変更する手続きが必要でした。
父名義の通帳から引き落とされている項目を拾い出し、兄と私は手分けして、各窓口に問い合わせました。電話だけでなく、ネットで対応しているところもありました。ほとんどは、後日変更届の用紙を送ってくれるとの返答で、引き落としができない期間の分は、コンビニなどで支払えるよう、払込票が送られてくるそうです。これらは母が受け取り、まとめて兄のところへ送り、兄が対処することになりました。
そうこうしている間にも、葬儀社に葬儀代を支払ったり、生命保険の担当の方が来たり、四十九日法要へ向けてお膳の手配、業者と打ち合わせ。そして、葬儀から3日後には二度目の七日法要の日が来ました。
えっ、納骨ってどうやってするの?
ここで、今度は墓の話が持ち上がりました。「四十九日の納骨で、いざというときにお骨を収める場所がわからなかったり、道具がないと開かなかったりすることが時々あるんですよ」とお寺の方から聞かされて、一同不安に。
前回納骨したのは30年も前、祖母の納骨のときです。母も兄も私も、そのときの記憶がほとんどありませんでした。一番関わったはずの父に聞きたいところですが、本人が遺骨となってしまっています。納骨作業に携わった伯父たちもすでに他界していました。私と兄は2人で夕方、軍手をはめ、スコップを持って、墓へと出向きました。手を合わせた後、ゴトゴトと石でできた香炉台を動かし、砂をどかすなどしてみましたが、それらしい穴はなく、どこから納骨するのかがやはり確認できません。
結局、墓の石碑に父の名前などを掘ってもらう石材業者に連絡し、状態を確認してもらうことにしました。後日、「大丈夫ですよ。納骨の準備ができましたのでご安心ください。当日も立ち会いますよ」と丁寧な連絡をもらい、ほっとしました。
そのほか、凍結された父の口座の解約や、土地や家屋の名義変更については、兄や私の戸籍謄本や印鑑証明書などをそろえなければならないこともあり、四十九日法要を目安にして徐々に進めることにしました。
まとめ
父の葬儀後、兄と2人で数日間忙しく過ごしましたが、できるだけのことは進められたと思います。逆に限られた時間だったからこそ、精力的に取り組めたという気もします。翌日は兄も私も実家を離れるという晩。何げなく父の通帳を眺めていて、毎年度末に振り込まれているお金があることに気付きました。税の還付金です。兄は、「年金暮らしだから確定申告はしなくてもいいんじゃないかな?」と言いましたが、父は毎年、几帳面に申告し、ささやかな還付を受け生活費に入れていました。いつも黙ってコツコツと小さなことを積み重ねていた父を思い出しました。もう書き足されることのない父の通帳の数字を見ながら、自分がそうして育てられたありがたさを実感したのでした。
※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。
著者:森原あさみ/50代女性・パート
イラスト:sawawa
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています。
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