拾った用紙を夫に見せると顔をしかめ、ゴミ箱から引っ張り出してくるなと言い捨てました。
以前も食生活について伝えたことがあり、そのたびに見下す言い方でうるさいと拒まれていた経緯があります。それでも今回は数値の悪化が明らかだったため、食事の見直しとしばらくの禁酒をお願いしました。
ところが夫は、酒は唯一の癒しだ、薄い料理は出すな、野菜ばかりだと惨めな気分になると次々と反論しました。家系は酒に強く肝臓に自信があるとも言い張り、悪い数値が出ていても自分の身体への過信は揺らぎません。
数値が改善するまでの話だと丁寧に伝えても、夫には届かなかったようです。
膨らむ疑念
それから私は食事の管理を始めました。塩分を控えた献立に変え、野菜の量を増やし、自宅にアルコールは置きません。夫は文句を言いながらも食事には手をつけていましたが、体調が改善する様子はありませんでした。
5カ月ほど経ったころから、夫の変化が目につくようになりました。顔色が悪く、食欲もないよう……。朝は起き上がるのがつらそうで、夜中に何度もトイレへ立つ音が聞こえます。顔や手のむくみも気になり、手がかすかに震えていることもありました。
病院へ行くようすすめても夏バテだ、年のせいだと取り合ってもらえません。食事も管理している、自宅での飲酒も制限している、それでもなぜ悪化するのでしょう……。
私の中にひとつの疑念が浮かびます。外で飲んでいるのではないかと問い詰めると、夫は激しく怒り、うるさいと言い残してそのまま出て行ってしまいました。
体調の悪化
それから2カ月ほど経った夜、夫が不調を訴え、救急を受診しました。食あたりの症状での受診でしたが、検査の過程で肝臓に異常が見つかったのです。医師からは、もう少し発見が遅れていれば命に関わる状態だったと告げられました。
翌日、病室に駆けつけた義母の第一声は、嫁として夫の生活管理ができていなかったのでは、という私を責める言葉でした。
私は「文句なら夫に言ってください。夫は愛人のところに入り浸っていたんですから」と、夫の秘密を暴露しました。
義母が言葉を失う中、私は続けました。夫が水商売の女性に入れこみ、不倫していたこと。そこで大量に飲酒を続けていたこと。そして体調の悪化に不審を感じてから興信所に依頼して調査したこと……。
写真、録音、クレジットカードの使用履歴——証拠は揃っていました。
義母は突きつけられた証拠の数々に言葉を失い、しばらく沈黙してから「……ごめんなさい。あなたは息子のために、精いっぱいやってくれていたのね」と、絞り出すようにつぶやいたのでした。
離婚宣告
翌日、面会に行くと、夫は「口の中が気持ち悪い。口直しに濃い味の弁当と酒を買ってこい」と平然と要求してきました。
私が断ると、こっそり持ってくればいいと言うので、私は「不倫相手に頼めばいいじゃない」と返答。隠し通せていると思っていた夫は、初めて動揺した表情を見せました。
「離婚します。あなたからも不倫相手からも慰謝料を請求します。弁護士への相談は済んでいます」
夫は病人から慰謝料を取るのかと声を荒らげましたが、不貞行為という事実は変わりません。義母も私の味方についてくれたことで、夫はついに自身の過ちを認め、支払いに応じる合意書にサインしました。
観念した夫は、私への当てつけのように「愛人と結婚する」「お前よりもいい女だ」などと言い出しました。その瞬間、義母が口を挟みました。
「不倫しておいて、何をそんな偉そうにしているの。これ以上、私に恥をかかせないでちょうだい」義母の声は震えていましたが、言葉は揺るぎないものだったのです。
夫の病状は……?
私は夫に、医師から聞かされた検査結果を話しました。長生きするためには、これから先の人生、大好きなお酒や食事を制限し、規則正しい生活を送らなくてはなりません。それは何度も警告を無視し続けた選択の結果です。
「好きな人と好きなだけ飲めたんだから、もうお酒は十分でしょ」
私のその言葉に、夫は反論できませんでした。私にも、もはや掛ける言葉はありません。
弁護士を通じた手続きはすでに進んでおり、離婚に向けて気持ちも固まっていました。
夫の末路
その後、弁護士を介した話し合いを経て、不倫相手と夫の双方から慰謝料を支払わせる形で正式に離婚しました。夫は生活の改善を試みましたが、自分一人ではきちんとセーブできなかったよう……。結局、義母の管理の元、生活を改めることになったようです。
不倫相手は、夫の体調が思わしくないと聞いてすぐに姿を消したとのこと。義母が連絡を試みたものの、一度も姿を見せることはなかったと聞いています。
きっと今、夫は厳しい制限のある生活を送っていることでしょう。しかし、それもすべて自業自得。彼は今、自分が手放したものの大きさを噛み締めているのかもしれません。
◇ ◇ ◇
たとえ「うるさいな」と煙たがられたとしても、相手の健康を真剣に願う口出しは、家族としての深い「思いやり」そのものです。
向き合うことはエネルギーがいりますが、現実から逃げずに声をかけ続けること。そして夫の側も、その小言の裏にある愛情に真摯に耳を傾けること。その積み重ねこそが、家族を守るカギとなるのではないでしょうか。
【取材時期:2026年3月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。