義両親はいわゆる「毒親」で、夫は学生時代のアルバイト代から社会人になってからの給料まで、長年にわたり生活費名目で過度な仕送りを求められ続けてきたからです。
私が夫とまだお付き合いしていたころ、夫は義両親への仕送りのためにとても質素な暮らしをしていました。付き合いたてのころは『何か事情があるのだろう』と詳しくは聞けませんでしたが、交際が長くなるにつれ、夫と義両親の関係を聞き、私はゾッとしました。
当時、夫は自分の生活を切り詰めてまで、義両親に一般的な額を超える仕送りをしていました。「額を減らすべきだ」「そこまでする必要はない」なんて思っていましたが、親子という関係の中でそれが当たり前になっており、夫自身も異常さには気づいていたものの、私の説得だけで簡単にやめられるものではありませんでした。
しかし、真剣に結婚を考えるようになったころ、私たちは2人でじっくり話し合いました。そして夫はついに、「もう俺ひとりの問題ではない。これからは君と家族になって一緒に生きていくんだ。縁を切る覚悟できちんと断るよ」そう言って、義両親への仕送りを断ることを決断したのです。
夫が義両親への多額の仕送りを初めてきっぱりと断れたのは、私と結婚する直前のことでした。
改心したはずの義両親との同居
その後、迎えた結婚式。式には義両親も参列し、心から私たちを祝福してくれている様子でした。さらに義母は私に「これまでのことを本当に後悔しているの。自分たちの生き方、ずっと息子に甘えてきたことを恥じているわ。息子があなたみたいな素敵な人と一緒になれて本当によかったわ。ありがとう」と涙ながらに語ってくれました。
義実家での同居を打診されたときも、義母は「これまでに息子にしてきたことは決して消すことはできないけど、これから信頼を取り戻していきたい。私たちに挽回のチャンスをもらえないかしら。妊活中のあなたたち夫婦のサポートをさせてほしいの。家事も育児も何でも手伝わせて」と涙ながらに必死に訴えかけてきました。
私はそんな義母の言葉に心を打たれ、「離れは母屋よりも新しくてきれいだし、適度な距離も保てるし」と、同居に難色を示す夫を説得してしまったのです。今思えば、それが大きな間違いでした。
同居を始めて2カ月が過ぎたころ、私は体調を崩し、胃腸炎のような症状に見舞われ、寝込んでしまいました。夫は仕事を休んで看病しようとしてくれましたが、調整できず……するとなんと、義母が母屋から温かい雑炊を作って運んできてくれ、さらにはゼリーやスポーツドリンクまで買いそろえて献身的に看病してくれたのです。
その夜、帰宅して私の話を聞いた夫は「俺が子どものときは、『寝ていれば治る』って、インフルエンザでも大した看病をしたことのない母親だったのに……」と驚きつつも、少しだけ義母を見直し始めているようでした。
しかし翌日、少し体調が回復して母屋に用事があって向かった私は、居間で話す義両親の会話を偶然耳にしてしまい、全身の血の気が引きました。
やさしさの裏に隠された本性
「あの子が寝込んでくれて好都合だったわ。手作りの雑炊を作ってあげたふりをして、実際はレトルトを温めただけ。台所の戸棚まで見られたし、お米や缶詰も気づかれないように持ち帰れわ! それに、献身的に看病してあげれば、息子に恩も売れるしっ♡」
「ああ、嫁が寝込んでる今、お前があっちの家の家事もやってやれば、息子に恩を売れるな! これでまた息子の財布を握って、俺たちの老後資金を貢がせることができる」
義両親はまったく改心などしていませんでした。私が寝込んだのをいいことに、看病することで夫の信用を取り戻し、再び多額の援助を引き出そうと企んでいたのです。素直に感謝していた私の気持ちも、見直しかけていた夫の心も踏みにじられたようで、許せませんでした。
私は震える手でその会話をスマホで録音し、すぐに夫に連絡。事態を知り激怒した夫は、その日のうちに私を連れてビジネスホテルに避難しました。
2日後、体調が全快した私は夫と一緒に義両親を問い詰めるため義実家に向かいました。私たちを出迎えた義母は、わざとらしく眉尻を下げて、不安そうな声で話しかけてきました。
「もう体調は大丈夫なの?」
「この2日間、家にもいなかったみたいだし、本当に心配で……」
「全部聞いてましたよ?」
私がそう言って、録音データを再生すると……。
「え?」
義両親は顔面蒼白に。そして義母は「ちょっとお金に困っていて……仕方がなかったのよ。何よ、育ててやった息子に頼ったっていいじゃない」と。
夫は「もう二度と親だとは思わない」と告げ、私たちはすぐさま、行き先を告げずに引っ越し、義両親との連絡を絶ちました。
しばらくの間は、義母から「許して」「戻ってきて」「どこにいるの」などと、メッセージが届いていましたが無視し続けていると、次第に連絡は来なくなりました。
5年後、義両親の現在
それから5年後。夫の転勤で、私たちは遠方の地で新しい生活を始めていました。そんなある日、私のスマホに義母から久しぶりにメッセージが……。
「あれからパートで必死に働いてなんとか生活しているわ。心を入れ替えたから、もう一度家族として受け入れてほしいの」
夫が親戚に確認し、聞いた話によると、私たちが引っ越したあと、義両親は長年の浪費癖が抜けず、ついには借金で首が回らなくなり、親戚中にお金を無心するように。今はもう親戚中から縁を切られてしまっているそう。そのため、生活費のためにパートをかけ持ちし、義実家を手放して古いアパートで苦しい生活を送っているのだとか。
私は、遠方に引っ越したこと、そして二度と顔を合わせるつもりはないということを淡々と伝えました。「そのうち会えるわよね?」とすがる義母に「二度と関わるつもりはありません」ときっぱり告げ、連絡先をブロックしました。
現在、私たちは子宝にも恵まれ、家族3人で穏やかな日々を過ごしています。夫は未だに「自分の両親が嫌な思いをさせて申し訳ない」と気にかけてくれますが、あのような環境で育ちながらも、真っ直ぐでやさしい夫を私は心から誇りに思っています。これからも家族で支え合い、幸せな家庭を築いていこうと思います。
◇ ◇ ◇
義両親の本音を知ったときの絶望感と恐怖は計り知れませんね。過去を反省したと見せかけ、自らの利益のために身内を利用する行為は決して許されるものではありません。夫が妻を守り、妻が夫を守り、物理的にも精神的にも縁を切れたことで、きっと穏やかな今があるのでしょう。
家族であっても、信頼関係を意図的に壊すような相手とは適切な距離を置くことが重要ですね。まずは自分と大切な家族の心身の安全を守るために、ときには勇気を持って「関係を断つ」という選択もできるような自分でいたいですね。
【取材時期:2026年4月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。