付き合っていたころの夫のサプライズは、純粋にうれしいものでした。記念日にさりげなく旅行を計画してくれたり、誕生日には手紙を用意してくれていたり……そこにはちゃんと相手を思う気持ちがあったのです。
しかし結婚後、そのサプライズは少しずつ方向が変わっていきました。
冗談では済まされない一言
ある日、急に「話がある」と改まった様子で切り出してきた夫。その表情があまりにも真剣だったので、私は胸騒ぎを覚えながら向き合いました。
すると夫は、まっすぐ私を見て言ったのです。
「離婚しよう」
頭が真っ白になり、思わず「なんで?」と声を上げた私。すると次の瞬間、夫は表情を崩して笑いながら言いました。
「びっくりした? 冗談だよ」
その言葉を聞いたとき、安心よりも先に強い疲れがどっと押し寄せてきました。
私は「本当にやめてほしい」と伝えましたが、同じようなことはその後も何度も繰り返されたのです。
娘が生まれても変わらなかった夫
子どもが生まれれば、さすがに落ち着くだろう。そう期待していましたが、その願いは裏切られることになります。
娘が生まれてしばらく経ったころ、義母を自宅に招いて私の誕生日を祝ってもらった日のこと――。眠っている娘を見ながらケーキを食べ、「幸せだね」と穏やかに話していた、そのときでした。
夫がぽつりと、こう言ったのです。
「でも、本当は……俺の子じゃないんだ」
一瞬で場の空気が凍りつきました。義母は言葉を失い、私は何も反応できずに固まってしまいました。
次の瞬間、夫は笑いながら「冗談だよ」と続けましたが、私も義母も一切笑いませんでした。笑えなかったのです。
サプライズの裏にあった本音
義母はすぐに表情を厳しくして言いました。
「言っていいことと悪いことの区別くらい、つかないの?」
私も続けて、静かに、でもはっきりと夫に伝えました。
「これからもこういう嘘をつくなら、一緒にはいられない。これは立派な言葉の暴力だし、本気で離婚も考える」
そのとき、夫の顔色が変わったのを覚えています。ようやく、自分の言動がどれだけ人を傷つけていたのか理解したようでした。
「驚かせて、それで笑ってもらえるのがうれしかったんだ」
「でも、それがまさか誰かを傷つけることになるなんて思いもしなかった」
夫のその言葉を聞いたとき、私は初めて夫の行動の理由を理解しました。夫にとってサプライズは「楽しませたい」というより、「認められたい」という気持ちの表れだったのかもしれません。
「これからは、人を傷つけるような嘘はつかない」
そう約束した夫を、私はもう一度だけ信じてみることに。
それからというもの、夫のサプライズはまったく違うものになりました。気づけば洗い物が終わっていたり、朝起きると好きなパン屋のパンが用意されていたり……どれも派手ではありませんが、心からうれしいと思えるものばかりでした。
今では、私たち家族の毎日は、穏やかでやさしいサプライズに支えられています。あのときしっかり向き合ったからこそ、今の関係があるのだと思っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
私だったら、俺の子じゃないとか言われた時点で幻滅して縁切るが。