あるとき、家族旅行について義母から連絡が入りました。伊豆への旅行を計画しており、私も当然参加するつもりです。
しかし義母は「悪いけど、あなたは来ないでくれないかしら。こうして旅行できるのも残り少ないし、どうしても家族だけで行きたいの」と、私を除け者にしようとしました。
“家族”とは、義両親と夫、子どもたちのこと。子どもたちがまだ手がかかると伝えても、みんなでお世話をするからと言って、主張を曲げません。
私は驚きと戸惑いを抑えながら「わかりました」と答えるしかありませんでした。
嫁には食べさせない!
私だけ留守番だった旅行から1カ月後、義母からクール便が届きました。中身はイクラが詰まった箱。電話でお礼を伝えると、開口一番「息子と孫のために食べさせてあげて。あなたの分はないから」と念を押されました。
私が言葉に詰まっていると「よそ者のあなたにあげる義理はない」と義母は続けます。10年連れ添った夫の母からこんな言葉をかけられるとは思ってもみませんでした。
少し勇気を出して「いつまでも他人扱いは寂しいです」と伝えると、義母は「嫁というのはそういうもの」「あなたがよそ者ということはこれからも変わらない」と言い切りました。
義母の中での私の位置づけが、この先も変わらないことを悟ったのはこのときでした。
義父が要介護に
義父の介護が必要になったと夫から聞かされたのは、それから1カ月後のことでした。家族の一大事だと思い、すぐに義母へ電話を入れて手伝いを申し出ましたが、「家族のことに踏み込まないで」と冷たく一蹴されてしまったのです。
助け合おうと言っても「あなたは関係ない」「他人が来ても意味がない」と繰り返されます。
手伝いを申し出るたびに拒まれ、ただ謝り続けるばかりのやりとりが続いた末、義母の口からとんでもない言葉が飛び出しました。「お父さんが動けなくなるくらいなら、元気なだけのあなたが代わりになれば良かったのに」という、あまりに冷酷なひと言でした。
電話を切ったあとも、しばらく動けませんでした。もう、この関係に何かを期待するのはやめようと、そのとき決めたのです。
介護をするのは誰?
それから2カ月後、義母から「今後の介護について決めたから」という連絡が届きました。この前は私を排除したくせに、なぜ今更……という気持ちでLINEを開くと「これから毎日、お父さんの介護をしてちょうだい。私は家事を担当するから。私ひとりでは大変だし、一緒に暮らしましょう。家族で助け合いましょう」という一方的な通告。
思った以上に介護が大変なことがわかったのでしょう。見事なまでの手のひら返しにスマホを持つ手が震えました。しかし次の瞬間には、驚くほど冷静な自分がいたのです。
「同居も、介護も、私はしません。私、もう“家族”と同居してますから!」そう告げて、夫の了解を得て、すでに引っ越しを済ませたことを淡々と伝えました。引っ越し先は、私の両親の二世帯住宅です。
義母はしばらく言葉を失い、「そんな大事なこと、聞いていないわよ!」「あなたの両親と同居なんて許せない」と動揺していました。
この計画は、義父が倒れる前から夫と進めていたものです。何度も「よそ者」と言われ、介護も拒絶されたことで、夫が「無理に報告して揉めるより、事後報告でいい」と判断した結果でした。
10年越しの謝罪
義母は声を荒らげ、「嫁なんだから協力するのが当たり前でしょ!」と理不尽な要求を繰り返しました。しかし私は落ち着いて言葉を返しました。
歩み寄ろうとするたびに拒まれてきたこと、10年間ずっと他人と言い続けられてきたこと、その積み重ねを一つひとつ整理するように伝えたのです。
しばらくすると、観念したのか義母の声のトーンが変わり、「今まで酷い態度をとってきたのは認めるわよ」と、しぶしぶ口にしました。しかし私の決意は揺らぎません。
「同居はしません。あなたとはもう関わりません」と伝えて、電話を終えました。
義両親のその後
結局、義母はひとりで義父の介護をしているようで、毎日大変な思いをしているそうです。夫は義両親の各種手続きには協力することになりましたが、私は一切関わらないことにしました。
義両親が私の実家との同居を責めようとした際には、夫が毅然と「これ以上しつこくするなら関わりを持たない」と告げてくれました。私の両親との二世帯同居は穏やかで、玄関が別々なのでお互いに干渉もありません。
夫もストレスなく暮らしているようで、子どもたちは話し相手が増えたことを喜んで楽しそうにしています。
◇ ◇ ◇
介護は、精神的にも肉体的にも大きな負担を伴うものです。そんな過酷な日々を支える原動力となるのは「支えたい気持ち」に他ならないのではないでしょうか。
困ったときだけ「家族」を盾にするのではなく、日頃から温かな関係を築いておくことの大切さが身に沁みますね。
【取材時期:2026年3月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。※AI生成画像を使用しています