職場の隅で「無能」と蔑まれる彼女
本社に戻った僕のデスクの隣には、派手な金髪にネイル、メイクをした、いわゆる「ギャル」な女性社員が座っていました。
彼女はいつも気だるそうにパソコンを眺めており、周囲の同僚たちは彼女を「中卒のコネ入社」「無能」と呼び、露骨にヒソヒソ話をしています。
同僚の男性は僕に対し、「お疲れ様です。5年ぶりに戻ってきて、隣がアレじゃ災難ですねw」とニヤニヤしながら話しかけてきました。
別の女性同僚も「彼女コネ入社らしくて、本当に使えないんですよ。教えたやり方を無視して勝手なことをするし、注意してもサボってばかりで。関わらないほうがいいですよ」と追い打ちをかけます。
彼女はそんな言葉が聞こえているはずなのに、無表情のまま「……どうせ中卒だし」と自嘲気味に呟き、周囲を拒絶するようにイヤホンを耳に突っ込んでいました。
「俺のチームで働きませんか?」
しかし、僕は彼女の働き方を観察するうちに、周囲の評価が完全な誤解であることに気づきました。
彼女は、他の社員が半日かけて手作業で行う集計を、独学の関数を駆使してわずか1時間で終わらせていたのです。
あまりに早く仕事が終わってしまうため、余った時間を持て余していただけなのですが、それを見た周囲は「サボっている」と激怒。
さらに、彼女が善意で提案した効率的な手法も、古いやり方に固執するベテラン勢からは「和を乱す勝手な行動」と見なされ、結果として「仕事ができないお荷物」のレッテルを貼られていたのでした。
僕は彼女に声をかけました。
「君の組んでいる数式、すごく合理的だね。これならミスも起きないし、素晴らしい効率化だよ」
彼女は驚いた顔で僕を見上げました。初めて自分の「仕事の質」を正当に評価されたという戸惑いが見て取れました。僕は続けて、今僕が密かに進めている新規プロジェクトの資料を見せました。
「今度、僕がリーダーを任されることになった新しいチームで、一緒に働きませんか? 君のその処理能力と、型にハマらない視点が必要なんだ」
彼女は目を丸くし、「……え、私でいいの!?」と声を震わせました。
僕は笑って「もちろん、データの分析作業を正確に効率的にしてくれるメンバーが必要なんだ。ぜひ君にお願いしたい」と答えました。
彼女の目には、これまで見たこともないような情熱の火が灯ったように見えました。
逆転劇と、見返した同僚たち
新プロジェクトでの彼女の活躍は目覚ましいものでした。彼女が作成した自動分析ツールは、今まで手作業で行っていた業務を劇的にスピードアップさせました。さらに、彼女独自の「流行を捉えるセンス」が商品企画に活かされ、プロジェクトは大成功を収めました。
かつて彼女を「お荷物」と笑っていた同僚たちは、手のひらを返したように驚愕。役員会議で彼女が堂々とデータの根拠を説明し、プレゼンを行う姿を見て、言葉を失っていました。
「あのお荷物ギャルが、あんなに仕事ができるなんて……」
悔しそうに漏らす同僚を尻目に、彼女はすっかり自信に満ちた表情でバリバリと仕事をこなしています。
現在、彼女は僕の最も信頼できる右腕として活躍しています。
「誰からも期待されていない」と自分を諦めていた彼女はもういません。相変わらず派手な金髪とギャルネイルは、今では社内でも彼女の魅力的な個性として定着し、誰よりも頼もしくハードな仕事をこなしています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。