最初は穏やかだった義母が変わり始めたのは、義母の妹に初孫が生まれてからでした。
「妹のところは、もうおばあちゃんになったのよ」
そう言っては、ため息をつくようになっていったのです。
まだ見ぬ孫への執着
最初は軽い愚痴だと思っていたのですが、次第にその言葉は私への圧力へ変わっていきました。
「若いうちに産まないと大変よ」
「早く孫の顔を見せてちょうだい」
耳にタコができそうなくらい、繰り返し義母から言われた言葉たち。やがて義母は、生活にも干渉してくるようになりました。
ある日のこと。帰宅すると大量のサプリメントがテーブルに並べられていました。
「妊活に良いって聞いたから買っておいたの」
「全部ちゃんと飲んでね」
それから義母は、私がサプリメントをすべて飲み終わるまで監視するようになったのです。
さらに、「体を冷やす服はダメ」「甘い物は控えなさい」「外食ばかりしてるから妊娠できないのよ」と、食事や服装にまで口を出されるように。私は次第に閉塞感を抱くようになっていきました。
義母の肩を持つ夫
義母は「妊活中なんだから体を動かしたほうがいい」と言って、家事をすべて私に押しつけてきました。
仕事から帰宅しても、食事の準備、掃除、洗濯は当然のように私任せ。体調が悪くても休ませてもらえませんでした。
私は夫に、義母から毎日のように子どものことで責められてつらいこと、家政婦のように扱われていることを伝えました。しかし、返ってきたのは冷たい言葉だけ。
「母さんも悪気があるわけじゃない」
「それくらい我慢しろよ、母さんを怒らせるお前が悪いんだから」
さらに夫は、「俺は人より稼いでるんだから、お前は結婚できただけありがたいと思え」とまで言ってきたのです。
そして夫も、義母と同じく不妊の原因は私にあると考えていました。
「俺は昔検査したことあるし、問題ない」
「お前が原因に決まってる」
私が一緒に検査を受けに行こうと何度言っても、夫は拒み続けました。
このままでは心が壊れてしまう。追い詰められ、離婚を考えるようになった私は、親友の兄に連絡を取りました。親友の兄は弁護士です。
「まずは証拠を残したほうがいい、録音をしておくといいよ」
親友の兄からの冷静なアドバイスを受け、私は義母や夫との会話を記録するように。さらに、スマホに送られてきた暴言もすべて保存しました。
それまでは二度と見たくないと思って即座に消していたのですが……保存するたびに、だんだんと夫への愛情も消え失せていくようでした。
望まぬ2択を突きつけられ…
ある日の夜、帰宅すると夫と義母がそろって座っていました。そして義母が突然こう言ってきたのです。
「不妊治療をするか、養子を迎えるか、どっちにするの?」
あまりに一方的な言い方に、私は言葉を失いました。
「家の空気が良くなるなら、養子でもいいんじゃないか」と夫。
「どちらでも、妹に自慢できるでしょ」と義母。
その瞬間、この人たちは“子ども”を一人の人間として考えていないのだと感じました。
私はため息をつき、かばんから1枚の紙を取り出して、義母と夫の前へ。そこには、私の婦人科での検査結果が記されていました。
「先日、婦人科で検査を受けてきました。特に異常は見つかりませんでした」
しかし義母はすぐに「うちの息子が原因なわけないじゃない!」「絶対にあなたの問題よ!」と言ってきたのです。夫は黙ったままでした。
ああ、もう限界だ。そう思った私は深呼吸をして、はっきり言いました。
「私は、協力する気もない人と不妊治療を受けるつもりはありません」
「それに、この家で子どもを育てたいとも思えない」
「離婚します」
突然の離婚宣言に、義母は激怒。
「嫁のくせに何様なの!」
「今まで世話してやったのに!」
夫も、「離婚したところで、行くあてないだろ」と吐き捨てました。
ようやく取り戻した穏やかな暮らし
私はそれ以上何も言わず、最低限の荷物を持って家を出ました。そして向かったのは、親友の兄が在籍する弁護士事務所。
事務所に着いた私は、録音内容やこれまでの証拠を提示しながら、親友の兄にすべてを話しました。自分でも驚くほど冷静でした。
コツコツと残していた証拠が決め手となり、離婚は比較的スムーズに成立。
その後、人づてに聞いた話では、元夫は何度も婚活をしていたそうです。しかし、義母がすぐに子どもの話や養子の条件を口出しし、交際が長続きしなかったのだとか。なお、元夫に不妊の原因があったのかどうかは、未だにわかりません。
一方の私は、離婚後もしばらく親友の兄に相談に乗ってもらう関係が続き、自然と交際に発展、やがて結婚しました。
あのころの私の価値は、「子どもを産めるかどうか」で決められていたように思います。じわじわと真綿で首を絞められるように、追い詰められていました。
しかし、本当に大切なのは、困ったときに支え合える関係かどうかだったのだと、今ならはっきりわかります。
今は、再婚相手となった夫と穏やかな家庭を築き、子どもにも恵まれました。これからもこの平穏な日々が続くように、夫と二人三脚で頑張っていこうと思います。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。