転機になったのは、幼稚園最後の運動会の件でした。休みを取ってほしいと伝えると、夫は繁忙期だから無理だ、とあっさり言ってのけました。
それ以上に私の胸を刺したのは、娘が持ってきた絵でした。家族の絵を描いたよと嬉しそうに見せてくれた紙には、私と娘と飼い猫たちだけが描かれていて、夫の姿はどこにもなかったのです。
娘はこう言いました。「なんでうちはパパが家にいないの? お友だちはよくパパと公園や遊園地に行くのに」その問いに、私はうまく答えられませんでした。気付けば娘の日常の中に、夫の居場所はほとんど残っていないようでした。
2年ぶりのお出かけ
よくよく考えると、夫と娘は2年近く一緒に出かけていません。娘の言葉を夫に伝えると、夫は珍しく神妙な顔になりました。
私はそこでひとつ約束を取りつけました。月末の日曜日、3人で動物園へ行こう、という計画です。念を押す私に夫は同意し、娘は目を輝かせて喜びました。
ところが前日の夜23時を過ぎても夫は帰宅せず、連絡を入れると仕事でトラブルがあったと言います。翌日の出発を少し遅らせるかもしれないと言いながらも、動物園には必ず行くと繰り返しました。
不安を覚えながらも、娘のために信じることにしたのでした。
娘が行方不明に……
翌日、夫が帰宅したのは明け方のこと。私たちは約束通り動物園を訪れました。ところが午後になって、娘の姿が見当たらなくなりました。
夫と手分けして園内を探し続けましたが、どこにも見つかりません。迷子センターへ問い合わせても、連絡は来ていないとのことでした。
1時間が過ぎたころ、私の焦りは限界に達します。「1時間も探してるのに見つからないなんて……」と焦る私に対し、夫は妙に落ち着いた様子で「どこかにいるはずだ」と繰り返すばかり。
私が「警察に通報する」と告げると、夫は大ごとにするなと激しく反対しました。その不自然な落ち着きには違和感しかありません。
「なぜそこまで反対するの」と問い詰め続けると、夫はついに口を開きました。
娘は1人ではなく、ある女性と一緒にいると言うのです。相手が誰なのかを聞くと、夫はしばらく黙り込み、「不倫してました。ごめんなさい」と絞り出すように言いました。
不倫相手は今日のデートをキャンセルされたことに激怒したよう。不倫相手をなだめていて、昨夜は帰りが遅くなったと話します。しかし、不倫相手は納得がいかず、こっそりついてきたそう……。
私が夫と娘と離れてトイレに並んでいた隙にこっそり合流したのだと夫は言います。しかしタイミング悪く娘もトイレに行きたいと言い出したので、不倫相手に任せ、そのままはぐれたのだとか。
夫は何度も連絡したそうですが、返信はないそうです。
不倫、家族のお出かけに同行、娘に合わせたことと2人きりにさせたこと……信じられないことの連続で、私は立ちくらみがしました。
娘の捜索
夫は抵抗しましたが、娘の姿が見つからない以上、警察に通報するしかありません。通報を受けた警察は迅速に動いてくれました。
私は待機の指示を受け、動悸を落ち着けながらひたすら連絡を待つのみ……。娘に何もないように、ただそれだけを祈るしかありませんでした。
警察からの連絡が入ったのは、通報からほどなくしてのことでした。娘を保護したという知らせを受け、全身の力が抜けそうになりました。迎えに行くと、娘は私の顔を見るなり泣きながら飛びついてきました。怪我はなく、大きなショックも受けていないとのことで、心から安堵しました。
不倫相手は保護に向かった警察官に「一緒に遊んでいただけだ」と騒いで抵抗したものの、そのまま警察署へ同行を求められ、事情聴取を受けたそうです。
娘を抱きしめながら、私は夫に言いました。「あなたと離婚したい。これ以上、私たちを巻き込まないでほしい」と。夫は家族が大切だったと涙声で言いましたが、私の気持ちは揺らぎませんでした。
夫からの連絡を無視して娘を連れ回すような不倫相手です。再び娘に危険が及ぶかもしれないと思うと、恐ろしくてこれ以上夫のそばにいることはできませんでした。
夫の末路
その後、私は弁護士を立てて離婚の手続きを進めました。両家の親も孫の安全を優先するということで理解を示してくれました。私は娘を連れて引越しをし、夫とは距離を置いた新しい生活をスタートさせています。
元夫は不倫相手と別れたようですが、納得のいかない不倫相手に付きまとわれているのだとか。「妻と別れたら結婚しよう」などと言っていたようなので、自業自得でしょう。
元夫からは泣き言のような連絡が時折届きますが、私は返信しないと決めています。
◇ ◇ ◇
元夫は自分の不倫を隠したいばかりに、迷子になった娘の捜索を遅らせかねない行動をとりました。保身に走る人間は、時に家族の命や安全すら後回しにしてしまうという恐ろしい現実……。
相手が「大ごとにするな」と抵抗しても、子どもの命と安全には代えられません。緊急事態には当事者だけで解決しようとせず、ちゅう躇なく警察などの公的機関を頼りましょう。子どもの安全確保が常に最優先なのです。
【取材時期:2026年4月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。