娘を連れて懇親会へ
その日、わが社主催の懇親会が開かれました。子連れ参加も認められている会で、どうしても預け先の都合がつかなかったため、僕は娘のB美と一緒に参加していました。
「パパの会社の人、たくさんいるね!」「うん。今日は大事な集まりだからね」と話していると、営業部長が近づいてきました。すると営業部長は、周囲に聞こえないくらいの小声でこう言ったのです。
「多くの取引先と話して人脈を広げる必要があるのに、子どもを連れてくるなんて……邪魔だろう。子どもは奥さんに任せてくればよかったのに」
僕は「事情があって連れてきました」と答えたのですが、営業部長は「男は仕事に集中するものだろ」と聞く耳を持ちません。
さらに営業部長は、手にしていたコップを大きく揺らしながら、僕たちの横を通り過ぎようとしました。すると次の瞬間、コップに入っていたお茶がこちらに飛んできて……。「危ない!」と僕はとっさにB美をかばったのですが、スーツがびしょぬれになってしまいました。
「パパ、大丈夫?」と聞かれたので「大丈夫だよ」と笑って答えると、営業部長は鼻を鳴らして「悪い悪い。大げさにかばうから余計に濡れちゃったなぁ」と軽く言うだけ。その態度に、僕はB美まで軽んじられたような悔しさを覚えました。
社長が現れて一喝!
そこへ現れたのが妻のA子でした。「夫と娘になんてことを……」と言うA子に、営業部長は仰天。
「え!? しゃ、社長?」
A子は笑顔を浮かべたまま、「この懇親会は子連れでの参加も認めています。家庭の事情と向き合いながら働く人を否定するようなことは、当社の考え方とは異なります」と指摘しました。
実は、社長であるA子は僕の妻です。公私混同と受け取られないよう、社内では必要最小限の人にしか結婚していることを伝えていませんでした。そのため、営業部長は僕たちの関係を知らなかったのです。
さらに、その場にいた取引先の代表も、「教育に関わる会社として先ほどの対応は残念です」と苦言を呈し、「これまで担当してくださっていたのは営業部長でしたね。今後の担当については、あらためて相談させてください。できれば、現場や家庭の事情にも寄り添える方にお願いしたいです」と、僕のほうを見たのです。
僕は「ありがとうございます。社内確認のうえ、対応します」と答え、A子も「担当については改めて調整いたします」と冷静に続けました。営業部長は「そんなつもりでは……」と動揺するばかりでした。
代表と営業部長が去ったあと、A子はB美を抱きしめ、「怖かったね。でも大丈夫。一緒にいていいんだよ」とやさしく声をかけました。その姿を見て、僕はようやくほっとしました。
僕の大切なもの
その後、僕はお客様一人ひとりの事情に寄り添う姿勢を大切にしながら、取引先を一件一件訪ね、丁寧な対応を心がけました。一方で、営業部長は「契約さえ取れたらいいだろう」と不十分な対応を続け、やがてほかのお客様からも相談やクレームが届くように。
A子は営業部長に、「契約を取ることだけが営業の仕事ではありません。お客様の不安や事情にきちんと向き合うことが大切です」と指導しました。しかし営業部長は納得せず、これまでの営業方針を変えるつもりはないと反発。その後、本人の意向を踏まえた話し合いの末、退職することになりました。今どうしているのかはわかりません。
僕は、経営者として冷静に向き合う姿だけでなく、母として娘を守る姿も尊敬できるA子に、あらためて惚れ直しました。A子も、「あなたが丁寧に向き合ってくれるから、お客様も安心してくださっているんだと思う。仕事でも家庭でも、いつも支えてくれてありがとう」と笑顔を見せてくれました。
これからも家族の幸せを第一に考えながら、夫婦で公私ともに支え合って歩んでいきたいと思います。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※AI生成画像を使用しています。
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