父子家庭育ちの私を見下す係長
私が配属された部署の係長は、部下への当たりが強いことで知られていました。
「新人なんだから、言われる前に動けよ」「気が利かないなぁ」――係長からそんな嫌味を浴びせられる毎日でした。
最初は「私が仕事に慣れていないから仕方ない」と思っていました。ですが次第に、ほかの新人には言わないようなことまで、私にだけぶつけてくるようになってきたのです。
ある日、複数の仕事を抱えていた私は、係長から追加の雑務を頼まれました。
「すみません。先に頼まれている資料を終わらせてもいいでしょうか」
そう伝えた瞬間、係長はあからさまに不機嫌な顔をして、「ほんと要領悪いよな。母親がいないと、そうなるのか?」と言い放ったのです。突然の言葉に、私は一瞬、何も言えなくなりました。
たしかに私は父子家庭で育ちました。しかし父は、朝早くから働き、家事もこなしながら、ずっと私を育ててくれたのです。だからこそ、その言葉は悔しくてたまりませんでした。
それでも新人の私は、「ここで反論したら職場の空気を悪くしてしまうかもしれない」と思い、必死に飲み込みました。
係長の言動はさらにエスカレート!
その後も係長の態度は変わりませんでした。会議中に私の発言だけを遮ったり、わざと聞こえるように嫌味を言ったり……。
ある日には、私の机に書類を乱暴に置いた拍子に、近くのコーヒーが倒れ、書類が汚れてしまったこともありました。それなのに係長は謝るどころか、「片づけといて」と言い残し、そのまま去っていったのです。
さすがに限界を感じ始めていたころ、同じ部署の先輩が声をかけてくれました。
「係長、最近ちょっとひどいよね……。実は前から、人事にも相談が入ってるみたい」
聞けば、係長は以前から新人への高圧的な態度を問題視されていたそうです。
「一人で抱え込まなくていいから。ちゃんと周りを頼ってね」という先輩の言葉に、私は少しだけ救われた気持ちになりました。
新人歓迎会で…
数日後、新入社員歓迎会が開かれました。お酒が入った係長は、いつも以上に高圧的で……。
「新人なんだから、もっと気をつかえよ!」「これだから父子家庭育ちは困るんだよなぁ」――周囲が気まずそうに黙り込む中、係長は私に無理やりお酒を注がせようとしてきました。
そのときです。離れた席に座っていた社長がこちらへ歩いてきて、こう言ったのです。
「家庭環境を理由に人を見下すのが、君の教育か?」
どうやら、係長の発言は社長の耳にも届いていたようでした。静かな声でしたが、その場の空気が一気に凍りついたのを覚えています。
形勢逆転の一声!
係長は慌てたように言いました。
「ですが社長、この新人、父子家庭だからちょっと常識がなくて……」
すると社長は、小さくため息をつき「父子家庭で悪かったな」とひと言。その言葉に、係長だけでなく、その場にいた社員たちも驚いたように顔を上げました。
社長は静かな口調のまま、こう続けました。
「私も今、娘を一人で育てている。家庭環境だけで人を判断するような言い方は、聞いていて気分のいいものじゃないな」
店内の空気が一気に静まり返りました。さらに社長は、係長へまっすぐ視線を向けて言いました。
「厳しく指導することと、相手を傷つけることは違う。最近の君については、人事からも相談が入っているよ」
係長は「そんなつもりじゃ……教育のつもりで……」としどろもどろになっていましたが、周囲の社員たちも気まずそうに視線をそらしていました。
家庭環境は人それぞれ
後日、係長は人事面談を受け、その後しばらくして自主的に退職したと聞きました。
係長がいなくなってから、部署の雰囲気は大きく変わりました。
家庭環境は人それぞれで、それだけで人の価値が決まるわけではありません。父が一生懸命育ててくれたことを、私は今でも誇りに思っています。そして、理不尽なことを我慢し続けるのではなく、信頼できる人に助けを求めることの大切さを学んだ出来事でした。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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