せめて手指の見た目だけでもきれいにしたい…
40代の私が、シェーグレン症候群と診断されたのは数年前。シェーグレン症候群とは、自分の免疫が誤って涙腺や唾液腺を攻撃し、慢性的なドライアイやドライマウスを起こす自己免疫疾患のことです。
極度の血流障害や、ドライスキンもあり、季節を問わず手指が荒れたり変色したりするのが大きな悩みになっています。さらに2年ほど前からは、しびれやこわばりなどの症状も。爪の両端に穴が開くように傷ができる、指の表面の皮がぽつぽつと丸く剥がれるなど、手洗いのがおっくうになるほど痛みがひどいこともあります。
総合病院の皮膚科で、血流をよくする薬やステロイド剤を処方されるも、少し治ってはまたぶり返すばかり……。手指の見た目が悪いことがどうしても気になる私は、せめて皮膚の表面だけは、少しでもきれいにしたいという思いが強まるばかりでした。
そんなある日、知人から「最近できた、駅前の皮膚クリニックが評判いいよ」との情報が。私は皮膚表面の改善に期待を寄せ、すがる思いで行ってみることにしたのです。
「病院変えたのに意味ない…」診療方針に落胆
総合病院との重複受診で拒否されるのを恐れましたが、クリニックで持病のことや手指の現状を話すと、理解して診療を引き受けてくれました。
医師は私の手を見ると、こう言います。
「手指が荒れている原因は菌などではないようです。あなたの場合、シェーグレン症候群という持病によって、ひどい皮膚の炎症(手荒れ)が起きている。だから、非ステロイドの治療薬を使って、焦らずゆっくり治していきましょう」
私は、「え、非ステロイド?」「ゆっくり治す?」と内心驚きました。病院を変えてみれば少しは早く治るかも! と期待をしていたため、ゆっくり治すという治療方針に疑問を覚えたのです。
しかし医師は、「非ステロイド剤を使い、ゆっくりだけど確実に治していくほうが、皮膚への負担も小さいでしょう」と説明します。私は、ちょっと落胆しました。「病院を変えても、意味がなかったかな。失敗したかも」と思いつつも、この期に及んで拒否できず、診療の方針に同意。看護師からクリームの使い方・塗り方の細かい指導を受け、帰宅しました。
涙が出そうになる痛さ…根気よくクリームを塗布
クリームを塗るだけで大丈夫?との不安を感じながら、医師の指示通り、指の1本1本に丁寧に塗り込みます。穴が開くようになっている爪の両端の傷には、細かくその隙間にまで塗るようにしますが、傷にしみて、痛くて痛くて涙が出そうになることも。
でも絶対にばんそうこうを貼ったらダメ!とも言われていたので、我慢するしかありません。
「これで本当に治るの?」
……私の不安は募るばかりでした。
1週間たっても変化なし。10日続けても変わらず。「やっぱり、ダメかも」と思い始め、2週間を過ぎたころ、「えっ?」と私は目を見張りました。手指の症状が明らかに治ってきたのです。皮膚の剥がれも目立たなくなっています。
けれど油断は禁物。私は、もう少しもう少しと、根気よくその後数週間ほどクリーム治療を続けました。
そして1カ月がたち、再受診の日。医師は「うん、大丈夫。回復してきていますよ。ぶり返しもないでしょう」と告げます。私はうれしさでいっぱいになりました。そして、痛みにたえた治療が報われたという気持ちと同時に、ゆっくり治すという医師に一時は疑問を持ち、病院選びを失敗したとまで思ってしまった自分を恥じたのです。
まとめ
皮膚治療は、現在も続けています。塗り薬は2種類を使い分け、症状の波はありながらも普通に生活ができるようになりました。完治とはいきませんが、ひどくぶり返すこともありません。手指の見た目も少しよくなったと感じ、普段は手袋を外せることも多くなりました。
「急がば回れ」で、即効性だけを求めず、自分の体と対話しながら根気よく取り組んだことを、今はよかったと思っています。決してステロイド剤が悪いとは言いません。ただ、自分に合う治療法があるのなら、焦らずゆっくりでも、諦めずに治療に取り組むことが大切なのだと、身にしみて感じています。
医師による解説:持病と向き合い、健やかな肌を守る心得
シェーグレン症候群は乾燥症状だけでなく、皮膚や血管にも影響を及ぼすことがあります。全身を診る視点から、持病に伴う皮膚トラブルの正体と治療の考え方を解説します。
全身の病気として捉える、皮膚症状の正体
シェーグレン症候群は「乾燥の病気」と思われがちですが、自己免疫の乱れにより血管炎や血流障害を伴うことがあります。手指の変色や痛み、皮膚の剥離(はくり)は、全身の免疫バランスが肌に現れたサインです。局所的なケアだけでなく、持病全体の管理と併せて皮膚の状態を観察することが重要です。
「ゆっくり治す」選択肢が、肌の再生を助ける
ステロイドは炎症を抑える即効性がありますが、長期使用による皮膚の菲薄化(ひはくか:薄くなること)が懸念される場合もあります。非ステロイド剤で時間をかけて皮膚のバリアー機能を高めるアプローチは、再発を繰り返す慢性的な症状において、負担を抑えながら健やかな肌を保つための有効な戦略と言えます。
不安を解消する、医師とのコミュニケーション
治療方針に疑問を感じた際は、遠慮なく質問してください。シェーグレン症候群のように全身が関係する病気の場合、治療の「ゴール」をどこに置くかが重要です。「早く治したい」という希望と「確実に維持したい」という医学的判断をすり合わせ、正しい塗り方などのセルフケアを継続することが、症状をコントロールする一番の近道となります。
※記事の内容は公開当時の情報であり、現在と異なる場合があります。記事の内容は個人の感想です。
※本記事の内容は、必ずしもすべての状況にあてはまるとは限りません。必要に応じて医師や専門家に相談するなど、ご自身の責任と判断によって適切なご対応をお願いいたします。
監修:菊池大和先生(医療法人ONE きくち総合診療クリニック 理事長・院長)
著者:琥珀乃 たびと/40代独身女性。契約社員として働く。高齢の両親と3人暮らし。珈琲とパン、甘いものが好きな食いしん坊。
イラスト:sawawa
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2026年4月)
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