ある日、私が仕事を終えて帰宅すると、夫が慌ただしく出かける準備をしていました。「急に欠勤が出たから、代わりに遅い時間のシフトに入ることになった」と言うのです。
その日は私たちの結婚記念日だったため、一緒にお祝いをしようと約束していたはずでした。しかし夫は「みんな困っているし、こういうときはお互い様だから」と足早に家を出ていってしまったのです。
私は仕方がないと思いつつも、夫の勤務時間が不自然に長いことや、シフトが頻繁に変わることに、少しずつ得体の知れない違和感を覚え始めていました。
楽しみにしていたお菓子
実はその日の帰り道、私は夫を驚かせようと、彼が前からずっと食べたがっていた有名な焼き菓子を買って帰っていました。それは賞味期限が極めて短く、明日になれば味が落ちてしまうもの。
夫の帰りが遅くなるなら、一緒に食べるのは難しいでしょう。私は少し考え、激務で疲れているという夫の職場の人たちのために、それを差し入れとして持って行くことにしました。
夫からは「職場のスタッフ同士でよく差し入れをし合っている」と聞いていたので、きっとみんなに喜んでもらえるだろうと考えたのです。
夫の嘘
しかし、職場を訪ねた私を待っていたのは、信じられない事実でした。なんと夫は出勤していなかったのです。店長に事情を尋ねると、彼は困惑顔で「人手不足など起きていないし、今日の欠勤者も誰もいません」と答えました。
さらに、そこに出勤してきた学生アルバイトの言葉が、私を完全に打ちのめしました。つい先ほど駅前の繁華街で、夫がある女性とホテルに入っていくのをはっきりと目撃したと、彼が店長に報告するのを聞いてしまったのです。
ある女性とは、夫が普段から「仕事ができる尊敬できる人だ」とたびたび口にしていた、職場のパートリーダーでした。
不倫していた日々
私はすぐさま店長に頼み込み、夫の最近の出勤状況について尋ねました。店長は渋りながらも事情を察し、夫がパートリーダーと同じ日に病欠や忌引きを使い、不自然な休みを繰り返していることだけ、こっそり教えてくれました。
出勤前に念入りに身だしなみを整えていたのも、すべて不倫相手と会うためだったのです。怒りと悲しみで手が震えましたが、私は感情に流されず冷静に対処しなければと自分に言い聞かせました。
私はその足で不倫相手の自宅へと向かい、在宅していた彼女の夫にすべてを打ち明けました。以前、夫の車で送迎した際、「うちのパートリーダー、ここに住んでいるんだ」と場所を教えられていたのを覚えていたのです。
驚く相手に対し、私は店で聞いた不審な欠勤記録や目撃情報を伝え、この事態にどう落とし前をつけさせるか、具体的な話し合いを進めました。
身勝手な言い訳
その夜、何度も着信を残した私に、夫は「仕事中だから!」とメッセージで返信し、通話を拒否しました。
そこで私は、調べ上げたすべての事実を突きつけました。「ホテルにいるのはわかっている。店長から不自然な欠勤のことも聞いたし、彼女の夫とも話し合った」と送信すると、慌てて電話をかけてきた夫はひどくうろたえ、取り繕うように言い訳を始めました。
「ごめん、本当に魔が差しただけなんだ。彼女とはもう会わないから、離婚だけはしないでほしい」
たくさんの嘘をついて裏切っていた夫の身勝手な懇願に、私の心は完全に冷え切っていました。
「もう許すことはできません。離婚してください」私はきっぱりと線を引きました。嘘で塗り固められた夫との結婚生活をこれ以上続ける意味は感じられなかったのです。
それぞれのその後
後日、嘘の欠勤を繰り返していた夫と不倫相手は店長から厳しい注意を受けたよう。不倫相手はパートリーダーから外され、居づらくなった夫は自主退職しました。
私は宣言通りに夫との離婚協議を進め、慰謝料をしっかりと受け取って家を引き払いました。不倫相手の家庭がその後どうなったか、詳しいことはあえて聞かないようにしています。
信じていた相手の裏切りは深く傷つくものですが、私は今、嘘やごまかしのない穏やかな毎日を取り戻し、心機一転、前を向いて自分のための生活を歩み始めています。
◇ ◇ ◇
新しい職場への転職を信じて応援してくれた妻に対し、そのやさしさを裏切りの隠れ蓑として利用する行為は、パートナーを深く傷つけるだけでなく、結果として自分自身の信用や家族を失う原因になるでしょう。
一度失った信頼が戻ることはありません。嘘の代償は、最終的にすべて自分自身へと返ってくるのだと改めて感じさせる体験談でした。
【取材時期:2026年4月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。