娘の1人暮らしを応援して
私は妻から、娘のA子が大学進学を機に1人暮らしを希望していると聞きました。大学は自宅から通うことも可能でしたが、私はあえて賛成しました。家事やお金の管理を自分で経験することは、A子にとって大切な学びになると思ったからです。
一方で妻は、「実家から通えばいいのに」と最後まで乗り気ではありませんでした。それでも話し合いの末、家賃や生活費を含め、毎月10万円を仕送りすることになったのです。
仕送りには、娘が幼いころから私が毎月積み立ててきた、A子名義の貯蓄用口座のお金を使うことにしました。そして私は、その口座の管理を妻に任せ、毎月A子が使う生活費用の口座へ振り込んでもらうことにしました。
私は、「ついにこのお金をA子のために使うときが来たのか」と、少し感慨深い気持ちになったのを覚えています。
「大学生活を楽しみながら、少しずつ社会経験も積んでほしい」
そんな思いで、私はA子を送り出したのです。
娘から届いたSOS
それから数カ月後。以前はこまめに連絡をくれていたA子からの返信が減り、私は少し気になっていました。妻は、「大学もバイトも忙しいんでしょ」と気にしていない様子でしたが、私はどこか違和感を覚えていたのです。
そんなある日、A子から突然メッセージが届きました。
「パパ、助けて」
「もう3日もまともに食べてないの……」
私は驚き、すぐに電話をかけました。「どういうことだ? 毎月10万円じゃ足りないか?」と聞くと、A子は困惑したようにこう言ったのです。
「え……? 私、毎月2万円しか受け取ってないよ」
私は耳を疑いました。A子によると、生活費が足りず、アルバイトを増やしながら何とか生活していたというのです。しかし学業との両立は厳しく、食費を切り詰めながら生活していたのです。
私はすぐにA子へ、「一度家に戻ってきなさい」と伝え、状況を確認することにしました。
妻が隠していたこと
久しぶりに帰宅したA子と一緒に、私は仕送り用口座の入出金履歴を確認しました。すると、A子に渡っていたのは、彼女の言う通り、毎月わずか2万円だけだったのです。
さらに通帳を見ると、残りのお金が数万円単位で何度も引き出されていました。口座の管理を任せていた妻を問いただすと、最初はごまかしていましたが、最終的には、自分の美容代や買い物に使っていたことを認めたのです。
さらにA子は、仕送りが足りなくて妻に相談したところ「大学生なんだから、自分でやりくりしなさい。お父さんには心配かけちゃだめよ」と言われていたことを打ち明けてくれました。しかし耐えきれなくなった娘は、私に連絡してきたのでした。私は、娘がずっとひとりで耐えていたのだと思うと、胸が締め付けられる思いでした。
私は妻に、「どうしてそんなことをしたんだ」と問いかけました。
「そのくらいで大げさじゃない?」
「大学生なんだから、少しくらい苦労したほうがいいと思った」
開き直るようなその言葉を聞いた瞬間、私は言葉を失いました。娘の将来のために積み立ててきたお金を、自分のために使っていた――。しかも、娘は食事を我慢するほど追い詰められていたのです。
娘の前では冷静を装っていましたが、私は内心、このまま夫婦として信頼関係を続けていくのは難しいと感じていました。
つらい出来事を乗り越えて
その後、私たち夫婦は何度も話し合いを重ねましたが、信頼関係を取り戻すことはできませんでした。そして最終的に、夫婦としてこのまま一緒に生活を続けるのは難しいと判断し、別々の道を選ぶことにしました。
そしてA子に対しては、私から直接生活費を送るようにし、困ったことがあればすぐに相談できる環境を整えました。
家族だから大丈夫だろう――。そんな思い込みがあったからこそ、娘のSOSに気付くのが遅れてしまったのかもしれません。
一方で、勇気を出して助けを求めてくれたA子には感謝しています。今では以前より親子で話す時間も増え、困ったことがあれば素直に相談し合える関係になりました。
これからも、娘が自分らしく成長していけるよう、親として見守っていきたいと思っています。
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仕送りの金額以上にショックだったのは、娘がひとりで我慢を重ねていたことかもしれません。だからこそ、父親が娘のSOSを見逃さず、きちんと向き合った決断が印象的でした。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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