突然の怒鳴り声と150万円の請求
その日は休日で、僕は自宅でゆっくり過ごしていました。すると突然、スマホに義父からの着信が。嫌な予感がしながらも電話に出ると、受けるなり義父の怒鳴り声が響きました。
「お前の親父はどうなってるんだ! 今日の予約をドタキャンしやがって! 用意した食材と人件費、営業補償を合わせて150万円、今すぐ払え!」
電話の向こうでは、義母も「信じられない、恥を知りなさい!」と一緒に喚いています。
義父の話によれば、僕の父親を名乗る人物から「息子の結婚祝いに、親戚50人を集めて宴会をしたい」と予約が入り、店で一番高級なコースを用意していたものの、時間になっても誰も現れず、連絡もつかないというのです。
「身内の不始末だ、今すぐお前が150万円持ってこい!」
あまりの剣幕に驚きましたが、僕は冷静に一つの事実を伝えようとしました。しかし、義父は「言い訳は聞かん!」と一方的に電話を切ってしまったのです。
「うちは母子家庭ですが……」
数分後、再び義父から「金はまだか!」と催促の電話。妻も心配して駆け寄ってきました。
僕はため息をつき、スピーカーモードにして妻にも聞こえるように言いました。
「あの、何度も言おうとしたんですが……うちは母子家庭ですよ。僕が幼い頃に両親は離婚して、父とは20年以上音信不通で、どこで何をしているかも知りません。そんな父が、わざわざ息子の義実家の店を予約するはずがないでしょう?」
その言葉を聞いた瞬間、電話の向こうの義父と義母が凍りつきました。
「え……? でも、予約の電話では確かにあなたの名前を出して、父親だと……」と困惑した声を漏らします。
「誰かが夫の名前を騙って、わざとお店に嫌がらせをしたのよ!」
妻の鋭い指摘に、僕もハッとしました。僕の名前を知っていて、かつ義実家の料亭に損害を与えたい人物ーー。
僕と妻は顔を見合わせ、ある人物の心当たりを義父に伝えました。
家族の恥を晒した義実家の末路
「身内の名前を騙って、お店にこんな嫌がらせをする人間なんて、一人しか心当たりがないわ。……先月店を追い出された、弟じゃないの?」
実は、妻の弟は次期店主として料亭で働いていましたが、お店の売上金に手を出したことが発覚し、勘当同然でクビになったばかりでした。その時手をつけていたのがちょうど150万円。
僕の名前を使って偽の予約を入れたのは、実家への復讐と、家を出て自由に暮らす姉夫婦への嫌がらせを同時に行うための、弟の卑劣な計画だったのです。
妻が弟を問い詰めると、彼はあっさりと犯行を認めました。「俺を追い出した店に大損害を与えてやりたかったし、生意気な姉貴たちに罪をなすりつけてパニックにしてやりたかった」という身勝手な言い分に、義両親は顔面蒼白。
僕を一方的に責め立て、150万円を要求した義両親に対し、妻は怒りの鉄槌を下しました。
「夫に謝って。それから、今回の損害は全部、甘やかして育てた弟と、管理できなかったお父さんたちの責任よ。また夫を侮辱するようなことがあったら、私は今度こそ本当にこの家と縁を切るから」
義両親は僕に弱々しく謝罪し、それ以来、僕に対してマウントを取るような態度をとらなくなりました。 弟はその後、義父の監督のもとで働きながら返済を続けることになったそうです。頼もしい妻のおかげで、今は穏やかな生活を取り戻しています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。