私の手柄と豪語するママの哀れな末路
私の息子は中学1年生の12歳。私は、子どもを同じ習い事に通わせていたママ友6人で、定期的にランチなどをしていました。その中の1人、Aさんの息子のBくんは、中学受験で合格を勝ち取り、見事第一志望に入学。Aさんは「中学入学をみんなで祝おう」と子連れランチ会を企画。しかしランチ会が始まると、AさんはBくんを横に座らせ、他のママ友に向かって独演会を始めたのです。
「私くらい自分磨きを努力して、高い意識で子どもを導かないとだめなの。お母さんが老け込んでいる家庭は、子どもの向上心も低いと思う」と自慢げに話します。たしかにAさんはいつも華やかな格好で、40代とは思えない若々しさです。とは言え、あまりの勢いに、周囲は少々引き気味。そんな様子を気にする様子もなく、Aさんは「私の見た目が若いのは自己管理が完璧だから。受験って母親の美容と同じ。どれだけ自分に投資して努力できるかが勝負なのよ」と興奮気味にひとりで語っていました。
ママ友全員が苦笑いで話を聞く中、Aさんの視線はある親子に向かいます。Bくんと同じ塾に通うも「文武両道のための塾、本人が楽しく通えればいい」と、受験競争とは距離を置いていたCくん親子です。AさんはCくんのママに「ねー、Cくんママ。あなたみたいに最初から諦めている枯れたママじゃ、絶対に子どもの能力を引き出せないわよ。もっと私みたいに執着しなくちゃ。見た目もね」と上から目線で言いました。
すると、静かにポテトを食べていたCくんが急に「おばさん、ずっと『私の努力』って言うけど、試験会場で一生懸命頑張ったのはBくんだよね? 塾でも眠そうにしながら一生懸命勉強していたよ」と、不思議そうに正論を放ちます。
その言葉に凍り付くAさん。さらに、いつも穏やかで子どもファーストなCくんママが、「そうね。Aさんの若さへの努力はすごいと思う。でも、もっとBくんが頑張ったことも認めてあげたほうがいいんじゃないかな」という決定的なひと言を加えました。
Aさんは顔を真っ赤にして「そうだけど! でも私もすごく頑張って……」と反論しかけたそのとき、ずっと黙ってうつむいていたBくんが「ママ、僕はママに感謝をしているけど、ママが自慢するたびに、僕の努力を全部ママの手柄にされているようで凄く悲しかったよ」と、絞り出すような声で言ったのです。自分こそが主役と信じて疑わなかったAさんは、Bくんの言葉に何も言い返せません。
続けて、Cくんママは「あ、そういえば、今日はBくんのお祝いの日だから言いそびれていたけど、Cもね、塾の先生にすすめられて受けた国立中学に無事合格をいただいたの。あの学校は保護者が着飾るのを好まないようだから、私は目立たないようにしていたんだけど」と言ったのです。Bくんが合格した学校よりもはるかに難易度の高い中学校の合格報告に、さらに空気は一変。
戸惑いを隠せない私たちを見たCくんママは「ごめんごめん、合格したのはあくまでC自身の力だし、私が吹聴して回ることでもないかなと思って言わなかったの。BくんもCも、よく頑張ったねって言いたいの。ほかのみんなも入学おめでとうね」と笑顔で話します。Cくんママのそのひと言に、私たちは笑顔になり、「おめでとう」と心から言える会になったのでした。ただひとり、Aさんは気まずそうに苦笑いをしていました。
それ以降も、ママ友たちとの交流は続いていますが、Aさんは自分磨きの自慢話を一度もしていません。若さへの執着や自分の努力に必死で、一番大切にすべき息子の努力を置き去りにしていたことに、ようやく気づいたようです。
たしかにAさんの努力も素晴らしいと思います。親子面接のある受験校の場合は、子どもの合格のために自分の身なりを整えて印象を上げたいというママもいるかもしれません。しかし、子ども自身の頑張りや努力を二の次にしてまで「自分の美容や努力のおかげ」と豪語するのは、親として超えてはいけない一線だと私は思います。子どもの努力は、純粋に称えられるママでいたいと感じた出来事です。
著者:池田いおり/30代・ライター。12歳と7歳の活発な男の子を育てるママ。仕事と子育てに奮闘しつつも、自分の時間を何とか確保してリフレッシュしている。
作画:yoichigo
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2026年1月)