当時の私はなかなか子どもに恵まれず、義母からは孫を催促され、夫からも責められる毎日。精神的に追い詰められながら暮らしていたのです……。
義母と夫から追い詰められた日々
義母からの孫の催促は日に日に激しくなっていきました。電話に出なければ繰り返し着信が入り、それでも応答しないと突然家までやってくることも。
今振り返ると、そうした精神的な負担も妊活に影響していたのではないかと思います。
義母は夫にも「早く孫の顔が見たい」と言い続けていたため、夫も常にイライラしていました。そして、その不満の矛先は私へ向けられるようになっていったのです。
夫は平日の帰宅が遅くなり、休日も1人で外出することが増えました。会話は次第になくなり、いつしか寝室も別に。
そんなある時期から、義母の催促がパタリと止みました。私は少し気持ちがラクになった半面、どこか引っかかるものを感じていました。
突然告げられた離婚
そんなある日、夫から突然離婚を切り出されました。
私はようやく状況が落ち着き始めたと思っていたため、戸惑うばかり。もう少し話し合えないかと説得しましたが、夫の意思は固く、義母も夫の味方でした。
そして私は、その理由を知ることになります。
義母の催促が止まっていたのは、夫の再婚相手候補を探していたから。義母が気に入った若い女性を夫に紹介し、すでに2人は交際を始めていたのです。
夫は私に向かってこう言いました。
「子どもができないんじゃ、お前とこの先一緒にいても意味がない」
「若い子と再婚するから」
あまりにも身勝手な言葉でしたが、結局、私は離婚に応じるしかありませんでした。
慰謝料は支払われましたが、傷ついた心がすぐに癒えることはありません。離婚後しばらくは、眠れない夜を過ごしました。
新しい出会い
心労がたたったのか、寝不足のせいか、離婚してから数カ月後のある日、私は近所の病院の前を通りかかったタイミングで体調を崩してしまいました。そのとき偶然声をかけてくれたのが、現在の夫です。
最初は医師と患者という関係でしたが、私の事情を知った夫は親身になって支えてくれました。
やがて交際に発展し、私たちは結婚。産婦人科医である夫は、妊活についても「原因を決めつけず、一緒に検査を受けよう」と言ってくれました。その言葉だけでも救われる思いでした。
そして夫婦で検査を受けた結果、私には特に妊娠を妨げるような問題は見つかりませんでした。
最初の結婚では、私はずっと自分に原因があると思い込まされていました。しかし実際には、そうではなかったのです。
その後、私たちは自然に娘を妊娠。夫のサポートもあって、無事に出産し、穏やかな日々を過ごしていました。
元夫の生活
そして元夫と離婚してから5年後のこと――。
家族で公園へ出かけた際、偶然、元夫一家と再会したのです。元夫は再婚相手と男の子を連れていて、元義母も孫を囲んで幸せそうに見えました。
ところが、私たちを目ざとく見つけた元夫は、素早く近づいてきてこんな嫌みを言ってきたのです。
「離婚後に急いで再婚したんだな」
「その子は、今の夫の連れ子か?」
私は落ち着いて伝えました。
「この子は私の実の娘よ」
そう言っても、元夫は私が嘘をついていると思ったのか、信じようとしませんでした。
さらに私は、自分には不妊の原因がなかったことを伝えました。その言葉を聞いた元夫は顔色を変えました。
当時、一方的に私が原因だと決めつけていたからです。
重い雰囲気の中、隣にいた夫が、元夫の妻に「お久しぶりです」とあいさつしました。後から知ったことですが、夫は産婦人科医と勤務するなかで、彼女と面識があったそうなのです。
その瞬間、元夫の妻の表情が一変しました。明らかに動揺した様子で、聞いてもいないのに、こんなことを言い出したのです。
「この子はちゃんと夫の子どもよ」
不自然な言葉でした。その言葉を聞いた元夫と元義母も違和感を覚えたよう。「なんでそんなことを言うんだ!」と口々に問い詰め始めたので、私は娘と元夫たちの子どもを連れて少し離れた場所へ。夫だけがその場に残りました。
あの選択は間違いではなかった
後になって夫から話を聞いてすべてがつながったのですが、元夫の妻が夫に声をかけられあれほど動揺したのには、ある衝撃的な理由がありました。
実は彼女、妊娠の確認の際、偶然にも夫の勤める病院を受診していたそうなのです。しかもそのとき、元夫ではなく別の男性を連れていたとのこと。その過去を夫に指摘されるのではないかと、彼女は勝手に不安になり、あのような不自然な言葉を口走ってしまったのでしょう。
元夫と元義母に猛烈に問い詰められた彼女は、ついにその場で真相を白状したそう。なんと、元夫たちが連れていた男の子の父親は、元夫ではなくその別の男性だったのです。元夫と同時進行でその男性とも関係を持っていたものの、うまくいかず結婚が叶わなくなったため、経済力があって騙しやすい元夫に「あなたの子を妊娠した」と偽って結婚したのだと、泣きながら認めたようです。
結局、その場は騒然となり、元夫一家は激しい口論へ発展。周囲の人が警察へ通報する事態になってしまいました。その後、共通の知人に聞いた話では、元夫は再び離婚することになったそうです。
一方で私は、夫と娘に囲まれながら、変わらず穏やかな毎日を過ごしています。
離婚したときは、人生のどん底だと思っていました。しかし今振り返ると、あの離婚は私にとって新しい人生の始まりでした。
あのまま元夫と結婚生活を続けていたら、今の幸せはなかったと思います。つらい経験でしたが、自分を大切にしてくれる人と出会えたことに心から感謝しています。
◇ ◇ ◇
子どもを望むかどうか、また妊活にどう向き合うかは夫婦にとって大切な問題です。しかし、その責任を一方に押しつけたり、十分な検査もせずに決めつけたりすることは、相手を深く傷つける行為でしょう。
また、不妊の原因は女性だけにあるとは限らず、男女双方の検査と話し合いが重要です。
今回のエピソードでは、主人公は離婚によって大きな苦しみを経験しました。しかし結果として、自分を尊重し支えてくれる新しい家族と出会うことができました。
夫婦関係で本当に大切なのは、困難に直面したときに互いを責めることではなく、一緒に向き合う姿勢なのかもしれません。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。