働きたい私と見栄っ張りの夫
しかし結婚してわかったのは、夫が極端な見栄っ張りで、外の顔と家での顔が違うということでした。私が仕事を辞めて家に入ったことで、夫は「自分が養ってやっている」という意識が強くなったのか、家計のやりくりについて細かく口出しするようになりました。
退職後しばらくして、生活費の足しにしようと近所のスーパーでパートに出たいと相談したときのことです。夫婦の収入が増えれば喜ぶと思っていましたが、夫はムッとして「パートに出るなんて恥ずかしい。金ならなんとかするから働く必要はない」と猛反対しました。
なぜそこまで頑ななのか疑問に思っていましたが、翌朝、ゴミ出しに行った際にあっさり謎が解けました。夫が同じマンションの奥さんたちと談笑しており、こんな言葉が聞こえてきたのです。
「妻を養うのは男として当然ですよ! 家でのんびりしてもらいたいから家事も俺が全部やってます」
実際には家事はすべて私が担っています。奥さんたちから「やさしいご主人」と称賛されて、夫は満足そうでした。私がパートに出るのを強く反対した理由は、1人で妻を養っている甲斐性のある夫だと思われたいという、ただの見栄だったのです。
私は家に戻ってから夫に抗議し、半ば強引にパートを始めることにしました。
「主婦は水道水飲んでろ!」
それ以来、夫は私が仕事に出る日はあからさまに不機嫌な態度をとるようになりました。私が働き始めて1カ月が経ったころ、同じマンションに住む奥さんから「奥さんが働くのも応援していて、家事も全部なさっているなんて、本当に素敵ですね」と声をかけられたそうです。
この奥さんの言葉を嫌みと捉えたのか、プライドが傷ついた夫は、その夜、私に怒りをぶつけてきました。
「お前が働くから俺のメンツがつぶれた。近所で噂になったらどうするんだ」と理不尽な文句を言います。
私が「将来のための貯金もしたいし、少しでも余裕が欲しいの」と反論すると、夫は顔を真っ赤にしてこう言いました。
「お前がもっと節約すればいいだけだろ! 主婦は米と味噌汁があれば十分だろ! 黙って水道水飲んでろ!」
あまりにひどい言葉に怒りを通り越してあきれましたが、同時にある作戦を思いつきました。私は怒りをこらえ、にっこり笑って「わかった」とだけ答え、世間体を何よりも気にする夫の性格を、逆手に取ることにしたのです。
外面を崩された夫の末路
翌日から、私は夫の言う通り「徹底した節約」を実行に移すことにしました。といっても、本当に切り詰めるわけではありません。ターゲットは「ご近所の目」です。
近所の奥さんたちから立ち話やランチに誘われるたびに、私は水筒を取り出し、「ごめんなさい、私、夫から『主婦は水道水を飲め』って言われてて、一切の無駄遣いを禁止されているの」とあえて明るく、そして少し寂しそうに答えるようにしました。
当然、その話はあっという間にマンション中の噂になりました。「あのご主人、奥さんに飲み物代すら使わせないで、水道水を飲ませて節約を強要しているらしい」「外面はいいのに、家ではモラハラ夫みたいよ」と、尾ひれがついて広がっていきました。
世間体を何よりも大切にする夫の耳に、その噂が入るのに時間はかかりませんでした。すれ違う近所の人たちからの冷ややかな視線に耐えられなくなった夫は、すっかり焦って私に平謝り。「俺が悪かった。もうあんなことは言わないから、頼むからその水筒をしまってくれ」と懇願してきました。
夫は人の目ばかり気にすることの愚かさに気がついたようです。それ以来、見栄を張ることも、私のパートに文句を言うこともなくなりました。私も少し意地悪だったかもしれませんが、無事に穏やかな毎日と働く自由を手に入れたのでした。
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妻が家計を助けるために働きたいと言っているなら、見栄を張らずに協力し合うほうが、夫婦としてずっと素敵な関係を築けるのではないでしょうか。周囲からの見え方ばかりを気にして、一番大切にすべき家族の気持ちをないがしろにしてしまっては本末転倒です。パートナーとは世間体ではなく、見栄を捨ててお互いの本音で話し合える関係を構築したいですね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。