スーパーでの出会いと違和感
長女が2歳、次女を妊娠し安定期に入った時期のある日、私は近所のスーパーで途方に暮れていました。娘はイヤイヤ期真っただ中。店内で床に寝そべって暴れている娘を前に、私は情けなさと疲れで涙がこぼれそうになっていました。
そのとき、「お母さん、頑張ってるわね」と声をかけてきたのは、小ぎれいな50代くらいの女性でした。上品なブラウスを着たやさしい笑顔の女性に、孤独だった私はすっかり心を許し、育児の悩みを打ち明けました。
するとしばらく話したあと、女性に「あなた、私と連絡先を交換しない?」と言われ、少しびっくりしてしまいましたが、当時引っ越して来たばかりで知り合いも少なかった私。「やさしそうな人だ」と思い、連絡先を交換することにしました。
次の日、女性から「今日公園で会いましょう」と連絡が。もともと娘を公園遊びに連れていく予定だった私は、その誘いにありがたささえ感じたことを覚えています。
公園で待っていた彼女は、昨日とは別人のようなニヤついた笑顔で、分厚いパンフレットを大量に渡しながら「この集まりに来れば子育ての悩みは消えるわ」と半ば強引に勧誘してきました。私が面食らっていると「あなたは選ばれて私と出会ったのよ。今日会費を払いなさい」とまくしたてます。私は恐怖を感じ断ると、彼女は怖い顔に豹変。「不幸になるわよ! 子どもがどうなってもいいの?」と罵声を浴びせてきたのです。
彼女から逃げるように公園をあとにした私は、それから何週間も執拗な電話攻撃や待ち伏せをされ、外に出ることが怖くなってしまいました。1カ月後には完全に心が弱ってしまい、外に出るのも怖くなりました。当時の私は精神的に完全にボロボロで、警察に相談したり訴えたりする気力すら残っていませんでした。
ヘタに動いて逆恨みされるのも恐ろしく、とにかく「あの人から遠くへ逃げたい」という一心だったのです。見かねた夫も「ヘタに刺激して子どもたちにまで危害を加えられたら大変だし、今は自分たちの安全が最優先。戦うよりまず離れよう」と言ってくれたので、車で30分ほど離れた実家の近くに引っ越し、電話番号も変えて、環境を変えて療養することになりました。
それから数年後、環境の変化や家族のサポートを受け、私は心身共に回復。かつて住んでいた街に引っ越したという友人宅を訪ねました。ところが、駅前のスーパーを通ったとき、ボロボロの服を着た女性の姿が目に飛び込んできたのです。それは私を勧誘していた彼女の変わり果てた姿。道ゆく人に声をかけ、必死に勧誘をしようとしていて、変わりように絶句しました。彼女を指さす周囲の人のうわさ話に聞き耳を立てると、度重なる悪質な勧誘でついにトラブルになり、勧誘おばさんとして有名になってしまい、稼げなくなったのだとか。
救済を語って私を追い詰めた彼女が、今や誰にも救われない孤独な勧誘者になったという皮肉な結末に、言葉にできない震えを感じその場を立ち去りました。
精神的に疲弊した私のために、引っ越しまで決意してくれた夫には今でも感謝しています。悩みは1人で解決しようとせず周囲に相談すること、攻撃してくる相手からはきちんと距離を置くことの重要性を身をもって学んだ今回。同時に、見知らぬ相手への警戒心を持つことの大切さも実感した出来事でした。
著者:丘エリ/30代・自営業。4歳・7歳・10歳の元気な3姉妹を育てる母。夫婦共働きで家事シェアを進めるも結局ワンオペになることがしばしば。推しのアイドルを日々の癒しとしている。
作画:Pappayappa
※ベビーカレンダーが独自に実施したアンケートで集めた読者様の体験談をもとに記事化しています(回答時期:2026年1月)