突然持ち上がったお見合い話
父が亡くなってしばらく経ったころのことです。母が突然、「あなたたちにお見合いをしてもらうことにしたから」と言い出しました。
姉に紹介されたのは、外資系企業で管理職を務めるという男性でした。母は写真を見せながら、「あなたにはこういう人が合うと思うの♡」と満足そうな様子。
一方で、私に紹介されたのは町工場の跡継ぎだという男性・A男さんでした。母は写真を差し出しながら、「あなたは派手な暮らしより、こういう堅実な人のほうが向いていると思うわ」と冷たく言い放ったのです。
すると姉は母の肩を軽く叩きながら、「お母さん、ちゃんと考えてくれたんだね。私は工場の奥さんなんて無理だから♡」と言いました。母も「そうでしょう?」と満足そうにうなずき、ふたりは顔を見合わせて笑っていたのです。
まるで私の人生を勝手に決めつけられているようで胸が痛みました。それでも、会う前から相手を判断するのは失礼だと思い、お見合いを受けることにしたのです。
町工場の跡継ぎだという男性
そして迎えたお見合い当日。
待ち合わせ場所に現れたA男さんは、落ち着いた雰囲気の誠実そうな男性でした。仕事の都合で少し遅れてしまったことを何度も謝り、「工場で急な対応が入ってしまって……」と申し訳なさそうに話していたのが印象に残っています。
話を聞くと、A男さんは幼いころに両親を亡くし、祖父に育てられたそうです。
「祖父には本当に感謝しているんです。だから工場をしっかり守っていきたいと思っています」
祖父への感謝をまっすぐ口にする姿が印象的で、私は思わず聞き入ってしまいました。
私は自然と彼に好感を抱き、その後も何度か会うようになりました。そして、一緒に過ごす時間が増えるにつれ、飾らない誠実さに惹かれていったのです。
知らなかった祖父同士のつながり
交際が始まってしばらく経ったころ、私は父方の祖父に交際している相手がいることを報告しました。すると祖父は、「もしかして、A男くんか?」とうれしそうな様子を見せたのです。
実は、私の祖父とA男さんの祖父は昔からの知り合いだったそうです。そして、私の近況を聞いていた祖父が、「気が合いそうな人がいる」と母へ縁談を勧めてくれていたのだとか。
母からこの話は聞いていなかったため、とても驚きました。しかし、私のことを気にかけてくれていた祖父の気持ちがうれしく、胸が温かくなったのを覚えています。
後日、私はA男さんの工場を見学させてもらいました。
正直なところ、私は昔ながらの小さな工場を想像していましたが、実際は多くの従業員が働く活気のある会社でした。さらに最近は海外企業との取引も始まり、経営も順調とのこと。
「町工場って聞くだけで、勝手なイメージを持たれることも多いんだけどね」
そう笑うA男さんの言葉が印象に残っています。
予想外の新居計画!?
交際が始まって1年ほど経ったある日、A男さんからプロポーズされました。
「これからもずっと一緒にいてほしい」――私は迷うことなく、その言葉を受け入れました。
その後、結婚に向けて新居探しを始めることになりました。ある日、A男さんに誘われて不動産会社へ行くと、紹介された物件の中にタワーマンションの高層階の部屋があったのです。
あまりに予想外で驚いている私に、A男さんは少し照れながら「実は前から不動産会社に相談していたんだ」と言ったのです。さらに、海外企業との取引が軌道に乗り、最近まとまった利益が出たことも教えてくれました。
「もちろん無理をしているわけじゃないから、心配しないでね」
そう笑うA男さんを見ながら、私は母がお見合い話を持ってきた日のことを思い出していました。
母と姉の予想を覆す結果に!
その後、結婚が決まったことを母と姉に報告しました。さらにA男さんの会社や新居の話を聞いた二人は、「えっ……タワーマンション? しかも最上階!?」と目を丸くしました。
そしてしばらく黙り込んだあと、姉は「そんな話、聞いてないんだけど……」と悔しそうにつぶやいたのです。
後から聞いた話ですが、姉はそのお見合い相手とは、結局ご縁がなかったそうです。
原因は、姉自身の言動でした。相手の勤務先や年収の話ばかりを気にしていたため、お相手からお断りされてしまったのだとか。
その後、私はA男さんと入籍し、今は幸せな日々を過ごしています。
人は肩書きやイメージだけではわからないものです。あのとき先入観を持たずに相手と向き合ったことが、今の幸せにつながったのだと思っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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