冷たい同僚のスマホ画面に…?
営業の僕は、仕事で関わる場面が多いにもかかわらず、隣の席のA子さんとはあまり深く話したことがありませんでした。僕がデスクにいるときはたいてい雑務に追われ、ゆっくり会話をする余裕がなかったのです。
A子さんは見た目が派手で、口調も少しきつめ。社内では「近寄りがたい」と言われることもあり、僕もどこか身構えていました。
ある日、休憩スペースで偶然A子さんと一緒になりました。僕が思い切って「お疲れさまです」と声をかけると、彼女のスマートフォンに通知が表示され、マッチングアプリらしき画面が一瞬だけ見えたのです。
「ごめん、今の通知、目に入っちゃって……。もしかして、マッチングアプリ?」
反射的に聞いてしまった僕に、A子さんは「見てんじゃねーよ」と鋭く返しました。僕がマッチングアプリを見下していると思ったのか、今度は少しむきになったように画面をこちらへ向けます。
相手はまさかの…
「顔や条件で選ぶ人も多いんだろうけど、私が話してる人は違うから。ほら、めっちゃいい人でしょ? すごく話しやすいんだよ。結局、中身が一番だろ?」
ぶっきらぼうな言い方とは裏腹に、その言葉はまっすぐで……。僕は、A子さんにこんな一面があるのかと胸を打たれました。
けれど同時に、僕の胸は大きくざわつきました。A子さんが見せてくれた画面に、僕がアプリで使っている表示名が映っていたからです。
顔写真不要のアプリで、仕事の悩みや休日の過ごし方など、他愛ない話を重ねてきた相手。その相手はなんと……隣の席のA子さんだったのです。
真実を打ち明けられず
その場ですぐに打ち明けるべきか迷いました。けれど、「実は僕です」と告げたらA子さんの期待を裏切り、がっかりされてしまうのではないかと思い、僕は悩むうちに、打ち明けるタイミングを失ってしまったのです。
それから数週間後のことです。廊下でA子さんとぶつかりそうになり、僕のスマートフォンが手元から落ちました。慌てて拾おうとしたものの、開いたままのマッチングアプリの画面が表示されていて……ついにA子さんに真実がバレてしまったのです。
「もしかして、私がずっとやり取りしてた相手って、あんたなの!?」
気まずい沈黙が続いたあと、僕は勇気を出して伝えました。
「黙っていてごめん。でも、中身が一番って言ってくれたのが本当にうれしくて、この関係を壊したくなくて……もっと早く言うべきだったよね」
「いろいろ話したいこともあるし、もしよければこれから、食事でもどうかな……?」
すると、A子さんはしばらく黙っていましたが、「わかった」とうなずいてくれたのです。
隣にいた大切な人
それから僕たちは、職場で少しずつ話すようになり、プライベートでもたまに食事に行くようになりました。
最初は冷たい人だと思っていたA子さんは、実は照れ屋で、不器用なだけでした。ぶっきらぼうな言葉の奥にあるやさしさに触れるたび、僕はますます彼女に惹かれていきました。
そして、ある帰り道。僕は意を決して自分の気持ちを伝えました。
「好きです。よかったら、僕と付き合ってください」
すると、A子さんは顔を赤くしながら、「……言うの遅いよ。ずっと待ってたんだから」と答えてくれました。
顔写真不要のマッチングアプリで始まったやり取りは、すぐ隣にいたA子さんとの大切な縁につながりました。これからは画面越しではなく、直接向き合いながら、ふたりの関係を育てていきたいです。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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