社員食堂で見下すような言葉をかけられて
A子さんは打ち合わせ準備のため一度席を外し、私はひとりで少し早めの昼食をとっていました。すると、近くを通りかかった女性が足を止めました。ちらっと見えた社員証には、「総務部 B美」と記されていました。
B美さんは私を見るなり露骨に顔をしかめ、他の社員にも聞こえるような声でこう言いました。
「ここは社員、または事前に許可を受けた関係者以外は利用できないんですが」
「外部業者の方か何かですか? 部外者の方はお引き取りください」
あまりに露骨な言い方に、私は驚きました。私は詳しい事情を周囲に聞こえるように説明するつもりはなかったため、「会社の関係者です」とだけ伝えました。
しかし、B美さんは「関係者? その格好でですか?」と聞き入れません。その場の空気が少し張り詰めました。
間に入った社員の冷静な対応
そのとき、A子さんが慌ててこちらへ駆け寄ってきました。A子さんは状況を察したのか、すぐに間に入ってくれました。
「B美さん、この方は本日お招きした外部アドバイザーで、私がご案内しています。受付手続きと社員食堂の利用も、企画部で確認済みです」
A子さんが落ち着いて説明してくれました。さらに続けて「今の言い方は失礼ですよ」と注意してくれましたが、B美さんは視線を私の服装に向けたまま、まだ納得していない様子です。
「危機管理のつもりです。見慣れない人が社内にいたら確認するのは当然じゃないですか」
と言いました。確認自体は必要なことです。けれど、問題はその方法でした。相手の服装や見た目で決めつけるような言い方は、社内の安全確認とは別の話ではないか、と私は感じました。
社長の登場で変わった態度
そのとき、製造棟視察の集合時間が近づき、企画部の責任者が社長とともに私を迎えに食堂へやって来ました。
「お待たせしました。この後は製造棟をご覧いただき、その後、企画部との打ち合わせにも同席していただく予定です」
責任者が私に向かって言った瞬間、B美さんの表情が変わりました。先ほどまでの強い口調は影を潜め、明らかに動揺しているようでした。
私は静かに言いました。
「見慣れない人に声をかけること自体は大切だと思います。ただ、服装だけで相手を決めつけたり、見下すような言い方をしたりするのは違うのではないでしょうか」
B美さんは小さくうつむきました。
その後、私は予定通り製造棟の視察に向かいました。食堂での件は、関係部署内で事実確認として共有されたようですが、私から誰かの処分を求めることはありませんでした。
まとめ
社内の安全やルールを守ることはもちろん大切です。ただ、それを理由に相手を見下したり、服装や見た目だけで決めつけたりしてしまえば、確認のつもりだった言葉も人を傷つけるものになってしまいます。
私自身も、役職を名乗れば済む場面だったのかもしれません。けれど、どんな立場の人に対しても、まずは丁寧に確認する姿勢が必要なのだと感じました。
職場の信頼は、肩書きや立場だけで築かれるものではありません。日々の言葉づかいや、相手への敬意の積み重ねでできていくものなのだと、今回の件で強く実感しました。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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