姉はというと、「お母さんに期待しても無駄じゃない?」と笑うだけ。母から優遇されることを当然のように受け入れ、私が傷ついていても気に留める様子はありませんでした。
居心地の悪い家から逃れるように、高校卒業と同時に就職し、1人暮らしを始めた私。それを機に連絡先も変え、母と姉には二度と会わないと心に決めていました。
結婚式で気掛かりなこと…
家を出てから7年後、私は理解のあるやさしい夫と出会い、新たな家庭を築くことになりました。夫には、母や姉と絶縁状態にあることも、その理由も包み隠さず話していました。夫は私の過去を否定することなく、「これからは僕がそばにいるから」と受け止めてくれました。
しかし、結婚式が近づくにつれ、私にはひとつだけ気掛かりなことがありました。身内や親しい友人を招くなか、私側の親族席には誰も座らないことです。もちろん、母や姉を招待するつもりはありません。それでも、本来なら家族に祝福されるはずの場に自分の身内がいないことに、一抹の寂しさを感じていたのも事実でした。
そんな複雑な思いを抱えながら迎えた結婚式当日。温かいゲストに囲まれ、式は終始和やかな雰囲気で進み、無事にお開きとなりました。ところが、ゲストを見送って新郎新婦の控室に戻ると、夫が突然こう告げたのです。
「実は、君にサプライズがあるんだ。ちょっとついてきてもらえる?」
夫のサプライズ! 母と姉に続いて呼んでいたのは…?
夫に連れられて入った式場内の別室。そこにいたのは、家を出て以来、一度も会っていなかった母と姉でした。夫は私と母たちの“感動の再会”を演出しようとしているのだろうか……。
私が戸惑っていることなど気にも留めず、母は私を責めるように言いました。「結婚するなら、普通は家族を呼ぶものでしょう?」姉も「ずいぶん立派な結婚式を挙げたみたいじゃない。私たちには何もないの?」と、私の様子や式場を値踏みするように見回しています。
しかし、その部屋にはもう1人、私の知らない男性が同席していました。夫はその男性を、「僕たちの代理人をお願いしている弁護士です」と紹介しました。
夫が母と姉をこの部屋に呼んだ理由は、再会を祝うためではありません。私たちがこれから安心して暮らしていくために、母たちとの関係をきちんと清算するためだったのです。
過去を断ち切り、新しい家族を築く日へ
実は少し前、母と姉は知人を通して私が結婚することを知り、夫の勤務先にまで電話をかけてきていました。
「結婚するなら、育ててもらった分を返すべきでしょう」
「立派な式を挙げられるなら、家族に援助する余裕もあるはず」
そう言って、繰り返し金銭を要求していたというのです。母は自分が私を育てた恩を強調し、姉は「妹の夫なら、姉の私を助けるのも当然」と言わんばかりの態度だったそうです。
夫は私に心配をかけまいと黙っていましたが、このままでは母たちが私の前に直接現れるのも時間の問題だと判断。そこで、あらかじめ式場側に事情を説明し、部屋を借りて母たちと弁護士を呼び出していたのでした。
「これからの彼女の家族は僕です。妻の平穏を脅かすような行為が続くなら、法的な対応も含めて毅然と対処します」夫は母と姉をまっすぐ見つめ、はっきりと告げました。
思いもよらない形で用意されたサプライズに、私は驚きながらも、胸の奥にあった不安がほどけていくのを感じました。安堵と感謝で言葉が出ず、ただ涙を流すことしかできませんでした。
毒親との決別、夫への感謝
母と姉は、私が幸せになることが気に入らないのか、初めは不満げな態度を見せていました。しかし、弁護士から「本人が望んでいないにもかかわらず連絡や訪問を繰り返したり、勤務先の業務に支障が出るほど電話をかけ続けたりすれば、状況によっては法的な問題に発展する可能性があります」と冷静に説明されると、2人の表情は一変しました。
夫が用意していたのは、今後私たちや夫の勤務先へ直接連絡や訪問をしないこと、やむを得ず連絡が必要な場合は指定した窓口を通すことなどを記した確認書でした。母と姉は初めこそ署名を拒んでいましたが、私自身も「今後、金銭的な援助をするつもりも、以前のような関係に戻るつもりもない」とはっきり伝えました。
私の意思が変わらないとわかると、2人はしぶしぶ確認書に署名し、逃げるように帰っていきました。それ以来、母や姉から私たちや夫の勤務先へ直接連絡が来ることはありません。私たちは過去に振り回されることなく、穏やかな日々を送っています。
結婚式という特別な日に、私を長年縛り続けていた過去と決別するきっかけをくれた夫。その頼もしさに改めて惚れ直すとともに、今度こそ本当に、新しい家族と幸せな未来を歩んでいけるのだと確信しました。
◇ ◇ ◇
自分の過去を理解し、守ろうとしてくれる人との出会いは、大きな支えとなります。家族を築く上で大切なのは、血のつながりだけではありません。互いを思いやり、支え合える関係が、温かな家庭を築いてゆくのでしょう。
一方で、血のつながった家族であっても、金銭を要求されたり、穏やかな生活を脅かされたりすることまで我慢する必要はありません。困ったときはひとりで抱え込まず、信頼できる人や専門家に相談しながら、自分と大切な人の暮らしを守っていきたいですね。
※本記事は、ベビーカレンダーに寄せられた体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。