「中卒なんて恥ずかしい」が口ぐせの義姉
私は家庭の事情で高校へ進学せず、中学卒業後すぐに働き始めました。後悔はありませんし、早くから働いてきたことに誇りもあります。
ところがA子は、私の学歴を知った日から態度を変えました。
「今どき中卒なんて珍しいよねw」
「うちの家系に中卒が入るなんて思わなかった」
ことあるごとにそんな嫌味を言い、私を見下すようになったのです。それでも義母は苦笑いするだけ。夫も「また始まった」と流すだけでした。私は次第に家の中で居場所を失っていきました。
そんなある日、A子の結婚が決まりました。相手は婚活パーティーで知り合ったB也さんという男性です。仕事も安定していて人柄も良く、周囲から見ても理想的な結婚相手でした。
正直、私は少しほっとしていました。A子が嫁いでいけば、この息苦しい生活も少しは変わるかもしれないと思ったからです。
結婚式当日もこき使われた私
ところが結婚式当日、その期待は見事に裏切られました。私は朝から荷物運びや引き出物の確認などを任され、ほとんど休む暇もありませんでした。
もともとの緊張もあったのでしょう。挙式が終わり、披露宴が始まる直前になって急にめまいがしてきました。夫に付き添われて控室で休むことになりましたが、幸い症状は軽く、しばらく横になると落ち着いてきました。
すると夫は時計を見ながら、こう言ったのです。
「俺は先に戻るから。みんなには体調が悪くて出られないって伝えておくよ」
そう言って夫が立ち上がったちょうどそのとき、控室のドアが開きました。入ってきたのは義姉のA子です。
控室に一人取り残された私
A子は控室に入るなり、部屋の隅に積まれていた段ボールを見て、「あ、ちょうどいいじゃない」と笑いました。そして、私を見ながらこう言ったのです。
「ここにご飯運んであげるから、その段ボールを机にしたら?」
私は「もう大丈夫だから、披露宴に出るよ」と伝えたのですが、A子は聞く耳を持ちません。夫も「まだここで休んでなよ」と言い、義姉と二人で部屋を出て行ってしまったのです。
閉まったドアを見つめながら、私は小さくため息をつきました。正直、悲しいという気持ちよりも、「またか」という諦めのほうが大きかったのを覚えています。
ここで無理に戻ったところで、またA子に何か言われるだけ。夫もきっと助けてはくれないでしょう。そう考えると、反論する気力も湧いてこなかったのです。
本当に運ばれてきた食事
披露宴が始まってしばらくしたころ、控室のドアが開き、スタッフの方が食事を運んできました。さすがにA子の言葉は冗談だと思っていた私は、言葉を失いました。
スタッフの方は私の体調を気づかいながら、食事の準備をしてくださいました。そのやさしさはありがたかったものの、控室で一人食事をする現実に、何とも言えないむなしさを感じました。
料理に手を付けてしばらくすると、再び控室のドアが開きました。入ってきたのは新郎のB也さんです。
「どうしてこんなところで…?」
不思議そうな表情のB也さんに事情を説明すると、彼は驚いたように言いました。
「そんなのおかしいですよ」
私は苦笑しながら、「いつものことなんです」と答えました。するとB也さんは首を横に振りました。
「いつものことでも、おかしいことはおかしいです」
その言葉を聞いた瞬間、思わず涙があふれそうになりました。今まで誰も、そんなふうに言ってくれる人はいなかったからです。
披露宴の後で知った、B也さんの本音
後日、私はB也さんが披露宴のあとに義姉や義両親、そして夫へ事情を確認していたことを知りました。
「どうしてあんな扱いをしたんですか?」
そう尋ねたB也さんに対し、A子は笑いながら「だって中卒だよ?」と答えたそうです。義母も、「あの子は気にしないから」と軽く流し、夫も笑って同調したのだとか。
ただ、B也さんだけは違いました。
「気にするかどうかの問題じゃないでしょう」
「家族なのに、おかしくないですか?」
そう言っていたそうです。温かい家庭で育ったB也さんにとって、家族の一人を当たり前のように見下す状況は理解できなかったのでしょう。
そして約1年後。A子は大泣きしながら実家へ戻ってきました。理想の結婚を手に入れたはずでしたが、結婚生活は長く続かなかったのです。
理由は一つではなかったそうですが、人を見下す態度や価値観の違いが原因で、B也さんから離婚を切り出されたと聞きました。結婚式当日、私を笑い者にしていたA子の姿を思い出すと、私は複雑な気持ちになりました。
一方の私も、今、離婚に向けて準備を進めています。
あの日、「それはおかしい」と言ってくれた人がいたからこそ、自分がどれだけ理不尽な環境に慣れてしまっていたのか気づくことができました。
人は長く同じ環境にいると、つらいことさえ当たり前だと思い込んでしまうことがあります。だからこそ、自分を大切にしてくれない場所に慣れすぎてはいけないのだと、この出来事を通して学びました。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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