効率重視?現実に頭を悩ませる僕
僕は研修医1年目として総合病院で働いていましたが、実家への仕送りもあり、生活は質素でした。
僕なりに多くの人を助けたいという理想を胸に働き始めたものの、医療現場の現実は厳しいものでした。僕の指導を担当する先輩医師たちは、連日の忙しさからか業務の効率を最優先しており、「患者の細かな質問に対応していると業務が回らない」とこぼすような状況でした。
患者にじっくりと寄り添おうとする僕は、「要領が悪い」「理想だけでは現場は回らない」と冷ややかに見られていました。「君は金銭的な余裕もないだろう。奨学金で大学を出たなら、感情移入などせずに要領よく数をこなすことを考えろ」と苦言を呈されることもあり……。
自分の理想と現実のギャップに悩み、身も心も疲れ果てる日々が続いていました。
街での救護活動をしたけれど…
そんなある日の休日、街を歩いていると人だかりができていました。何かと思って見に行くと、高齢の女性が倒れており、付き添いの家族がパニックになっていて……。僕はとっさに駆け寄り、「医師です。救急車を呼んでください!」と周りに声をかけました。
僕はできる限りのことをしていると、救急車が到着。救急隊員に引き継ぎました。たまたま僕の勤務先が当日の救急当番病院だったため、僕から直接救急外来の当直医に連絡を取り、事情を説明して受け入れてもらいました。無事に引き継ぎを終え、僕は胸をなでおろしました。
しかし、翌日の事実を知った先輩医師から「勝手に受け入れ交渉なんかして、仕事を増やすな。研修医の分際でヒーロー気取りか?」と厳しく叱咤されてしまいました。先輩自身も連日の当直で疲弊していたとはいえ、返せずうつむくしかありませんでした。
そのとき、「それ、本気で言っているんですか」と声が響いて……。声のするほうを振り向くと、僕の勤務先で働くベテラン医師の姿がありました。
チーム医療の支え
彼は、「倒れた人を助ける行為を、『仕事を増やすな』と咎めるのは、医師として、人としてどうなんですか」と毅然と伝えてくれました。彼の言葉を聞いた先輩は、「いや…その…」と青ざめていきました。
実は、先輩医師による高圧的な態度は以前から問題視されていました。他の研修医やスタッフからも同様の相談が寄せられており、事務部門も事態を重く見ていたのです。彼はその場で僕をかばってくれただけでなく、この一件を含めたこれまでの行き過ぎた発言を、病院のハラスメント対策委員会に正式に報告してくれました。
以前から複数のスタッフから苦情が出ていたこともあり、病院側も事態を重く受け止めていました。先輩医師は日常的な指導に行き過ぎた面があったと認められて……。そして後日、研修医の指導担当から外れました。
その後、僕を助けてくれた医療事務スタッフから「君の患者に向き合う姿勢は間違っていないから、自信を持って」と励ましの言葉をもらいました。彼をはじめ、周囲のスタッフが僕の姿勢をちゃんと見ていてくれたことに、僕は深く救われました。
新しい指導医のもと、現在は周囲との連携を学びながら充実した研修生活を送っています。厳しい環境の中でも、人の心に寄り添い、チームで患者を支えられる医師を目指して、誠実に歩んでいきたいと思います。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
ムーンカレンダー編集室では、女性の体を知って、毎月をもっとラクに快適に、女性の一生をサポートする記事を配信しています。すべての女性の毎日がもっとラクに楽しくなりますように!