出張のたびに寂しがる娘
私は仕事柄、カレンダー通りの休みが取れず、月に何度か出張もありました。1人娘のA子は小学1年生になったばかりで、私が家を空ける日は、いつも少し不安そうな顔をしていました。
妻からも、「あなたが出張の日は、A子が寂しがっているよ」と聞かされていました。私はそのたびに、2人に寂しい思いをさせてしまうこと、出張中は専業主婦の妻にA子を任せきりになってしまうことを申し訳なく思っていました。
そんなある日、大型連休を挟んで、私の実家近くで数日間の出張をすることになりました。ちょうどA子も学校が休みだったため、一緒に実家へ連れて行き、私が仕事をしている間は両親にA子を見てもらうことにしたのです。
A子も「おじいちゃんとおばあちゃんに会える」と喜んでおり、私も少し安心していました。
義母からの電話で知った異変
出張先での仕事を終え、A子と実家で過ごしていた夜のことです。義母から突然、強い口調で電話がかかってきました。
「あなた、A子を1人で留守番させているの?」
あまりに切迫した声だったため、私は一瞬、何を言われているのかわかりませんでした。私が答える間もなく、義母は焦ったようにこう続けます。
「小学1年生の子を夜に1人で留守番させるなんて、非常識よ!」
「家の中からA子の泣き声が聞こえるの!」
私が「どういうことですか? A子なら、今私と一緒に実家に来ていますよ」と答えると、義母は「えっ……どういうこと?」と混乱している様子。
話を聞くと、妻に頼まれていたものを届けるため、近くまで来たついでに私たちの家を訪ねたそうです。しかし、チャイムを鳴らしても妻は出てこず、義母が妻の携帯に電話をしても応答はなかったとのこと。それでも家の中は電気がついているので「おかしい」と思って玄関先に立っていると、家の中から子どもの泣き声が聞こえたそうです。
そこで、心配になった義母は私の携帯に電話をしてきたのだとか。しかし、A子は私の隣にいます。では、家の中で泣いている子は誰なのか。私も妻に電話をしてみましたが、応答はありません。
義母の聞き間違いならそれで済むかもしれない……と考えつつも、妻と連絡がつかないのが気になります。私は不安になり、妻に「今どこにいる? なぜ電話に出ないんだ?」とメッセージを送りました。
妻からの連絡に抱いた違和感
それから数十分後、妻からやっとメッセージに返信がありました。
「ごめん、少し手が離せなくて。何かあった?」
私はすぐに電話をかけ、「お義母さんがうちに来たとき、子どもの泣き声を聞いたらしい。どういうこと? 君は外に出ていたの?」と聞きました。すると妻は一瞬黙り込んだ後、焦ったように「何も知らないわ。私はそのとき買い物に出ていたの」と早口で答えました。
しかし、義母から電話がかかってきたのは20時過ぎのことでした。いつもならその時間に妻が出かけることはあまりなかったため、私は違和感を抱きました。
そして何より、妻の声色や口調から、明らかに動揺している様子が伝わってきたことも気になりました。胸騒ぎを覚えた私は、A子を私の両親に預け、仕事を調整して翌朝早くに家に戻ることにしたのです。
帰宅して知った妻の隠し事
翌朝早く、私は自宅へ戻りました。玄関を開けると、いつも通りの自宅の様子に少しほっとしつつも、昨夜、義母が聞いたという子どもの泣き声のことが頭から離れませんでした。リビングへ向かうと、妻は私の顔を見るなり、明らかに動揺した様子で「えっ、何で帰ってきたの? まだ出張中でしょう? A子はどうしたの?」と言いました。
私が「A子は実家に預けてきた。昨日のことが気になって、仕事を調整して帰ってきたんだ」と答えると、妻は気まずそうに目をそらしました。私はできるだけ落ち着いて尋ねました。
「昨日、お義母さんが来たとき、家の中から子どもの泣き声が聞こえたと言っていた。君はそのとき買い物に出ていたと言ったよね。本当に家にいなかったの?」
妻は「そうよ。だから私は何も知らない」と答えました。けれど、その声は明らかに上ずっていました。
「でも、お義母さんはチャイムを鳴らして、君にも電話をしたと言っていた。家の電気もついていたそうだよ」
そう続けると、妻はしばらく黙り込みました。
やがて、小さな声で「……本当は、家にいた」と言ったのです。妻の話によると、昨夜わが家で泣いていたのは、近所に住む女の子でした。その子の父親はシングルファザーで、妻とは地域の子ども向けイベントで知り合ったそうです。最初は子育ての話をするだけの関係だったものの、次第に距離が近くなったのだとか。
そして昨夜は、私とA子が家にいないこともあり、男性と女の子を家に招き、夕食を一緒に食べようとしていたそうです。しかし途中で「車に置いた荷物を取ってくる」と言って男性が短時間だけ外に出たところ、女の子が不安になり、泣き出してしまったのです。
そこへ、義母が訪ねてきました。妻はチャイムが鳴ったとき、外に義母が立っていることに気付いていたそうです。けれど、家には私に内緒で招き入れた男性の娘がいました。知られたくなかった妻は、女の子に小声で「大丈夫だよ」と声をかけ、玄関には出ず、義母からの電話にも応じませんでした。
義母が私に電話をした後、妻は慌てて男性に連絡し、戻ってきた男性に女の子を連れて帰ってもらったそうです。そして私から電話がかかってきたとき、とっさに「買い物に出ていた」とウソをついたのです。
妻は涙ながらに昨夜の出来事を説明し、男性と親密な関係になっていたことを認めました。
娘を守るための決断
後日、義母にも事情を説明しました。義母は静かに私の説明を聞いた後「娘が迷惑をかけてごめんなさい」と言いました。そして「A子がひとりで泣いていると思って、気が動転してしまったの。あなたを責めるような言い方をして、ごめんなさい」と小さく続けました。
妻に裏切られたことは許しがたく、信頼を取り戻すのは簡単ではありません。けれど、A子にとって妻は母親です。小学1年生のA子から、急に母親の存在を切り離すような決断を、私ひとりの感情だけで下すことはできませんでした。
妻とも話し合った上で、まずはお互いに距離を置き、私はA子を連れてしばらく実家近くで暮らすことにしました。そして私は、出張の少ない部署への異動を相談し、難しければ転職も考えることにしました。
A子は最初こそ戸惑っていましたが、私の両親の支えもあり、少しずつ落ち着きを取り戻していきました。以前は私が家を空けるたびに不安そうにしていたA子も、今では安心して眠れる日が増えています。
妻とは今も、A子のことを第一に考えながら話し合いを続けています。夫婦としてどう向き合っていくのか、別々の道を選ぶのか。その答えは、急いで出すものではないと思っています。これからは、A子本人の気持ちにも耳を傾けながら、父として何ができるのかを考えていきたいと思っています。
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「孫が泣いている」と思った義母からの電話をきっかけに、妻の隠し事を知ることになった主人公。家族に内緒で男性を自宅に招き入れ、さらにウソを重ねていた妻の行動は、夫婦の信頼を大きく揺るがすものでした。
それでも主人公は、怒りだけで決断せず、A子さんの気持ちや生活を第一に考えようとします。大切な家族だからこそ、真実と向き合う冷静さが必要なのだと感じるエピソードでした。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※AI生成画像を使用しています
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