私が職場へ戻ると、以前は係長だった人が部長へ昇進していました。
もともとその部長は、上司には愛想が良い一方で、部下には厳しく当たるタイプ。見るに見かねて、「部下の成果はきちんと評価したほうがいいと思います」と意見を伝えてから、私は部長から目をつけられるようになってしまったのです。
手柄を横取りされ続けた日々
部長は自分のミスを私の責任にしたり、私が業務効率化のために作成したAIツールを、まるで自分が考案したかのように社内で説明したりしていました。私が積み重ねてきた成果は、いつの間にか部長の実績として扱われるようになっていたのです。
そんなある日、部長からこんな言葉を投げかけられました。
「AIで全部できるなら、君の存在価値はないな」
「AIのほうが君よりよっぽど使えるよ」
その一言で、私は心が折れてしまいました。この人の下では、もう前向きに働き続けることはできない――そう思い、退職を決意したのです。
引き継ぎを断られた私
退職が決まった私は、後任が困らないよう引き継ぎを申し出ました。
ところが部長は鼻で笑いながら、「そんなもの必要ないよ。誰でもできる仕事なんだから」と言って取り合ってくれなかったのです。
それでも私は、AIツールの操作方法や定期メンテナンスの手順、注意点をまとめたマニュアルを部署の共有フォルダへ保存し、いつでも確認できる状態にして退職しました。
「必要になったら共有フォルダのマニュアルを確認してください」
部長以外の面々にそう伝えて、私は職場を後にしました。
退職後にかかってきた1本の電話
退職から約1カ月後のこと――。
突然、部長から電話が。おそるおそる出てみると、いきなり一方的に怒鳴られました。
「お前が作ったAIがおかしくなった!」
「取引先にも迷惑をかけてしまった! どう責任を取るつもりなんだ!」
私は落ち着いて答えました。
「AIツールは定期的にデータのメンテナンスが必要です。その内容はマニュアルにもまとめてありますし、引き継ぎの際にも説明しようとしました」
「でも、部長が必要ないとおっしゃいましたよね」
さらに、「マニュアルは共有フォルダに残しています。ご確認いただければ対応方法は記載されています」と伝えました。
「そんなの見たところでわかるか!」とさらに声を荒らげた部長。社内では、部長は自分がAIツールを作成したかのように話していましたが、中身のことは全然わかっていなかったのです。
私は最後に、「AIのほうが私より使えるとおっしゃっていましたよね」「あとはAIに相談してみてはいかがでしょう?」と伝えて、静かに電話を切りました。
私の再出発
それからしばらくして、元同僚からこんな連絡をもらいました。
私だけでなく、部長に手柄を横取りされたり、心ない言葉を浴びせられたりしていた社員が何人もいたそう。複数の社員が上層部へ相談した結果、部長は別部署へ異動になったと聞きました。部長がいなくなってからは、職場の雰囲気も以前よりずっと良くなったそうです。
一方の私は、以前仕事でお世話になった取引先の方から声をかけていただき、現在は在宅のフリーランスとして働いています。子育てと仕事を両立しながら、自分のペースで働ける今の環境に、とても満足しています。
あのころはつらい毎日でしたが、無理をして働き続けなくて本当に良かったと思っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。