私は何度も夫に注意しましたが、夫は「娘は父親を亡くした姪っ子の気持ちを理解している。お前みたいに文句は言わない」と言うだけ。
けれど、娘は理解していたのではなく、父親に期待しなくなっただけでした。幼いころからないがしろにされ、父親との楽しい思い出もほとんどありません。次第に会話も減り、中学生になるころには、ほとんど口をきかなくなっていました。
さらに、夫が姪っ子を溺愛するほど、姪っ子や義妹の態度も大きくなっていきました。「あんたらと家族だなんてかわいそう」などと嫌みを言われるようになり、娘の誕生日に夫を旅行へ連れ出したり、卒業式の日に「風邪をひいた」と助けを求めたり、私たちの家族イベントをことごとく邪魔してきたのです。
そのたびに夫へ相談しましたが、夫はいつも姪っ子と義妹の味方。何を言っても伝わらず、私はあきれるしかありませんでした。私が責めると、夫は「誰に養ってもらっているか考えろ」と怒り出し……。かつては専業主婦だった私も、今では生活費を折半できるほど稼いでいます。そう言い返すと、夫は「生意気になりやがって」と悪態をついてきました。
娘の結婚式まで姪っ子に潰されて…
そんな生活が続くうち、娘も成人し、立派な社会人になりました。そして、素敵なお相手との結婚が決まったのです。娘の結婚には、夫もさすがに興味を持ったようで、「式はいつだ?」と何度も聞いてきました。姪っ子と義妹も夫から聞いたようで、今回ばかりは祝福してくれていました。
しかしある日、姪っ子から結婚式の招待状が届きました。そこに記されていた日程は、娘の結婚式とまったく同じ日。もちろん、姪っ子も義妹も、娘の式の日取りを知っています。
その日の夜、姪っ子は娘に連絡してきました。「あんたの結婚なんか興味ないって伯父さんが言ってたから、同じ日にしてあげたの〜」まさか、結婚式まで邪魔してくるなんて……。
私は夫に、どちらの式へ出席するのか確認しました。すると夫は、姪っ子の式に出ると即答。しかも、姪っ子が同じ日を選んだことも知っていたと言います。私が訴えると、夫は「新郎の父親にでも歩いてもらえばいいだろ。喜ぶんじゃないか」と軽く言いました。どれだけ説得しても、夫は姪っ子を優先すると譲りません。
その瞬間、夫にとって私たちがどんな存在なのか、はっきりわかりました。私は夫との離婚を決意し、その理由も含めて娘に打ち明けました。それから数日後、娘も夫と話したそうです。
「姪っ子の結婚式と被るから、お前の式は欠席で!」
「バージンロードは新郎の父親にでも歩いてもらえよ」
「私は別にいいけど、パパ後悔するよ」
「は?」
娘はショックを受けることなく、冷静にそう返したそうです。そして、私が離婚を望んでいることを、代わりに夫へ伝えてくれました。
亡き義弟が残した、あってはならない真実
私は、夫の重大な秘密を知っています。本当は娘の結婚式が終わってからその秘密を明かし、離婚するつもりでした。けれど、結婚式まで姪っ子を優先する夫に、もう我慢できませんでした。夫が姪っ子を優先すると言った日、私は娘にすべてを話し、離婚に賛同してもらっていたのです。
実は5年前、義弟が亡くなって10年が経ったころ、私のもとに一通の手紙が届きました。義弟がタイムカプセル郵便を使って、胸に秘めておけないほどつらい事実を私に伝えてくれたのです。
病気で亡くなった義弟は、亡くなる1カ月ほど前に容体が急変し、そのまま旅立ちました。そのころ、義弟は自分の娘が実子ではないことを知ったそうです。しかも、その子は妻である義妹と、兄である夫との子でした。
毎回、必ず2人でお見舞いに来る義妹と夫を怪しんだ義弟は、義妹に夫との関係を問い詰めたそうです。すると義妹は、夫との不倫関係を認め、夫との子を義弟の子として産んだと告白しました。
義弟は、その信じ難い事実に絶望し、ひどく傷ついたと手紙に残していました。手紙には、義弟の苦悩もつづられていました。事実を明かして義妹と夫を追い詰めたい。でもそうすれば、姪っ子や娘、私、義両親まで不幸にしてしまう。悩み抜いた義弟は、姪っ子が20歳になり、娘も21歳になる10年後なら、2人もそれぞれの人生を歩き始め、真実を受け止める力がついているかもしれないと考えたのでしょう。
そして義弟は、遺書も残さず、静かに旅立っていきました。私は、このあってはならない事実を知っていると夫に伝え、改めて離婚を言い渡しました。秘密がバレていたことに夫は絶句し、顔を青ざめさせていましたが、私は娘と一緒に家を出ました。もちろん、このことは義両親にも話すつもりです。
義弟の手紙が暴いた、夫たちの末路
周りのことを思い、姪っ子や娘が大人になるまで、たったひとりで真実を抱える選択をした義弟。そのやさしさのおかげで、娘は無事に大人になり、結婚も決まりました。私も、自立する準備ができました。
この数年、私がコツコツ働いてきたのは、娘を送り出し、夫と離婚するためでもありました。後日、私は義弟からの手紙を持って義両親に会いに行きました。その結果、夫は義両親から縁を切られることに。
その後、私は夫に慰謝料を請求し、離婚も無事に成立しました。衝撃の事実を知った姪っ子はひどく動揺し、義妹とも夫とも口をきかなくなったそうです。やがて、夫と義妹のしたことは親戚中に知れ渡りました。さらに、姪っ子が娘の結婚式を邪魔しようとしたことまで明らかになり、夫、義妹、姪っ子は親戚の間で肩身の狭い思いをすることに。
3人が今どうしているのか、詳しくは知りません。義弟の苦しみが少しでも報われていたらいいなと、今はそう願っています。
◇ ◇ ◇
ようやく穏やかな気持ちで毎日を過ごせるようになり、本当によかったですね。受け入れ難い事実を知って、どれだけ苦しんだことか。そして、義弟のことを思うと、本当に胸が締め付けられます。
真実をひとりで抱えることが、必ずしも正解とは限りません。けれど、周囲の人たちを思い、すぐには事実を明かさないという選択をした義弟のやさしさは、とても深いものだったのだと思います。大切な人を裏切ることのないよう、誠実に生きていきたいですね。
【取材時期:2026年6月】
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。