社員の前で僕を見下す妻
義父の後を継いで妻が社長に就任してから、僕たち夫婦の関係は少しずつ変わっていきました。社長という立場である妻が、部下である僕のことを見下すようになったのです。そんなある日、社員たちの前で、今でも忘れられない事件が起こりました。
取引先から帰社したあと、商談が難航していることを伝えると、妻から「また取引先に丸め込まれてるの? いつも相手にぺこぺこしてばかりね。もっと威厳を持ちなさいよ」と鼻で笑われたのです。
その場にいた社員たちは気まずそうに目をそらし、中には空気に合わせるように小さく笑う人もいました。すると、妻は続けて「私の夫だから会社にいられるってこと、勘違いしないでね? あなたの仕事っぷりなら、ほかの会社だったら毎日怒られてるかもね」と言い放ったのです。
以前から妻に軽く扱われることはありましたが、社員の前でここまで言われたのは初めてです。我慢の限界を迎えた僕は「それなら、ほかの会社で確かめてみるよ。もうこの会社は辞める。あと、夫婦としても終わりにしよう」と告げました。
淡々とした様子で「好きにすれば」と答える妻に対し、僕は「退職手続きや引き継ぎは、後日きちんと対応する」と告げ、その日は会社を出ました。
思わぬ人物からの誘い
会社を出たあと、「大丈夫ですか?」と声をかけてきた人がいました。別会社の代表・A山さんです。彼は打ち合わせのため来社したらしく、先ほどのやり取りを偶然聞いていたようです。
「あなたの仕事はとても丁寧なものです。それをあんなふうに言うなんて……。あなたなら知識もありますし、もしよければ、うちで一緒に働きませんか?」
思いがけない言葉でした。僕が今まで一生懸命仕事をしていたことを、見てくれていた人がいたのです。A山さんは「考えてみてください」と告げ、去っていきました。
その後、僕は正式に退職し、面談を経てA山さんの会社で働き始めました。新しい職場では、相手の話を聞きながら先のことまで考えて動く姿勢を評価してもらえています。
妻の会社に起きた変化
一方で、妻の会社では少しずつ問題が表面化したそうです。以前はできるだけ僕が間に入るようにしていたので、何とか保たれていた場面も多かったのですが……社員たちは妻から強い言い方で注意されることが多くなり、不満が溜まっていったようです。
あるとき、ライバル会社に契約を取られてしまい、商談がうまくいかなかったことがあったそうです。その直後、妻は「どうしてうちの会社が評価されないのよ! あなたたち、ライバル会社に負けていいの? もっとプライドを持ちなさいよ」と、社員たちを責めたそうです。
けれど社員からは、「ライバル会社と張り合うだけでは、状況は変わらないと思います」「私たちを責める前に、まずは現場の声を聞いてください」と返されたとのこと。
失った信頼は戻らず…
後日、僕は妻と話し合いました。先代社長である義父から「どうして彼と離婚するんだ? あんなに真面目な男はほかにいないぞ」と説得されたらしく、妻は「やり直さない?」と言ってきたのですが、一度失った信頼を取り戻すことはできません。結局、僕は妻と離婚することにしました。
妻に見下されたことは今でも記憶に残っていますが、社長という責任ある立場になったからこそ、彼女には計り知れないプレッシャーもあったのかもしれません。離婚が決まったあと、妻は少しさみしそうな顔で「……お互い、頑張るしかないね」とつぶやきました。
僕は今、新しい職場で自分にできることを少しずつ積み重ねています。これからも自分らしく、コツコツと仕事に打ち込んでいきたいと思います。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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