清掃会社で働いていた僕
当時の僕は清掃会社に勤め、オフィスや商業施設の清掃・衛生管理を担当していました。決して派手な仕事ではありませんが、自分なりに誇りを持ち、将来の独立を目指して日々努力していたのです。
そんな僕には、結婚を考えていた彼女がいました。交際3年を迎えたころ、僕は彼女にプロポーズ。彼女も喜んでくれ、あとはご両親へ挨拶をするだけというところまで話が進んでいました。
結婚の挨拶で始まった品定め
結婚の挨拶が始まると、大手企業で役員を務める彼女の父は、僕を値踏みするように年収や貯金額、将来設計について次々と尋ねました。
一通り話を聞き終えると、「清掃会社で働いているだけでも心配なのに、将来は独立したいだって?」とあきれたように笑い、こう言い放ったのです。
「会社を辞めて起業なんて甘い考えだ。そんな不安定な人生に娘を付き合わせるわけにはいかない」
さらに最後には、「うちの金が目当てなんだろ」とまで言われてしまいました。
もちろん、そのような気持ちは一切ありません。仕事への思いや将来の目標を何度も説明しましたが、聞き入れてもらえませんでした。
その間、彼女は父を止めることなく、「うちは昔からパパの言うことが絶対だから」と小さく口にしただけだったのです。
「パパが反対なら仕方ない」
その後も僕は彼女と何度も話し合いました。もう一度お父さんと話す機会を作ってほしいとお願いしましたが、彼女は「パパが認めてくれない以上、どうすることもできない」の一点張りです。
そこで僕は、「君自身はどうしたいの?」と尋ねました。少し考え込んだ彼女が返したのは、「私はパパに反対される人とは結婚できない」という言葉でした。
その言葉を聞き、僕はようやく諦めがつきました。結婚に反対していたのは彼女の父です。しかし、その考えを受け入れ、僕ではなく父の価値観を選んだのは彼女自身でした。
こうして、僕たちは別れることになりました。
数年後、元カノからの一本の電話
それから数年が経ち、僕は独立して清掃会社を立ち上げました。
最初は小さな会社でしたが、一つひとつの仕事を丁寧に積み重ねた結果、工場やオフィスビルの衛生管理まで任せてもらえるようになり、会社も少しずつ軌道に乗っていったのです。
そんなある日、突然元カノから電話がかかってきました。
久しぶりの連絡に驚いていると、彼女は開口一番、「パパがOKだって♡」と明るい声で言いました。あまりにも突然の話に、僕は思わず、「……何の話?」と聞き返してしまいました。
すると彼女は、「だから結婚だよ」と当然のように答えます。話を聞くと、僕が会社を立ち上げて順調に経営していることを知り、彼女の父が「今なら結婚を認める」と言っているのだそうです。
しかし、僕にとってその話は、とっくの昔に終わっていました。彼女は父親の許可さえ出れば、何年も前の結婚話をそのまま続けられると思っていたようです。
そこで僕は、「ごめん。もう結婚しているから」とだけ伝えました。
電話の向こうはしばらく静まり返っていましたが、僕はそれ以上何も話さず、そのまま通話を終えました。
僕自身を信じてくれる人との出会い
彼女と別れてから、僕は独立準備を進める中で知り合った女性と結婚しました。会社員時代も、独立して苦しかった時期も、肩書きではなく僕自身を信じて支えてくれた人です。
結婚相手の将来を心配する親の気持ちは理解できます。しかし、仕事だけで人を判断し、「金目当て」と決めつけられたことは今でも忘れられません。
あのとき彼女が選んだのは、僕ではなく父親の価値観でした。
一方、今の妻は会社員だった僕も、独立して苦しかった僕も変わらず信じてくれました。当時は深く落ち込みましたが、結果として、自分の意思で僕を選んでくれる人と人生を歩めたことを幸せに思っています。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
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